第六部 第三章 第十九話 スーパーリビドー勇者


 『スーパーリビドー勇者さん』の朝は早い──。




 彼は居城のある森の中に陽光が差し込むよりも早く外に姿を現し、朝の空気を全身で浴びていた。勿論、全裸だ。



 とても気持ち良さげな『スーパーリビドー勇者さん』……股間に潜む魔獣『ムス・コサン』は、今朝も凄く元気だった。



「フゥゥ~……まるで生まれ変わった気分だ。何故人は服など着ているのだろう?皆、裸なら世の中平和だろうに……」


 勿論、皆が裸だからといって世の中平和になる訳がない。良識ある文化的な世界ならば寧ろ大変な騒ぎになるだろう。



 さて……ここで皆様には改めて説明しておかねばなるまい。


 『スーパーリビドー勇者さん』こと勇者ライは、昨夜欲求不満が爆発したことにより頭のネジが外れ一時的な錯乱状態である。

 現在、彼は夢の中で好き勝手やっていると勘違いしている状態。


 しばらくすれば元に戻る筈だが、今は戻るまでの経緯を見守るしかない……。



 そんな『勇者さん』……水の冷たくなり始めた季節にも拘わらず湖で泳いだ後、森を散策し新鮮な空気でリフレッシュ。勿論、全裸。


 しかし、何か物足りず大空へと飛翔。そのまま朝の大空の散策へと洒落込んだ。



 全裸の男が大空を往く姿は雄々しく、そして素晴らしく残念だった。

 しかしそこは『スーパー残念勇者さん』……全く恥じ入ることなく誇らしげである。



 そんな時……遥か遠くで誰かが助けを呼ぶ声を耳にする。


 既にその聴力は尋常ではない為、常人の徒歩一日という距離程度ならば微かに聴こえるという『勇者さん』は直ぐ様助けに向かった。



 声はストラトから北西にある鬱蒼とした森の中から。現場に着いた時、『勇者さん』は助けを求める者の現状を瞬時に理解する。


 盗賊に襲われる旅芸人一座……それは中々ベタな展開だった……。


「朝っぱらから傍迷惑な盗賊どもめ……折角の気持ちの良い朝が台無しだ。仕方無い。今助けに……いや、正義のヒーローは顔を見せる訳には行かないか……」


 そう考えた『勇者さん』は木の葉を《物質変換》し装着……それは古い時代の資料に時折見られる黒皮のマスクである。

 目と口の部分以外頭を全て覆うベルトの固定具が付いた真っ黒なマスクは、全裸を引き立てるには十分の妖しさ溢れる一品。


 準備を整えた『勇者さん』は勢い良く着地し大地を揺るがした。



「待てぇい!悪行は赦さんぞ、この犯罪者どもめ!」


 ご自身が既に軽犯罪者である『勇者さん』は盗賊を指差し旅芸人一座との間に割って入る。当然ながら旅芸人一座、盗賊団、共に己が目を疑っているご様子。


「な、何だ、この変態は……テメェらの仲間か?」


 盗賊の首魁らしき男は何度もまばたきし目を擦っていた……。


 対して旅芸人一座の座長らしき男は、一瞬『勇者さん』に助けを求めようとしたが躊躇している。全裸にマスクの男に助けを求めるのが正解か否か……座長の思考は至って常識的なものである。


 そんな様子を物ともしない常識破りな『勇者さん』は、マスクから覗く口元をニヤリと歪ませ白い歯を輝かせた。


「もう大丈夫ですよ。後は全て私に任せなさい。行くぞ、悪党ども……覚悟しろ!」

「覚悟すんのはテメェだ、変態野郎!」

「何っ!変態だと……何処だ!」


 キョロキョロと変態を捜す『勇者さん』には是非とも“ 灯台もと暗し ”という言葉を贈りたい。


「……。野郎ども、構わねぇからやっちまえ!」


 お決まりの台詞を吐いた盗賊達の末路は言うまでないだろう……。

 たとえ全裸の変態に成り下がろうとも『勇者さん』は超常──相手になる筈もないのだ。



 結果、盗賊は全員全裸で手足を縛られ逆さ吊り──。

 森はドレファーの街から程近い。旅芸人一座が報告すれば魔物に襲われる前にお縄となり命だけは助かることだろう。



「大丈夫ですか?」

「は、はい。助かりました。そ、それで……あなたも……その……だ、大丈夫ですか?」

「無論」


 座長は『頭は大丈夫か?』とやんわり訪ねたのだが、『勇者さん』には伝わらなかったらしい……。


「ふむ……旅芸人一座でしたか。あの様に若く美しい御婦人も居られたのですね……では、改めて挨拶をば」

「い、いえ!大丈夫です!あの娘達は人見知りでして……」

「そうですか。では、怖がらせてはいけませんな……ならば、私はこれでトゥ!」


 全裸にマスクの変態さ……『勇者さん』は再び大空へと飛び立ち、去っていった……。


「ざ、座長……大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫だ。皆、怪我はないか?」

「はい。………。しかし、あの変態は一体……」


 旅芸人一座は皆口々に変態について語っている。女性達はその姿を思い出し嬉しそうに笑っていた。


「確かに変態かもしれないが悪い変態ではないのだろう……我々はこうして無事。しかも見返り無しで救って貰った」

「そ、そうですね……。あ……でも、メルフィーネが白眼に」

「……あの娘には少し刺激が強かった様だな……」


 旅芸人一座の少女に衝撃を与えた『勇者さん』……彼等とは後に別人として再会を果たすことになるのは余談である。



 その後も各地で助けを求める声を聞く度に『勇者さん』が現れこれを解決。これが後に伝わる『裸のヒーロー伝説』……勿論、酒場の酔っ払いがする与太話程度の伝説がここに生まれたのだ。



 取り敢えず大空の散歩に満足し居城に戻った『勇者さん』は、一風呂浴びることにした。



 未だ誰も目覚めぬ朝──『勇者さん』が入ったのは何と女湯。男湯より広い女湯で満足げに鼻唄混じりの『勇者さん』は、未だマスクを被ったまま。


 と、ここに第一の被害者が現れる。


「きゃあ!………だ、誰?不審者……いや、でも不審者は入れないって言ってたわよね……」


 風呂好きになったシルヴィーネルは朝風呂を浴びに来たのだが、そこで不審者にしか見えない『勇者さん』と鉢合せ……慌てて身体を手で隠す。


「ん?シルヴィちゃんか……一緒に入ろうぜ~ぃ?」

「………?も、もしかしてライなの?」

「もしかしなくても俺だけど?」

「そ、そんなの被ってたら不審者にしか見えないわよ……大体、何で女湯に……」

「そんな細かいことより俺と入浴しようぜ?シルヴィちゃんに聞きたいこともあるし」

「う……断りたいんだけど……」

「だが、その拒否を断る!」


 手招きしている『勇者さん』に幾分警戒しながらも、シルヴィーネルは話というものが気になり仕方無いとばかりに入浴することになった……。


「な、何でそんなの被ってるのよ……」


 鱗を使い大事な部分を水着の様に隠したシルヴィーネルは、少し距離を置いて入浴。

 だが、気付けば肌が触れそうな程近くに移動している『勇者さん』……勿論マスク以外何も付けていないので、うっすらと大事なものが見えている。


「は、話って何?早くしないと皆起きて来て誤解されるわよ?」

「ん?大丈夫、大丈夫……これ、夢だし」


 そこでシルヴィーネルはようやく合点が行った。何がどうなったか、『勇者さん』は夢を見ているつもりらしい。


(夢じゃないんだけどなぁ……)


 少しモジモジしているシルヴィーネルだったが、『勇者さん』はマスクを脱ぎ捨てシルヴィーネルの肩を掴み熱い視線を送った。


「ちょっ……ライ!」

「うん……やっぱりシルヴィは美少女だ。美少女最高~!」

「………もぅ!何でこんな目に……」


 朝風呂に入りに来た筈なのに何故かライと混浴する羽目に……シルヴィーネルが顔を真っ赤にしているのは湯船の温度のせいではない。


「い、良いから聞きたいことって何?」

「シルヴィってさ?ドラゴンじゃん?」

「え……?うん、そうね」

「でさ?ドラゴンの姿になるじゃん?あれ、何処にオッパイがあるの?」

「~っ!……何かと思えばどうでも良い話を……」

「どうでも良くない!美少女のオッパイは何より優先すべき問題ぞ!」

「ぞ!って何よ、!って……」

「ねぇねぇ、シルヴィ……オッパイ触って良い?」

「駄目!」


 すっかりエロ野郎と成り果てた『勇者さん』はまるで酔っているかの様である。


 そこでシルヴィーネルは残酷な事実を伝えることにした。


「ライ……実はね?」

「え?も、揉んでも良いのでせうかな?」

「違うわよ、もう!ライ、これは夢じゃないの……現実なのよ!」

「…………。ハッハッハ、ご冗談を」

「冗談だと思うなら確めたらどう?丁度良い相手が来たみたいだし……」


 入浴してきたのはメトラペトラ……『勇者さん』と目が合った瞬間、あまりの見慣れぬ光景に固まっていた。

 やがて楽しそうにニマニマと笑うと、メトラペトラは『勇者さん』の隣に入浴した。


「ほうほう。まさか、こんな朝っぱらからお盛んな行動に出るとは……お主も随分積極性が増したのぅ」

「………。師匠!愛してるよ~?ムチュ~!」

「シャーッ!!」

「べぼあぁぁぁ!ブクブクブクブクブク……」


 必殺・『猫膝蹴り』を人中きゅうしょに喰らった『勇者さん』は、悲鳴を上げて湯船に沈んだ……。


「い、一体何じゃ、いきなり……説明せい、シルヴィよ」

「それが……どうもライは夢の中と勘違いしているみたいなのよ。今の一撃で目が醒めれば良いんだけど……」

「………さっぱり意味が分からん」

「あたしも分からないわよ!」


 原因不明の奇行……思い当たる節がない二人はあれやこれやと意見を交わす。

 しかし二人はハッ!と気付いた……。奴が湯船から上がって来ないのだ。


 湯船の中を捜せばまるで魚の様に自由に移動している『勇者さん』の姿が……。


「…………」

「…………」

「ど、どうやら、まだ目醒めていないらしいわね……」

「くっ……!【呼吸纏装】まで無駄に使いおって」

「どうする、メトラ……」

「今ふん捕まえて叩き起こしてやるぞよ?」


 しかし『勇者さん』、速い速い……メトラペトラが近付くと加速して逃げる。まるで本物の魚である。


「くっ!このっ!ニャロメ!」


 しばし追い回していたメトラペトラだったが、やがて面倒になりとうとう諦めた。


「あれは人魚でもなければ捕まらんわ……もう知らニャイ」

「い、良いの?もうすぐ皆起きて誰か来るかもしれないわよ?」

「知ったこっちゃニャイわ。寧ろ誰かに見付かった方が良ぉく反省するじゃろ」

「う……それはそれで気不味い気がするわね」


 しかし捕まらない以上どうしようもない。


 その内シルヴィーネルの言葉通りマリアンヌが現れ、続いてアリシア、フェルミナと続く。そんな日に限って皆が朝風呂に入るという不思議──全員が入浴した後に事情を聞かされた。


「ごめんなさい………意味が分かりません」

「大丈夫よ、アリシア。私も分からないから」


 アリシアの肩に手を置いたシルヴィーネルは残念そうに頷いた。


「も、もしかして【魔人転生】絡み?だとしたら私が……」

「全然関係無いから安心せい、エレナよ」

「そ、それなら良いけど……」

「じゃあ一体何が原因でお兄ちゃんは?」

「さてのぉ……少なくともワシとの旅の間はこんなことは無かったぞよ?ライ自身は奥手じゃからの」


 困った一同。そこでマリアンヌが考察と打開策を述べる。


「恐らく夢と思われていることで自制が利いていないのでしょう。無意識に溜めていた欲望が漏れ出ているのかと……」

「ふむ……有り得るのぅ。奴はムッツリじゃし」

「それで……どうしたら良いの、マリアンヌ?」

「はい、フェルミナ様。ライ様がお好きなものは何でしょうか?」

「えっ?……。女の子の胸、かしら?」

「はい。ですからライ様が姿を現した際に全員の胸で誘き寄せるのです。後は捕縛すれば……」

「ぜ、全員?わ、私もでしょうか?」

「そうです、トウカ様。全員でないと誘き寄せるのは無理かもしれません。それに、このまま放置すればライ様は性犯罪を起こす可能性も……」

「……。わ、分かりました」


 とんでもない提案が為された女湯。しかし、『勇者さん』をこのまま女湯で回遊させたままにしておく訳にもいかない。

 意を決した女性陣はライが顔を見せるのを待った……。


 やがてニュッ!と水面から頭を出した『勇者さん』は、女性陣をチラ見しながら浴室の壁を登り始めた。まるでヤモリの様に移動した後、天井から女性陣を凝視している。


 勿論……全裸で……。



 当然通常なら女性陣は目を覆う場面だが、今はそんな場合ではない。


「皆様。恐らくライ様を目醒めさせれば全て夢だと思う筈──ライ様の全てを見たい方は今の内にしっかりと目に焼き付けないと損ですよ?」

「お、おお……。マ、マリアンヌ、恐るべしじゃな」


 グッ!とガッツポーズのマリアンヌ。勿論フェルミナも凝視している。ライの全裸はこうして同居人全てに堪能されることになった……。


「待って……ライが何か言ってるわ……」


 微かに呟く『勇者さん』──耳の良いシルヴィーネルがその言葉を皆に伝えた。


「えぇと……『タオル……湯船……ダメ』だって……」

「乳房が見たいが為に屁理屈を捏ねておるのぉ……」

「これは好機です。さぁ皆様、一斉に……」


 バッ!と胸を晒した女性陣の姿に『勇者さん』が天井を這い回る速度が上がる。かなり興奮していらっしゃる様だ!


「さぁ!ライ様の大好きなものがこんなにありますよ~?」

「お……おおおおおおおおお……おぱ~い!?オッパイがイッパ~イ!」


 マリアンヌの呼び掛けで天井から滑り落ちる様に女性陣の胸を目掛け落下する『勇者さん』……それを待ち構えて居たのはメトラペトラだ。


「正気に戻らんか!このバカ弟子がぁぁぁっ!!」

「ぷげぁぁぁぁぁっ!」


 メトラペトラ奥義・昇猫拳炸裂。『勇者さん』は顎に打撃を受け空中で二、三度弧を描いた後、再び落下──。それを受け止めたのはマリアンヌの大きな胸だった。


 周囲は夢のオッパイ祭……だが、ライは気を失って湯船に浮かんでいる。その顔は心底幸せそうだっだ。



 こうして『スーパーリビドー勇者さん』はライの奥深くで再び眠りに就いたのだった……。



「しっかし、何じゃったのかのぉ……」

「さっぱり分からないわね……何か酔っぱらっているみたいに見えたけど」


 シルヴィーネルの指摘に唸るメトラペトラ。今のライは酒を呑んでも酔うことはない。強烈な酒を樽で一つ呑んだとしても、ものの一分程で体内分解してしまうのだ。

 よって以前メトラペトラが行った力業の酔わせ方は出来なくなっている。


「ふぅむ……となると色香に酔ったのかのぅ」

「どういうことですか、メトラ様?」

「トウカよ、考えてみぃ……居城の同居人の殆どが若い女子、しかも美女揃いじゃぞ?意識せぬ方がおかしかろう?マリアンヌの言うように普段からの欲望が抑制出来なかったのかもしれんのぅ」

「……ライも男だからね。それも仕方無いかも」


 神聖教徒のエレナや御使いのアリシアは、人の性欲というものに多少寛大だった。それが人という生物が子孫を残す為の在り方だと理解しているのだ。

 特にエレナはアウレルを見慣れていたので耐性が高く寛容だった。


 無論そこには、犯罪は許さないという前提はあるのだが……。


「じゃあ、ライさんは危うく女性に手を……」

「それはあるまい。先にも言うたが此奴は奥手じゃからのぅ……じゃからこの程度で済んだんじゃろ」

「ホ、ホオズキ達のオッパイ、見られちゃいましたけど大丈夫ですか?」

「子供のチッパイが何じゃと?」

「ホオズキ、子供じゃないですよ!」

「冗談じゃ、冗談……このまま服を着せて部屋に寝かせてしまえば、全ては此奴の夢の中の筈じゃ。ワッハッハ!」


 メトラペトラの言葉に女性陣は安堵で胸を撫で下ろした……。





 ところが、ここで一つ……ライは自らの記憶を夢と認識しなかった。

 自分が見ていたものが全て実際に起こった出来事であると理解していたのだ。



 結果───ライは己の奇行に深く落ち込んだ……。




「よう、ライ!昨日話した傭兵団なんだけどよ……って、ど、どうした!な、何があった!?」


 ライの部屋に訪れたティムが目にしたのは、ベッドに腰掛け真っ白に燃え尽きた漢の姿……。


「夢だけど……夢じゃなかった……」

「は?な、何言ってんだ?」


 この場合の『夢』は己の願望たるオッパイ祭りのことを意味しそれが現実であったと語っているのだが、そんなことがティムに分かる筈もない。


 そんな、幸せと恥ずかしさ……同時に皆にどんな顔をすれば良いのかという葛藤を繰返し悶絶、燃え尽き掛けていたのである。


「おお……ティムさんかい?ゆっくりしてお行き」

「そんな爺さんみたいに萎れて……」

「どれ。若い者の為に一つ為になる昔話を……」

「帰ってこ~い!コノヤロウ!?」


 ティムの往復ビンタを受けたライだが一向に覇気が戻らない。

 そこでティムは懐から一冊の本を取り出しライの前に差し出した。


「………。これは何じゃな?」

「フフン。コイツはな?『愛の虜』の内容を更に厳選し新たに作られた本……その名も『愛欲の聖典~超実践版』だ。エクレトルの魔導科学を解読したラジックさんの技術で、まるで実物を写した様な見事な絵で解説されている」

「な……なん……だと?」


 みるみる生気を滾らせ始めるライ。それを確認したティムは笑顔を浮かべ自慢気に続ける。


「しかも、コイツは試作品……世界に数点しかない。まぁ中身を見てみろよ」

「お、おお……」


 本を開いたライは途端にカタカタと揺れ始めた。その本にはロウド世界に普及していない……いや、正確には現時点でエクレトルのみが持つ技術の『写真印刷』が為されていたのだ。


 ライ──カルチャーショック!一気に80の悶々ポイント獲得!やったね!


「テ、ティム君……き、君はこれをどうするつもりなのですか?」

「無論、勇者様に献上致しましょう。傭兵街構想についてお世話になりましたからなぁ」

「……お心遣い痛み入ります」

「フッフッフ……ワレワレ、トモダチ、トモダチ」


 大事なことなので二回言ったティム。ライは感動のあまりの全ページを速読。本を閉じると、その素晴らしき出来映えに感慨深い表情を浮かべている。



 チャララッチャ~!ライは【エロ本】を手に入れた!



「どうだ?元気出たか?」

「ああ!世の中を回しているのはエロだからな!元気モリモリだ!」

「ハッハッハ!そりゃ良かった」


 ライは素早くエロ本を【空間収納庫】に回収……。そこには先程までの落ち込んだ表情はない。


 幸いなことに朝の散策では全裸を見られても顔を隠していたのだ。風呂での出来事は女性達に夢だということで押し通してしまえば良い。


 そんなライは同時に自分が見たものの素晴らしさで【悶々ポイント】が増して行く。


 でも大丈夫……一度『スーパーリビドー勇者さん』に変化したライは、少しだけエロ耐性を手に入れたのだ。

 現在【悶々ポイント】の最大値は凡そ300──上手く調整出来れば『スーパーリビドー勇者さん』は二度と現れない筈である。



 勇者の休息最終日はそんなエロあり、オッパイあり、混浴ありといった幸せながらも波乱の滑り出しとなった……。



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