第五部 第三章 第十六話 託された契約 


「それじゃ行くぞよ?」

「お願いします!」


 翼神蛇アグナから切り離した黄泉人と戦う為、ライが再び結界の中へと移動をしようとしたその時……高らかに制止の声が響く。


「ライ殿!待たれよ!」


 地上より飛翔し現れたのはアサヒ、それともう一人……長い黒髪の若武者。

 ライは男の顔に見覚えは無い。しかし、その声で即座に正体に気付く。


「コウガさん……大地の異変は?」

「無事安定した。皆は今、最後の仕上げを行っている」

「仕上げ?」

「精霊達と約定を交わしているのだ。ディルナーチ大陸の異変が起こった際の協力と対価の話をな」


 対価と言っても大きなものではない。精霊への感謝や酒の奉納、祭事と言った交流である。

 龍達はディルナーチ大陸の精霊達と協議の末、燃灯山に祠を造り祀ることで精霊側が火山の異常を見守ると折り合いが付いたそうだ。


 現在、魔力の高そうな岩を削り出し精霊の為の祠を建立している最中だという。


「良かった……じゃあ、ディルナーチ大陸はもう大丈夫ですね」

「これもライ殿がアサヒの言葉に耳を傾け、俺を見付けてくれたからこそ……結果として俺も救われた。感謝の言葉も無い」

「これも縁ですから感謝は不要ですよ。どうしてもと言うなら、ずっと心配していたアサヒさんにしてあげて下さい。それで……身体の疲弊は大丈夫ですか?」

「カグヤ様の術のお陰ですっかり疲弊は回復した。それで……ライ殿には立て続けで申し訳無いのだが、実は聞いて貰いたいことがある。我が友キリノスケの件なのだが……」

「封印が解除されたなら幾分負担が軽くなった筈ですよね?」

「ああ。だが、残された時間はやはり少ない様だ。そこで精霊契約の話になるのだ……」


 キリノスケは精霊を通じ経緯を把握しているらしく、アグナの解放に安堵しているとのこと。

 しかし……これまでの負担も重なり余命が幾許もない為、精霊達を託す人物を探しているのだという。


「ドラゴン族は精霊や聖獣と個体契約を出来ない。だから他に託せる者をと考えていた」

「契約出来ないって……何でですか、メトラ師匠?」


 コホンと咳払いを一つしたメトラペトラ。師匠の知識の見せどころである。


「精霊、聖獣・霊獣・魔獣、ドラゴン……これらは元を質せば皆、世界の調整役たる存在じゃ。生態や性質、意識に違いはあれど、皆自然に干渉する力を有し魔力を糧に成長する」

「へぇ……。長く存在すると成長する訳ではないんですね……」

「長く存在すれば魔力を取り込む量も必然的に増えるからのぅ……結果としてはそれでも間違っては居らん。が、契約を成せば更に多くの魔力を得られるじゃろ?ドラゴン族以外は皆、それを望むのじゃ」

「何でドラゴン族だけは別なんですか?」

「ドラゴン族は他種族より肉体側に寄っておるからのぅ。人間の様に食で魔力を増やすことも出来る。対して聖獣・霊獣は中間、精霊は【精神体】寄りじゃ。精神体に近い程、環境や契約者の魔力供給で自己成長が起こし易い」


 勿論、個体差により違いはあるという。


 例えば蟲皇は甘味を求め実体化していることが多く、その甘味から魔力を取り込む術まで身に付けた特殊体だ。

 また、剣に変化したフィアアンフも魔力を糧として存在することが出来る。それは限定的な解放で竜に戻れるようになった今でも変わらない特殊体質らしい。


「ドラゴンと精霊の契約は、例えるならば同格の王同士が『お前の財を寄越せば、俺はもっと栄える』と言っとるようなものじゃ。精霊に魔力を与えてドラゴン自身が成長を遅らせては、契約自体が本末転倒という訳じゃ」

「……つまり魔力を糧として成長する存在でも、『格』として対等な存在から魔力を奪われるのが嫌だと?」

「そうじゃ。厳密に言えば、個体間契約でなければ問題はなく契約をするしの。先程コウガから聞いた『火山の沈静』などは互いの領分を守る為じゃから何ら問題はない」

「成る程……面倒臭い」


 だが確かに、種族の違う相手から力を借りるなら同族から借りた方が話が早く纏まり対価も安く済むだろう。


「種の区切りという認識が薄いお主からすれば、確かに面倒に感じるじゃろうな」

「じゃあ、『半精霊格』の俺は何で契約出来るんですか?」

「人という存在はかなり特殊での……条件さえ合えば何者との契約が可能なのじゃ。その成長は雑食とでも言うかのぅ……何でも力として利用する。お主は半精霊の『霊格』としての力を持ち得ては居るが、存在定義としては人じゃ。この先精霊、大聖霊格に至ったとしてもその根底は人。じゃから問題は無い……但し」


 再び咳払いを一つ行うメトラペトラは、勿体ぶった様に告げる。


「それらの『格』を超越する手段もある」

「それは……【神衣かむい】のことですか?」

「そうじゃ。全ての存在は【神衣】……つまり『神格』に至る可能性を内包する。『神格』に至った存在は、それより下の格を支配下に置くことが可能じゃ。もっとも、実際にそこに至るのはほんの一欠片の存在……それは以前も告げたの?」

「前例が二人しか居ないんでしたっけ……」

「いや、三人じゃな」

「あれ?記憶違い?」


 三人目が自分という自覚が無いライには、本気でそう考えるしかない。メトラペトラも中々に意地が悪い。


「話が逸れたのぅ……それでコウガよ。契約精霊をどうするという話じゃ?」

「はい。キリノスケの身近には現在、精霊を扱える器を持つ者がいないとのことなのです。しかし契約を破棄するのは忍びないので、誰か継いでくれる者はいないかと……」

「それがライと言う訳か……じゃが、今のライには最早精霊は不要な気もするがのぅ」


 契約による使役は聖獣だけで事足りる。既に契約している精霊・蟲皇は、ライの中の“ 幸運竜ウィト ”に引かれて現れた存在。故に契約は仕方無いとしても、他の精霊まで契約する必要も無いのだ。

 力を増したライにとって契約による魔力負担は然程でもないだろう。しかし、それでも浪費は避けるべきとメトラペトラは考える。


 だが、そこは『お人好し勇者』──申し出を躊躇なく受け入れた。


「分かりました。お引き受けします」

「うぉぉい!そんなに契約増やしても意味が無いぞよ?」

「取り敢えずですよ、取り敢えず。新たに契約すべき相手が現れたら譲渡すれば良いでしょう?」

「それは……そうじゃが……」

「精霊との繋がりを断ってからまた精霊を捜すんじゃ大変ですからね。それにメトラ師匠、先刻さっき言ったじゃないですか………貰える力は全部貰っておけって。どうせならそれを俺の封印に使えば良い」

「むむむ……まぁ、お主がそれで良いなら構わぬが……精霊ども大喜びじゃな」

「へ?何で?」

「何でも何も、お主の魔力は強力で密度も濃い。加えて全属性取り揃えじゃぞ?精霊からすれば喉から手が出る程の馳走よ。まぁ、それは聖獣も同じではあるがの」

「う~ん……カブト先輩に集られる木の気分ですね。ま、ともかく……」


 コウガにクルリと向き直ったライは承諾の意を示した。


「契約移譲の件、確かにお受けします……けど、どうすれば?」

「今は俺が精霊使役を代行している故、この掌に触れ契約譲渡を告げれば良い。……ライ殿。我が友キリノスケの意を汲んで頂き感謝する」

「本当はキリノスケさん本人にお会いしてみたかったんですけどね……今はアイツを何とかしないと……」


 魔獣化した火鳳を解放する術が思い当たらない以上、この場を離れる訳にも行かない。《混沌陣》は長時間の封印用魔法ではないのだ。


(師匠……削られた寿命って回復魔法で治せます?)

(内側の力で蝕まれた場合は魂自体の疲弊……一度【魂の大河】に還らなければ回復はせぬ。こればかりは無理じゃろうな。が、条件に拘らねばキリノスケとやらの意識を残す方法は幾つかあるぞよ?それが今から間に合うとは思えぬがの……。命というのは簡単な様で複雑なのじゃよ)

(そう……ですか……)


 それは華月神鳴流開祖トキサダの様に魂を移すことや、メトラペトラが以前見せた意思ある炎……そんな存在への転生。

 しかし、キリノスケがそれを望むかとコウガに問えば首を振るばかりだった。


「キリノスケは人として死ぬことを望んでいる。実は龍の秘薬を飲めば人を捨て長らえることも可能なのだ。だが、それを拒み今日まで……」

「何でそこまで拒絶を……。俺なんてもう厳密には人じゃないのに……」

「想い人が居たのだ、キリノスケには……。その者も既にこの世の者では無いと聞いている。だから、早く会いたいのだろう」

「魂の……伴侶……」

「寧ろキリノスケは、王家の責務とはいえ今まで良く生き抜いたと言える。翼神蛇の封印が解け黄泉人退治をライ殿に託した今だからこそ、穏やかに逝けるのだろうな」


 そして、精霊を託せば思い残すことは無い……そんな気持ちがライに理解が出来る訳もない。


 死んだら終わり──想いを伝えることも、己が想いを持っていたことも消えてしまう。そして自分を想う者達には深い傷を残すのが【死】──。

 それならば、僅かでも足掻き生き長らえるべきだと考えるのは傲慢だろうか……と、ライは考えてしまう。


 ヤシュロをうしなったハルキヨの最期を見届けて以来、ずっとそんな考えが心に焼き付いて消えない……ライはそのことを誰にも相談出来ずにいた……。


「ある者にとっては【死】は解放じゃ。ライよ……お主はお主の【生】の果てを選べ。他者の命は他者のもの……。死に様を選んだ者に対し哀れむことや疑問を呈して良いのは、家族だけじゃぞ?」

「やっぱり……俺は傲慢ですか?」

「傲慢とは言わぬよ……が、お主は個を重んじる。ならば死も尊重せよという話じゃ。それが生きると言うことよ」

「辛いですね……生きるって」


 そんなライの肩に力強い手を乗せたコウガは、穏やかな顔で微笑んでいる。


「済まぬ……我が友の為に心を砕かせた。だが、笑ってやってくれぬか?キリノスケはそれを望む筈だ」


 笑顔に見えたコウガの目には一粒の涙が見える。

 真に辛いのはキリノスケの友であるコウガ……その事に気付いたライは申し訳無さで項垂れた。


「スミマセン……コウガさん」

「ライ殿よ……人より長きを生きる我ら龍でも、生きることの在り方など未だ判らぬのだ。結局悩み続け答えを出すしかない。ライ殿はキリノスケの意を汲んで精霊を受け取ってくれる……今はそれで良いのではないか?」

「わかりました………」


 今更出来ることなど限られる。当人が心から望むことを捩じ曲げるなどライには不可能なのだ。

 ならば、せめて願いを受けとらねば自らも赦せなくなる……。



 コウガの差し出した右手にライが自らの右手を突き出し重ねると、コウガは契約譲渡の言葉を紡いだ。


『我、契約者キリノスケに代わり力を借り受ける者。汝らが主キリノスケの意により新たな主への契約移行を命じる』


 コウガの言葉を受けたライは続いて契約を開始。コウガから手を離したライの周囲には、五体の精霊が浮遊する。


『我が名はライ・フェンリーヴ。新たな契約者となるに当り契約と意思の確認を行う。不服・要求あらばこの場にて告げよ』


 五体の精霊はそれぞれの名と対価を告げる。対価は全て適度の魔力の供給。新たな要求や不満は無いとのことで、差し障りなく契約完了に至った。

 ライの右腕には契約紋章が合わせて六つとなり、左右の腕は契約印で埋め尽くされた。


「……こっちは統合されなかった」

「契約した精霊はほぼ同格……故にじゃな。じゃが……」

「ええ……全て最上位精霊なのは分かります。キリノスケさんはこれを一人で扱ってたのか……」


 それこそ神羅王の器だったのではないかと惜しむ気持ちが疼く。


「……感謝するぞ、ライ殿。済まぬが俺は今からキリノスケの元へと向かう。少しでも苦しみを和らげてやりたいのだ」

「はい……キリノスケさんに宜しく」


 首肯くコウガ。続いてアサヒがライの手を取り、その手に縋る様に頭を下げた。


「ありがとうございました、ライ殿。あなたがいたから、コウガ様はこうして無事に……」

「アサヒさんがコウガさんを心から心配していたからですよ。でなければ俺とも出会わなかった。……アサヒさん、どうか自分の気持ちを偽らないで下さいね」


 二人は改めて感謝の意を示した後、銀と赤の龍に変化し彼方の空へと去っていった。


 アグナとの戦いで既に半裸のライは、晒されている自らの右腕……精霊契約紋章を確認し、その腕でグイと目元を拭う。


「会ったことすら無い奴の為に泣くとは……どれだけ泣き虫なんじゃ、お主は?」

「………泣いてないですよ」

「……まぁ良いわ。で、黄泉人をどうする?」

「勿論……救います」


 メトラペトラは溜め息を吐きつつ首を振る。

 キリノスケの件はライの救いたがりに拍車を掛けることとなった様だ。


(倒す……ではなく、救うか……。じゃがのぅ……)


 【黄泉人】は【御魂宿し】が死後に変化する形態。加えて、即時魔力回復する火鳳を聖獣転化させるのは至難の技。

 ライの意気込みが裏目に出ることを恐れたメトラペトラは、念入りに忠告を行う。


「火鳳が救えぬと判った場合、倒す手段は跡形もなく消し去るしか無い。それこそ灰すら、塵一つすら残さずにの……」

「わかりました。覚悟だけはしておきます」

「うむ……ライよ。優先すべきを忘れるでないぞよ?今までも何度も諭したが、お主が傷付けば悲しむ者は多い。キリノスケの身の上を理解出来るならば、それを己に重ねよ」

「……大丈夫ですよ、メトラ師匠。わかっては……いますから」

「ならば良い。行くぞよ?」

「お願いします」


 《心移鏡》により残していた結界の中へと移動したライ。先の結界の半分程だが、戦うには十分な空間が確保されている。

 内部で待っていた分身は本体の出現に合わせ【黒身套】を展開。《混沌陣》を解除した後、黒い宝玉を力の限り殴り付け破壊した。


 砕けて砂のように崩れ行く宝玉……内部から瘴気さながらの黒い霧が噴き出し、同時に黒みがかった炎が熱波を放出する。


 霧が晴れ中から現れたのは異形──。人面鳥……炎で形造られたその造形。その顔は間違いなく長い髪の女だった。


「……っ!」

「怖じ気付くでない!それは人の姿を残しているだけに過ぎぬ!」


 女の顔に躊躇したライに解放された火鳳が迫る。肩口を爪が掠め、傷口から炎が立ち上ぼりライの皮膚を焼け爛れさせた。


「どうした!動きが鈍いぞよ?」

「くっ……!」

「救いたいならば姿程度で躊躇するでない!お主がそのザマならワシが消し飛ばして終わりにするぞよ?」


 檄を飛ばすメトラペトラ。その意図を理解しているライは、迷いながらも何とか奮起し動きを取り戻す。


 火鳳は確かに強力……だが、その力はアグナに比べると幾分落ちる。油断さえしなければライが後れを取ることはない筈だ。


 更に新たに加わった翼神蛇アグナの力……試しに使用した契約能力は、思いの外多彩な力を宿していた。


 火鳳の炎がライへと迫る中で、盾がわりに使用した《具現太陽》は炎を吸い取る効果を見せる。

 続いて《植物創生》による拘束……高速増殖の植物は自在にその形状を変えることが可能だった。網状に展開しそのまま捕縛……植物では瞬時に焼き尽くされる為、ライは《物質変換》を行い植物を金属に変化させる応用まで行った。


「……凄ぇ使い勝手が良い。俺、良くアグナに勝てたな」


 その能力は概念からの干渉。魔力を殆ど使用せず、発動の溜めも無い。黄泉人に操られている間のアグナは、意識の抵抗で攻撃のタイムラグを発生させていたのだと今更ながら理解させられる。


 しかし、火鳳も然る者。その身を捕らえた鉄の樹木を瞬時に溶かし拘束から逃れると、複数体に分裂し炎を撒き散らしつつ乱れ交い始めた。


「ぶ、分身?幻覚?」

「全て実体ではあるが本物は一体のみじゃ。お主の纏装分身と似ておるの」

「なら……全部迎え撃つ!」


 展開したのは氷結圧縮魔法 《氷華柩》。火鳳の数に合わせ魔法を放ち氷の華に閉じ込めた途端、火鳳は爆発し全て消し飛んだ。


 しかし……次の瞬間には小さな火が灯り、瞬く間に元の火鳳へと再生を果たす。


「……本当に不死身なんですね」

「厳密には不死身な訳ではない。火鳳も特殊な聖獣の一体でのぅ……十年毎に寿命で燃え尽きる。その後、星の循環に組み込まれ魂を浄化した後に地上に再誕を果たすのじゃが……輪廻を僅か一日で戻るのじゃよ。勿論、記憶を保持したままのぅ」

「うはぁ……倒すのはやっぱりメトラ師匠の言ったように?」

「塵一つ残さず消滅させれば再生はせぬ。他に方法は無い」


 定期的な魂の浄化で状態を維持している火鳳は、本来最も魔獣化しづらい存在なのだ。その特殊性は【不浄存在を自らの炎で焼き払い浄化する】役目を担う故のもの。

 しかし……御魂宿しという存在と出会い契約、不運にも『裏返り』が起こってしまった。浄化する側の存在たる火鳳が自らが不浄となるなど、ある意味奇跡的な確率で起きた不幸とも言える。


「仕方無い。とにかく……片っ端から試してみます」


 額のチャクラを開き火鳳を《解析》……確かにその力は強力。中でも特に主だった力は《状態復元》という常に最善を維持する力だ。

 だが……情報からは救う術が見付からない。可能性として有効な《浄化の炎》は火鳳自身が持ち合わせる能力。魔獣化している現在、自らにそれを使用することはあり得ないだろう。



「なら、次は……」


 風圧縮魔法 《空縛牢》に閉じ込めると同時に吸収特化分身を四体展開。《具現太陽》にて炎を奪いつつ、露になった火鳳の実体に分身体が取り付き魔力を奪い続ける。

 分身の魔力貯蔵が限界に近付く度に新たな分身を追加発生させ、本体ライに向け魔法を放ち魔力貯蔵を繰り返した。


 そうして無理矢理に火鳳の魔力を空に近付け、一気に本体ライが聖属性魔力を流し込む。


 一瞬抵抗した後、動きを止めた火鳳……次の瞬間、無惨にもその身体は飛び散った。


「なっ!何で……」

「反発したのじゃろう……聖属性魔力を流し込んだ体内で拒絶されたと見るべきじゃろうな」

「でも、魔力はほぼ空に……」

「火鳳の魔力はの……じゃが、宿主の中には憎悪の籠った魔力が残っておるのじゃろう。相反する属性は神格魔法の使い手でなければ維持出来ぬ……故の反発。やはり魔獣と宿主……分離せねば聖獣への転化は無理な様じゃな」


 それは実質、滅ぼすしかないことを意味する。


 実のところライは、今の策が上手く行かなくても分離が起こると期待していた……。そして、眼前の結果はその望みが絶たれたことを意味する。


 しかし、救う為に尽力するライの心が折れることは無かった……。

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