第五部 第二章 第六話 聖獣ハクテンコウ


 初めにに気付いたのはメトラペトラ……視線を上空に向けたままポツリと呟く。


「のぅ、ゲンマよ……聖獣があそこから出たことはあるかぇ?」

「いや……中で反応することはあったが、三百年間出てないと聞いている」

「では、初めてということになるのかの……聖獣が出てきたぞよ?」

「なっ!なんだと!?」


 一同は頭上に目を向けるが目映い閃光で直視が出来ない。だが、僅かに人影が大きくなっていることに気付く。

 その人影は真っ直ぐに一同の居る場所へと下降し、フワリと大地に足を付けた。


 メトラペトラと向かい合う様に立つのは、人より一回り程大きい白毛の狒々。四本の腕と二本の尾を持ち、額にはチャクラに似た目が確認出来た。


「な……何故、突然……」

「さてのぅ……じゃが、ワシに用がある様じゃな」


 もがくライの顔からピョンと飛んだメトラペトラ。そのまま浮遊し聖獣の前で止まると、聖獣は頭を下げた。


「大聖霊様。私は『白天猴はくてんこう』……御初に御目に掛かります」

「うむ……。如何にもワシは大聖霊……メトラペトラと言う。で、何用じゃ?」

「はい。私はかつての厄災の時分、大聖霊様に御慈悲を頂き難を逃れた者……その大聖霊様と同格の御方ならばと挨拶に馳せ参じました」

「それは殊勝じゃのぅ……が、あまり堅苦しくする必要は無いぞよ?」

「……有り難きお言葉」


 今まで出会った聖獣に比べ随分と畏まっている様に見えるハクテンコウ。霊獣コハクの様な念話ではなく、ディルナーチの人語で会話している。


「それはそうと、何故神具の中に居たんじゃ?」

「あの神具とこの空間は大聖霊アムルテリア様から頂いたもの。効果は属性の固定と魔力の増幅。中に居る限り厄災の影響を受けないと用意して頂いたものです。それで中に……」

「しかし、三百年じゃぞ?脅威が去った後も籠っとったのは長過ぎではないかの?」

「恥ずかしながら私は臆病なのです。人の負の影響が、争いが、狙われるのが怖い。そんな風に外での負の影響を考えてしまうと、どうしても……」

「それ程にのぅ……」


 見た目はかなり強そうな印象だが、穏やかで臆病なハクテンコウ。つまり『引き籠り聖獣』だ……。



「じゃが、純辺沼原の民まで怖いのかぇ?」

「彼らは私を敬ってくれましたし守ってくれていました。とても大切な家族の様に思っています……でも、私はそれに甘えてばかり……」

「じゃから警戒に協力しておったのじゃな……」

「しかし……今は申し訳が無いのです。私の存在は彼らに負担を掛け続けているのに恩を返すことすら出来ない」

「………じゃそうじゃぞ、ゲンマよ?」


 頭をボリボリと掻いたゲンマはハクテンコウの前にドカリと座る。


「初めまして……じゃあ無いが、改めて話をするのは初めてだな。俺のことは分かるか?」

「ゲンマ……この空間に居続けた為に魔人化を起こした、この街の長……」

「正解だ。俺は生まれた時からお前を見てた。親に怒られても櫓を登ってな?ここで飲み食いし続けたから魔人化した訳だが、そりゃあ俺の好きでやったことだ」

「はい……」

「この街の連中も同じだ。半年毎に入れ替わりがあるが、ここに来るのが嬉しいって連中は多い」

「…………」

「つまり、何が言いたいかってぇと……」


 再び頭をボリボリと掻いたゲンマは、ゆっくりと息を吐き肩の力を抜く。


「ずっと一緒に居たんじゃねぇかよ……。お前はこの純辺沼原の家族なんだから負担だの申し訳無いだの言うなよ」

「………ゲンマ」

「お前、アレだぞ?勝手に出ていったら泣くからな?………ゴホン!ま、街の連中もな?」

「………ありがとう、ゲンマ」


 ハクテンコウは目を閉じ頭を下げている。周囲には一人、また一人と人が集まり始めた。


「お前ら、何で……」

「いや、何か凄い叫び声がして目が覚めて……外を見たら聖獣様が降りてきたのが見えて……」

「……あ~……大聖霊の声か」


 視線を注がれたメトラペトラは、素早くライの懐に潜り込み顔だけを覗かせる。そして一言ニャア!と鳴いた。


「……今更、普通の猫の振りですか?」

「煩いわ!大体お主があんなもの飲ませるから悪いんじゃろが!」

「………」


 ライは掠れた音で下手な口笛を吹いている。


 そんなやり取りの間も住人達は集まり続け、やがて地下空間の住人は見張りを除き全員が集った様だ。


「おお、聖獣様が……」


 驚きの声が漏れる中、ゲンマは高らかに声を張り上げる。


「おう!ウチの家族のお目覚めだ。言いたいことがあるなら伝えろ!」


 この声を皮切りに住人達から感謝の声が降り注ぐ。


「ありがとう、聖獣様!」

「俺達は聖獣様がいたからこの世に生まれたんだ!ありがとう!」

「今年も豊作だ!ありがとう!」

「いつも、あかるくしてくれて、ありがと!」

「時々で良いから酒盛りをしよう、聖獣様!」


 折り重なる感謝や親愛は、幾百の言葉となりハクテンコウへと贈られる。


「なっ?言ったろ?」

「ありがとう……大切な家族達……。私は間違っていた。恐れる必要はなかった」

「気にすんな。家族だろ?」

「……ありがとう」



 かつて──純辺沼原の地には街など存在しなかった。其処はただ森と沼があるだけの僻地だったのだ……。


 しかし、ある時……領主の横暴に耐え兼ね逃げてきた民が暮らし始める。そこは豊穣の地で作物が良く実り、他の地より自然災害が少ないという利点があったのだ。

 やがて似たような立場で新天地を目指していた者などが流れ着き、一人増え、二人増え、そして集落に。更に集落は街へと発展を遂げた。


 そんな安住の地にすらも、盗賊などの脅威が近付きつつあった……。


 そんな時……街の者達は穏やかな“ 声 ”に導かれ地下へと辿り着く。

 そこに居たのは聖獣ハクテンコウ……一人の犠牲も出さずに難を逃れた住人達は、ハクテンコウへの感謝を示し、祀り、共に暮らすことを選んだ。


 純辺沼原の名は、ハクテンコウの聖なる力の影響で地上の沼が泉へと浄化されたことに由来する──これが街の成り立ちである。



「……フッ」

「どうしました、クロウマル様?」

「いや……廻り合わせが面白いと思ってな。もし地上で街の焼失を通り過ぎていたなら、我々はこの場には居なかった。ゲンマと拳を合わせることも無かったし、聖獣ハクテンコウが降りてくることもなかっただろう……」

「廻り合わせ……確かに」


 あの時、ライが捜索を提案したことが聖獣の覚醒に繋がったのだ。これも縁には違いない。


「ライ殿の……ライの行動はいつも周りに影響を与えると報告を受けていたからな。目の当たりにして改めて感じた。こうして久遠国も変わったのだな」

「……きっと奴は考えている訳では無いのでしょうね」

「かもしれぬ。が、だからこそとは思わぬか?」


 意図して行えば策に溺れる、機会を逃す、要らぬ疑いを招く。

 しかし、さも当然のように行動することこそがライの存在特性【幸運】の発動を促していることは当人でさえも知らない。


「さて……では、ハクテンコウよ。今後お主はどうするのじゃ?」

「私はあの神具に籠りきりになるのはやめたいと存じます。これからはこの民達と共に在りたい」

「……うむ。それも一つの選択じゃな。後悔せぬ選択をせよ。それこそが裏返りを防ぐ鍵でもある」

「ありがとうございます、大聖霊様……」


 聖獣ハクテンコウは、これより後守られるだけの存在ではなく守護者として力を振るう勇気を得た。例え外に負の影響があれど、純辺沼原の住人達が居れば【裏返る】ことはない……そう確信したのだろう。


 聖獣が人と在る場合、【御霊宿し】の様に個人との共存が主である。そんな中で、街との共存を選んだハクテンコウは新たな聖獣の在り方を選んだとも言えるだろう。


「さて……それでは……そんなお主に贈り物をやろう」

「贈り物……勿体無きことで御座います」

「では……。……。ホレ、何をぼうっとしておるんじゃ?早く用意せんか、ライよ?」

「え?お、俺?……ま、まあ良いですよ。元からそのつもりだったし………ハクテンコウ。上の神具を調べて良いかな?あと、少し手を加えたいんだけど……」

「……はい。大聖霊様のお弟子様とあれば疑う余地もございません。どうぞ、御随意に」

「そんな堅苦しくしなくて良いよ。俺はライ……だから普通にそう呼んでくれ」

「わかりました、ライ」


 ニッコリと手を差し出し握手を交わすライとハクテンコウ。挨拶を終えると今度はゲンマに向き直り相談を始めた。


「精霊結晶ってどれくらいあります?」

「そうだな……先刻見せたものがざっと二万、と言ったところか」

「少し貰っても良いですか?」

「それは構わんが……何をするつもりだ?」

「純辺沼原の防衛を構築します。それとハクテンコウの為の神具も」

「わかった……どうせ有り余ってたから好きなだけ使え」


 ライは首を振り苦笑いで返す。


「精霊結晶はいつか国が安定した時に必要になる。その時まで大事に保管しておいて下さい。その方が純辺沼原の為にもなる筈ですから」

「安定した時、か……。その時が本当に来るなら良いがな」

「来ますよ。国民はその位の期待をして良いんです。後は上に立つ者の責任なんですから」

「ハッハッハ!確かにな」

「ま、その『上に立つ者』をぶん殴りに行く訳ですけどね?」

「………そ、そうだったな」


 雁尾の領主が神羅国の第一王子と繋がっているならば、十中八九ロクな輩ではないだろう。そもそも、盗賊が当然の様に跋扈しているだけでも雁尾領はかなり治安が悪い。


「さて、と……それじゃゲンマさん……それとクロウマルさん達は休んでください。明日は早朝から訓練を兼ねた移動です」

「おいおい……手伝いくらいさせろよ。ここは俺達の街だぞ?」

「強くなりたいなら明日に備えて休むこと。明日は厳しく行きますよ?しかも、雁尾領主と戦うんですから」

「うっ……そう言われるとな」


 クロウマルに視線を向けたゲンマは困った表情を浮かべている。


「ライは……本当に大丈夫なのか?」

「実は、半精霊化した時点で睡眠はある程度調整出来るようになったんですよ。疲労が蓄積してなければ寝なくても平気なんです」

「しかし、作業が疲労になるのではないか?」

「その程度では流石に疲労になりませんから大丈夫。良いから休んだ休んだ。はいは~い、皆さん、お休みなさ~い!」


 ライはメトラペトラを懐に入れたまま魔石が保存されている倉へと向かう。


「だとさ……」

「………取り敢えず従うしかないな。実際、私達が居ても役には立てないだろう」

「そうだな」


 ハクテンコウに向き直ったゲンマは我が家へと誘うが、ハクテンコウは再び神具の中に戻ると告げ上昇していった。


「アイツ、遠慮しやがったな?」

「遠慮?」

「ライが明日は早いと言ってただろう?一緒に来ればどうしたって話したくなるからな」

「……成る程」

「まあ、これからは幾らでも話せる。折角の厚意だ、休ませて貰おうぜ」


 突然の来訪者による提言で雁尾領主との対峙にまで話が及び、明日にはそれを果たすことになった。実はゲンマは、そのことに胸が躍っている。

 唯一危惧していた純辺沼原の守りはライが何とかしてくれるとのこと。安心して行動を起こせるだろう。


「嬉しそうだな、ゲンマ」

「そう見えるか、クロウマル?……こんな僻地でも国を憂いてはいたのさ。今の神羅国はいけない、カゲノリが王では未来は無い、ってな……。そして恐らく、雁尾内の民は皆そう考えているだろう。俺だって今回お前達が来なけりゃずっと燻っていた筈だ」

「…………」

「とにかく明日……雁尾が変わる記念すべき日になるか、このまま腐敗するかが決まる……っと!早く寝るぞ?」

「ああ……わかった」


 クロウマルは思う。何故、民がこうも悩まねばならぬのか?何故この声は王に届かぬのか?と。それはクロウマルが改めて民の心を汲み取った瞬間でもある。


(フッ……自国の民ですらないのに、何故か同調してしまうな。貴公もそうなのか……ライ?)


 己の理想の王……その在り方に思いを馳せながらクロウマルは眠りに就く。そしてトビも同様に、民に寄り添うべき隠密としての在り方を模索しつつ微睡みの中へと沈んで行った。



 翌日早朝──。


 一同が揃った長の櫓には、再びハクテンコウが降りてきていた。ゲンマはハクテンコウの姿に変化が起こっていることに気付く。


「ほ~……格好良くなったな、ハクテンコウ」

「そう言われると嬉しいですね」


 ハクテンコウはライが用意した神具を身に付けている。


 聖獣に神具の組み合わせは、久那岐の天雲丸に与えた宝玉以来のこと。

 しかし今回は、ハクテンコウ自身が使用する為のものとして作製していた。


 その首に下げられた魔石の数珠玉は、天井に埋め込まれた大聖霊アムルテリアの神具を解析して作製した『小型版・属性固定』の神具。

 四本の手首にはやはり数珠玉を備え、《魔力増幅》と【防御魔法各種】【回復魔法各種】が付加されている。


 攻撃の魔法を組み込まなかったのは、ハクテンコウの優しさを慮ってのことだった。


「全部自然魔力で補えるから負担は殆ど無いと思う。手首の神具はアレと連動してるから、いざという時は試してみて欲しい」


 上空を指差すライに釣られ視線を向けたゲンマは、天井の神具とは別の球体を捉えた。


「なんだ、アレ……」


 元より存在した神具を取り囲むように四つ、球状の魔石が埋め込まれている。大きさは中央の神具の凡そ半分。色が澄んだ赤であることから純魔石製と推察された。


「あの珠は此処と地上防衛の装置ですよ。ハクテンコウの意思によって防衛が行われる。具体的には迷彩や幻覚で惑わせる、植物を利用した排除、それと魔法での防壁。あと街の住人にはこれを……」


 取り出したのはハクテンコウに渡した数珠と色違いの物が三つ……これはサイゾウに手渡した。


「二つは地上に配置されているゴーレムの操作用。普段は岩に見えるので分からないでしょうが、腕輪の念話で稼働します」

「凄いですね……」

「もう一つは偵察、追尾用。ずっと見張りを付けていたんじゃ大変でしょう?植物を元にした偵察型の蜂を生み出すようにしました。植物なんで水と光合成さえ出来ればいつまでも見張りは可能……大地に固定すれば長期の見張りが可能です。【意識拡大・弱】が付加されているので同時に操れるのは百程かな」


 言葉にするだけでもかなりのものだが、実際に稼働すれば住人達は驚くべきの性能を目の当たりにするだろう。


「それとゲンマさんにも……」

「ん?俺にも?」


 足元に置いてあった袋から取り出したのは籠手と具足。具足はクロウマル達と同じものだが、籠手はゲンマ用に手を加えている。


「その籠手は回復魔法以外に魔法を付加していません。代わりに全ての属性が使用可能にしてあります」

「俺の魔力の属性を好きに変えられるって訳か……」

「そうです。多様性は下がりますが、ゲンマさんの研鑽次第では強力な技が使えるようになるでしょう。それと【分身纏装】と【意識拡大・弱】も付加しましたから面白い技が出来るんじゃないですか?」


 分身を上手く利用した研鑽を行えば、ライの【王滅煉獄脚】の様な技が編み出せる筈だ。

 それは、ゲンマは自らの研鑽がある方が喜ぶと見越しての配慮だった。


「じゃあ、行きますか……。ハクテンコウ、会えて良かったよ。また会……えれば良いけど」

「ありがとうございます、ライ。……神羅国には私の様に地下へ逃れた聖獣がいます。流石に外には出ていると思いますが」

「わかった。もし会えたら声を掛けてみるよ。それじゃ、元気で。サイゾウさんも大変でしょうけど」

「いえ、色々とありがとうございました。皆さん、どうかご無事で……ゲンマをお願いします」


 別れを惜しみつつ地下から地上へ。そして焼失した街を確認に向かった一同は、驚きで足を止める。


「おいおい……家が……」


 焼失した筈の街には既に十件前後の家が建ち並んでいた。

 その造りはディルナーチの家屋ではなく、丸太を組んだ小屋。だが、暮らすには不自由が無いだけの出来だった。


「流石に家屋の修復は無理だったんで、復興に使えそうなものを建てたんですけど……」

「いや、充分だ。有り難い」

「良かった。さて……これより修行に移ります。移動しながらの修行は辛いですよ?」


 クロウマル、トビ、ゲンマは互いに頷き合い意思を確認した。


「まず全員に共通して必要なのは纏装の微細操作と維持。ゲンマさんは今の不完全な黒身套で良いので極薄での展開を意識して下さい」

「お前のやっていた様な状態か?」

「そうです。あれを常に維持すること。極薄なら消費も殆ど無いですから」


 元々実力者であるゲンマには、力の使い方のムラを無くす方針で修行を行う。

 それこそが完全なる黒身套に至る近道でもあるのだ。


「クロウマルさんとトビさんは、纏装をどこまで使えます?」

「私は一日の半分程、覇王纏衣の展開をしている」

「俺は覇王纏衣自体が使えないから命纏装を常時展開している」

「どれどれ……少し待って下さいね?」


 額のチャクラを開き《解析》を使用したライは、二人の能力の程を探る。


「え~っと……クロウマルさんはゲンマさんと同様の衣一枚での展開を意識して下さい。これを移動中も欠かさないこと」

「わかった」

「トビさんは……覇王纏衣の片鱗が見えますので、その完成を目指す方針で行きましょう。命纏装と魔纏装を重ねられます?」

「それは出来るが……」

「コツとしてはその境界を融かす様な感じですね。移動中の研鑽は難しいので、命纏装を展開し移動……手の平だけ魔纏装を重ねて試して下さい。感覚が掴めたらそれを全身で行う様に」

「わかった」

「俺も波動の研鑽をしながら皆さんの後ろを付いて行きますので、道案内のゲンマさんを先頭に移動して下さい。もし、違和感や不明なことがあったら質問をすること」


 同時にライは分身体を二十程発生させ散開させた。


「ん?何だ?」

「ちょっとした下準備です。夕刻になれば分かりますよ」

「……何だかわからんが、まぁ良いか。じゃあ出発するか?」

「そうですね。出来れば昼を一刻程過ぎた時に雁尾領主と面会出来るようにしたいですけど、可能ですか?」

「今からなら余裕だろう」

「では、行きましょう……はい!修行開始!?」


 ライの合掌による音を合図に一斉に移動を始めた一同。ゲンマを先頭にクロウマルとトビ、そしてライの順に森の中を駆け始めた。


「またしても弟子を育てることになったのぅ?」

「師匠という程の立場じゃ無いですよ、俺は」

「まぁ良い。お主には他者を育てることで見えることも出てくるじゃろうからの」

「…………」



 これより僅か一日……いや、半日程で一同は雁尾領の問題を解決する。端から聞けば笑い話か夢物語……。


 だが、この日──雁尾領の命運が大きく変わる様を多くの者達が目にすることとなる……。



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