第五部 第一章 第三話 開祖トキサダ
試練の間へと踏み出したライは、暗き空間を先へと進む。
その空間に入った途端、急に身体が重くなり視界も闇に閉ざされた。それは身体能力以外の封印……リクウの言っていたことを改めて実感させられる。
(纏装が解けた……感知も出来ない、か)
今までは寝る時でさえ極薄の纏装を展開していたライ。纏装を封じられたのはドレンプレルの騒動以来である。
無防備故の不安が僅かに心を過るが、これも修行とライは気合いを入れ直した。
そんな状態で更に進むと、部屋の奥にポツリと小さな火が灯る。蝋燭に付けられた一つの炎……それはやがて数を増し始め、最終的には部屋の壁を埋め尽さんばかりの数となった。
煌々と照らされた広間は剥き出しの岩肌……床も壁も硬い岩から削り出したものだ。広間上部には木造構造による部屋が見て取れ、その窓枠から心配そうなトウカが覗いているのが分かる。
(上から様子が見られる訳ね……)
更に広間の確認を進めれば、正面に岩で彫られた巨大な神像が浮かび上がっていることに気付く。
それは鬼神像とでも呼ぶべき姿──恐らくは久遠国の先祖、百鬼族を信仰したものなのだろう。
そしてその石像の足元……一本の刀が飾り気の無い漆黒の鞘に収まったまま、床石に突き刺さっていた。
(あれが一本だけある刀かな?……如何にも抜いた途端仕掛けが作動しそうな……よし、じゃあその前に幾つか確認するか)
戦いが始まればゆっくり考察を行う暇はないだろう。何せトウカやリクウが勝てないと断言した相手……戦闘が始まってからでは確認に意識を割くのは危険と判断した。
まずライが行ったのは『試練の間の中で意識拡大が可能か?』という確認──。
分身は纏装を封じられた時点で使用出来ないが、意識拡大だけならば可能かどうかを確認をしたかった。
これが出来るのと出来ないのでは大きく違いが発生する。だが、結果は『出来なくはないが負担が掛かる』という何とも微妙なものだった。
(出来ても分身二体分の意識拡大……しかも、それですら頭が痛い。使い過ぎの時と同じ感じだから無理に使うのは却って危ないな)
意識拡大は封じられたと考えて良いだろう。どのみちズルをしている様な後ろめたさもあったので、すんなり諦めが付いた。
(よし……。じゃあ、お次は……)
額の目……チャクラの使用。こちらは問題なく使用が可能だった。
(流石は神の存在特性……。あちらの制約より上位の力だから問題ないのかな?いや……使っても追い出されないってことは、俺の『肉体』の力と認識されたってことか……。なら、遠慮なく)
とはいえ、戦闘向きの力はあまり備わっていないチャクラ。貯蔵されている魔力も、恐らく引き出した途端に霧散するだろう。今のところ期待出来そうなのは『解析』といったところだ。
続いて調べたのは大聖霊紋章。これも使用が可能だったがハッキリ言って反則と言えるもの。当然使用する訳にはいかない。
これは自らの研鑽結果を確認する場……だからこそ明らかに戦力になるものは使用しないと決めていた。
(使用するのは『解析』だけ……後は自力だな。これで方針は決まった。後は肩慣らしを……)
何せ纏装を解いて戦うのは久方振りのこと。己の肉体機能を把握する必要がある。
軽い柔軟体操の後、全力での垂直跳躍。だが、何とライは勢い余って天井に激突……そのまま落下し岩製の床へと盛大に叩き付けられた。
「グェェッ!」
潰れた蛙のように床でピクピクとしているライの姿に、リクウは心底呆れる他無い。
「………。し、試練が始まる前から負傷する奴は史上初ではないだろうか……」
「………ま、まあ、ライはワシと出会う前から纏装付けっぱなしじゃからな……生身の感覚に慣れとらんのも無理はない」
「しかし……生身で天井にぶち当たるか。かなりの高さが確保されているのだがな、此処は……」
以前、リンドウとシギが生身で飛んだ凡そ倍近くの高さが確保された広間。その天井に“ 何とか触れた ”ではなく“ 勢い良くぶち当たった ”──それは『纏装無しでも化け物染みている』ことを意味している。
「寧ろ普段は、纏装が上手く身体を制御しておるんじゃろう。全力で戦えばライは災害級──それは魔王を倒していることからも解る。やはり、この先は封印を考えねばならぬじゃろうな」
人の世に過分な力。それでも人に寄り添おうとするライの気持ちを考えれば、更なる制御が必須となる──メトラペトラは改めてそう実感した。
その後しばらく壁や天井に激突を繰り返したライは、既にボロボロになりつつもようやく感覚を掴むに至った。
「いててて……あ、ヤベェ!回復魔法使えないんだった。自己再生が無理なら一旦出ようかな……」
しかし、自己再生は既に細胞単位で肉体に宿る力。損傷は瞬く間に再生され不具合を癒す。
「……骨や皮膚も頑丈になってるし、纏装の常時展開による肉体強化ってのは凄いね……」
そもそもの話で言えば、纏装が使えるだけで上級能力者に数えられる。当然ながら【覇王纏衣】が使える事すら稀。例え覇王纏衣が使えても、その常時展開は更に困難を極める。
その究極形である【黒身套】の常時展開など前代未聞のこと──それは細胞単位の進化を格段に促し、更に霊格を引き上げる結果へと繋がる。
魔獣モラミルトの細胞の力すら取り込んだ今となっては、身体は完全に別次元の構造となっていた。
ライの肉体は、もはやそれ自体が生物としての域を越えようとしていた……。
「運動能力は把握したし、回復力も残ったまま。後は………ま、良いや。そろそろ挑戦と行こうかね」
と、本人は自らの変化を気にも留めていない様子。まるで手慣れた日常動作のように、床に突き刺さった鞘からスラリと刀を抜き放った。
次の瞬間……呼応するように広間中央に方術陣が浮かび上がり輝きを放ち始める。方術陣の中央には影が立ち昇り、やがて人影へと形状変化を始めた。
「何だ……?人……じゃないな……」
現れたのはライの倍程もある巨体──。
生物なのか像なのかすら見分けの付かない、赤銅色をした存在は確かに人型。それが人ではないとライが判断する理由……それは六本ある腕。
頭部は鬼面で覆われ上半身は裸体。六本の腕全てに刀を持っている。
(魔人……でも無いのか?)
チャクラの能力『解析』で確認したところ、存在特性であることが判明。それ自体が『人が変化したもの』か『存在特性で生み出されたもの』かまでは、現時点でまだ判らない。詳しく《解析》するにはどうしても時間が掛かる。
だが……その威圧感から尋常ならざる者であることだけは判断が付く。とても解析をする時間を与えてくれるとは思えない。
「……確かに、これはキツいな。魔法や纏装無しで倒せる相手じゃないだろ、コレは……」
そう溢したライだが、言葉とは裏腹にまだ余裕が見える。冷静に周囲を観察した後、地面に刺さったままの鞘を確認……馬鹿力で無理矢理それを引き抜き、空いていた手に刀のように構えた。
ほぼ同時──『試練の体現者』とでも呼ぶべき存在は、爆ぜる様にライへと襲い掛かる。
「うぉっ!速ぇ!」
迫る右腕三本の刃。ライは咄嗟に後方に跳ね、斬撃を回避。そのまま壁に足を付け一気に跳躍し『試練の体現者』の後方に着地した。
「殺す気満々かよ……って死なないんだったっけか。取り敢えず……お~い!話し合おう!その気はあるか~?」
ゆっくり振り返る『試練の体現者』に向かい声を掛けるライ。会話が通じないことを前提にしつつも、意思確認をしなければ気が済まないのである。
リクウは、再び呆れていた……。
「あの阿呆……注意したと言うのに……」
「それがライ様です、おじ様。外見だけで判断せず、自ら確認しなければ納得出来ないことがあるのでしょう。刃を交えるなら尚更のこと」
「……うぅむ、しかしな」
そんな余裕があるのか?というリクウの疑念は晴れない。それは『試練の体現者』と対峙し、その力を理解しているからこその不安。
無論、トウカもそれを理解した上でライの意思を尊重している。
そんな久遠国の使い手二人は、【ある異変】に気付く。
「動きが止まった?……まさか、ライの問いに反応したのか?」
『試練の体現者』は、ライと向き合った状態で動きを止めていたのだ。同時にライも、無言で構えを解いていた。
「一体何が………こんなことは初めてだ」
「………。どうやら念話で何やら語っている様じゃな」
大聖霊であるメトラペトラにはそれが分かるのだろう。だが、疑問も残る。
「能力が無力化される空間なのに……ですか?」
そう。身体能力以外は封じられる試練の間。トウカの疑問は当然と言える。
「恐らくは管理者権限の様なものがあるのじゃろうの。語り掛けているのは管理者側……何を語っているかは此処からではわからんがの。いや、少し待て……」
メトラペトラの脳裏に、ライと『試練の体現者』の念話が流れ込み始めた。
「ライめ……大聖霊紋章を通じて念話を送って来おったわ。確かに大聖霊紋章は神格の力でもなければ妨げられまい」
「それで……どんな会話をしておるのだ?」
「まあ、待て……今、お主らにも聞こえるようにしてやるぞよ?」
メトラペトラは念話をリクウとトウカにも繋ぎ、その内容に耳を傾けることにした。
(挑む者よ……戦え)
力強い……だが、落ち着いた男の声。
(勝てるかどうかは別として、俺はアンタを殺したくないんだけど……)
(刃は所詮、命を奪う力……命を賭けたその中にこそ更なる道がある。何故、躊躇う必要がある?)
(言ってることは解るよ……今までも死中の活路は俺を生かしたらから。でも、どうしても避けられない訳じゃないならヤッパリ避けたい訳で……)
(…………)
『試練の体現者』は沈黙している。しばし間を置き再び語り始めたその言葉は、ライへの配慮が含まれていた。
それはつまり、意思ある存在であることの表れ……。
(この身体はこの空間にて不死。破壊されても試練が終われば再生する。そもそも、我は既に死んでいる身だ……遠慮せず死合えば良い)
(………。あなたは一体誰なんですか?)
(我が名はサクラヅキ・トキサダ。華月神鳴流の開祖だ)
サクラヅキ・トキサダ──華月神鳴流の開祖にして久遠国第三代王の弟……つまり初代王・クオンの孫に当たる人物。
異界よりディルナーチ大陸へと渡りし【百鬼一族】……そこに伝わる剣術『心月流』を元に新たな流派を立ち上げた剣士で、天網斬りを編み出したのもトキサダだと伝わっている。
そんな存在が『試練の体現者』とは想像だにしなかったリクウは、驚きの余り固まっていた………。
(……良く見れば異国人か。貴公、名は?)
(ライと言います。ライ・フェンリーヴ)
(ライとやらよ……どうやら貴公は、戦いには向かぬ者の様だな)
戦いは相手を慮れば負ける。故に相手を知る必要は無く、敵対行動を取った相手は迷わず斬り伏せるのが常道。事実、リクウやトウカは『試練の体現者』が先制した時点で敵と認識し戦っている。
しかし……明らかに人外の容姿を持つ『試練の体現者』に対してすら意思確認を行うライは、トキサダからすれば到底生き残れる輩には見えなかった。
(まあ……俺が甘ちゃんなのは自覚はしてますよ)
(………ならば、何故戦う?刃を振るうならば周囲に適任が居るのではないか?)
それは、名だたる勇者達……或いは神の代行を自負するエクレトル、或いは各王国に仕える筆頭騎士や多くの賢人や魔術師……。
そんな問いに、ライは自らの信念でトキサダの問いに答えた。
(俺は無力で居たくないんですよ。確かに戦いに適した人達は居るでしょう……でも、俺はその人達に頼りきれる程に“ お人好し ”でもありません)
(ほう……?人に頼ることがお人好し、か?)
(だって、そうでしょう?解決してくれると信じられるから他人に任せる訳ですから。でも……俺は任せるべき相手が負傷することが怖い。それは結局、相手を信頼出来ていないんですよ)
(ハッハッハ……言い得て妙な話だな。だから自ら刃を振るうのか?)
(少なくとも、俺が自ら刃を振るえば救える者がいる。救える心がある。笑顔がある。手の届く範囲は小さくても、俺はそうして居たいんです。だから……)
(……華月神鳴流を学んだ、か)
心意気はともかく強くある意思を確かに感じ取ったトキサダは、妙な納得を見せている。
(良いだろう。ならば、尚更戦うが良い。この空間で死ぬことはない。が、確かに死の間際に立ち困難に打ち克つことが出来る良い機会だ)
(……トキサダさんは、何故そんな姿を借りてまで?)
(刃を振るうのか、か?単純な話だ。我は華月神鳴流の行く末が見たかった。我が流派には多様性を持たせた。永き時に併せ更なる洗練が為され、剣術として昇華されて行く様を見届けたかった……それだけだ)
開祖トキサダは生涯を剣に捧げたとリクウが語ったことがある。妻を娶らず子を持たず、ただ剣にのみ時間を費やしたと……。トキサダにとって剣術こそが己の子孫とも言えるのかもしれない。
(全力で来い。この姿での力は本来の我より幾分劣るが、貴公の望む強さの糧程度には役立つ。そして見せてくれ……貴公の志しが示す我が流派の可能性を)
流派に込められたトキサダの願い──それを知ったライの内より迷いは消え去った。
(分かりました……お願いします)
(いざ尋常に……)
勝負──。
『試練の体現者』──トキサダは、先程とは違い構えを取りジリジリと間を詰める。一方のライは、左手に持った鞘を前に構え迎え撃つ体勢だ。
間合いは明らかにトキサダが上。そして手数も六本の腕があるトキサダが有利なのは間違いない。対抗するには更なる速さ、ないしそれを上回る技が必要だ。
そして遂にトキサダの間合いに入り、死合いの幕開けとなった。
最初に動いたのはトキサダ。右腕の三腕による連続攻撃……袈裟斬り、突き、水平斬りと絶え間無く続く斬撃を、ライは鞘で受け流すように素早く往なした。
華月神鳴流・《払い柳枝》
攻撃を軽やかに往なすその技は、ライが好んで使う防御技の一つである。
「……何故、鞘で真剣を受けられるのじゃ?」
観戦しているメトラペトラの疑問は当然である。鞘は木製。当然、砕かれるか斬り落とされて然るべきもの。それが怒濤の斬撃を受け続けてもヒビ一つ入る気配がないのだ。
「あれは鞘で天網斬りを使用しておるのだ。万物両断の天網斬りは比類なき刃だが、ああして使えば盾代りにもなる」
合わせた相手の刃を斬り落とす最強の守り。集中が必要で負担は大きいが、発動している天網斬りならば材質の違いを無効にしてくれる。
「……じゃが、相手の刃は折れぬ様じゃな。ということは」
「そうだ。この場にてアレは……つまりトキサダ様は、全ての太刀筋に天網斬りを使用しておられる」
「ならばライは、この戦いの間天網斬りを解けぬということかぇ?」
「そうだ。これまで試練が一日掛かったことはない。それは負担が大きい故のこと。時折天網斬りを解除して使い分けても、実質の負担は変わらぬからな」
「『天網斬り使い』同士の戦いは消耗戦ということか。じゃが……」
「そうだ……そうなるとライが不利になる」
『試練の体現者』は限定空間が故に無尽蔵に力を使えるのだろう。歴代の使い手達は、その差で早々に疲弊し敗れている者が殆どだとリクウは述べた。
だからこその死中に活……この不利を返してこそ試練に意味が生まれるのである。
六本の腕で常に襲い来る斬撃。六刀のトキサダに対し二刀のライは、実質三倍多く動かねばならない。
額のチャクラをも見開き必死に反応し続けて約半刻……しばらく続いた打ち合いは、ライが距離を置いたことで一時的に終わりを告げた。
「何故トキサダは追撃せぬ?圧し続ければ手数で終わるじゃろうに……」
「これは飽くまで試練だからな……ライは倍ほどある相手の手数を見事に捌ききった。トキサダ様はライが魔人以上の存在と判断したのだろう。問題はここからだぞ?試練の中盤に差し掛かると技の使い方が変化する」
リクウの言葉通り、トキサダは先程までの連撃と真逆の静かな構えに変化する。
そして次の瞬間──『試練の体現者・トキサダ』の姿が陽炎の様に揺らぐ……。
「速……!」
辛うじて身を捻り回避したが、その速さはこれまでライが戦った相手の中で最速と言えるもの……一瞬残像すら見えたその動きに全てを躱しきれず、左腕に一太刀浴びてしまっている。
「速っえ……これで本当のトキサダさんより劣るの?生きてる時はどれだけ強かったんだろ……?」
こと身体能力に於いて、『鬼人』は通常の魔人を遥かに凌ぐ。それは纏装を使用せずに“ 纏装を使う魔人 ”と渡り合える程の力だ。
久遠国の『鬼人』は異界から来た為ロウド世界の
恐らくトキサダは、制限無しのライと戦っても遜色無い強さを誇っていると考えられた。
(どうした?まだ手始めの段階だが?)
「今のが手始め……」
(貴公もまだ力を隠しているだろう?見せてみよ)
「………わかりました。全力で行かないと失礼ですよね」
チャクラを閉じたライは自らの身体に巻き付けてある包帯を引き千切る。腕、足、肩に巻き付けてあったそれは、修行の一貫で動きを制限していたもの。全ての制限を取り払い、身体をほぐしつつ刃を試し振りした。
「お待たせしました」
(うむ……では、行くぞ!)
トキサダは再び神速の突進……だが、今度はその斬撃を縫うように避けたライ。更にトキサダの背に一太刀を浴びせた。
(フッ………やるものだ)
ライが封じていたのは筋力の一部と柔軟性。身体のバネを使った動きに加え更なる制限を取り払ったライは、生き生きとした動きへと変化を果たす。
そこからは再び睨み合いからの突進──互いに隙を窺い技の応酬を繰り返す。そうして四半刻を過ぎた頃、遂にライの手数が上回り始めた為トキサダは初めて距離を取った。
(反応と目の良さ……それに良い太刀筋だ。これならば……)
ここでトキサダの宿る『試練の体現者』は、更なる形状の変化を始める。腕は二本に……そしてその身は、ライより頭一つ小さく縮んだ。長い髪を背で纏めた袴姿……それは鬼面を着けた人間そのもの。
その手には一本のみ太刀が握られている。
「……それがトキサダさん本来の姿?」
(飽くまで似せただけだが……この姿ならば本来の技を出し切れる。もし……この姿の剣を凌ぎきれたならば、貴公に一つ【技】を伝授しよう。争いを好まぬ貴公には相応しい技の筈だ)
「……が、頑張ります」
最終形態とも言えるその姿は、見た目の線の細さからは想像の付かない『脅威』そのものだった……。
変化前より更に速く鋭く、しかも力が強いまま。的が小さくなり狙いも難しくなった。
加えて、技の熟練度が桁違いで無駄が全く見当たらない。鋭い剣撃の中、思いもよらないタイミングで技を繋げてくるのだ。
かと思えば、徒手空拳を斬撃に交えあらゆる動きに気を抜くことが出来ない。
意表を突かれたライは瞬く間に傷だらけとなった。
「……信じられぬ!あれで纏装を使っておらぬじゃと?一体どれ程の……」
メトラペトラも舌を巻く強さ。まさに鬼神と呼ぶに相応しい存在……。
試練の間の壁に浮かび上がる巨像がトキサダを意味しているものだと思わせる程に圧倒的だった。
それは天網斬りと合わせれば、上位魔王ですら容易く葬れる力……。
それ程の存在『サクラヅキ・トキサダ』──ライの最終試練は、最強の剣士との戦い……。
そして、試練は続く……。
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