第四部 第七章 第二十三話 久遠国への帰還
メトラペトラの《心移鏡》により、スランディ島・アプティオ国から移動した先は不知火領・白馬城前──。
ライ達は直ぐにライドウに取り次いで貰い、シギの結婚式の日どりを確かめる。
スズとリルは外出中のようで、天守ではライドウのみが対応することとなった。
「相変わらず慌ただしいな……ライ殿は」
「アハハ~……あ、リンドウの話は聞いてますか?」
「うむ……。トウテツの話も通信魔導具で聞いた。正直驚かされたが」
「まあ、おめでたい話ですからご勘弁下さい」
「いや、感謝ばかりだ。リンドウにトウテツ……これで我が弟コテツも安心だろう」
天守の窓から遠い空を見るライドウ。そこに亡き弟の面影を見ているのかもしれない。
「それで……リンドウとトウテツの婚儀はいつ頃になりますかね?」
「領主の跡取りだからな……各方面に挨拶をして回るにしても半年。だが、それより早くせねばなるまいな」
「何故です?」
ライドウはトウカをチラリと見やる。トウカも意味を理解している様で少し表情が暗い。
「首賭け……じゃな?」
「メトラ師匠……それは……」
「お主も以前聞いたじゃろ?神羅国と久遠国の王による一騎討ち。それが半年後、ということじゃろう」
結果次第では久遠国が喪に服すことになり、婚姻は延期されることとなる。それが故の前倒し……ということだとメトラペトラは結論付けた。
「ライドウさん………止められないんですか、首賭けは?」
「無理……だろうな。ドウゲン様は既に覚悟を決めておられる。あの方は王としての役割には厳格なのだ」
「………」
首賭けは久遠国と神羅国の誇りを賭けたもの。当然、折れることは自国を相手国より下と認めることに他ならない。
ならばドウゲンは、国民の為どうあっても退くことはない。
「気に病むな、ライ殿。これはこの国の宿命なのだ。それが久遠国の歴史……」
国が別れて七百年……互いに退くこともなく、延々と続いた儀式。戦争による国民の犠牲を防ぐ為の、謂わば生け贄の王──。
当然ながら、ライがそんな理不尽に納得する訳がない。
そもそもの始まりが女の奪い合いから始まったことなのだ。当人同士の命のやり取りならば納得するが、子孫が七百年も殺し合いを続けている……それは最早、呪いでしかない。
『首賭け』の儀式を壊す──その為には、今のライには足りないものが多いことを改めて自覚した。
久遠国には天網斬りの使い手が居る。更に存在特性もある……。『首賭け』の場には必ずその手の者が警護に配置され、他者の介入は阻まれるだろう。
(俺にはもっと力が必要なんだ。『首賭け』を確実に止められるだけの力が……その為には)
天網斬りを極め、剣術を使い熟すことは最低限の力……。ライの目標は今、ハッキリとそこに向けられた。
「ライ~!」
天守の間に響く声に振り返れば、リルとスズの姿が……。リルはライの胸に飛び込みパタパタと足を振っている。
「リル!……な?約束どおり戻って来ただろ?」
「うん。ライ、もどった!」
「あ……そうだった。実は…」
リルの名前に漢字を当て嵌める旨をライドウとスズに伝えると、二人は一瞬驚いたが揃って笑顔を溢した。
「どうやら考えることは同じだった様だぞ、スズ?」
「ええ……ライ殿。実はですね?」
ほぼ同じ理由でリルの名を付けようと考えたライドウ達は王都に書状を送ったのだそうだ。ドウゲンからは許可が下り、後はトウカの意思を確認するだけだったとのこと。
「私はライ様に聞かれた時母が笑っている顔を思い出しました。ですから是非に……」
「ありがとう、トウカ………良かったな、『
「なまえ?」
「大きくなればわかるよ……きっとね」
次に向かうのは飯綱領……なのだが、リルがライと別れるのを嫌がり泣き出したので分身を残し移動。
因みに分身は、丸一日リルの遊び相手をした後霧散することになる。
ここで一行は二手に別れた。トウカとリクウは御神楽へ向かいラカンに経緯を、ライとメトラペトラは飯綱領の現状確認へと向かう。
移動した飯綱領では、建物の修繕があと僅かで完了するところまで復興が進んでいた。
元々被害が少なくなる様に戦っていたのだ。当然と言えば当然である。
「ライ!一体何処に行ってたんだ?」
「いやぁ……ちょっと魔王と戦いに……」
「…………」
出迎えたトウテツ、早速白眼……。ご冗談を?と流せない辺りが真面目なトウテツらしい。
「戻らなくて大丈夫なのか、トウテツ?」
「あ、ああ……実は一度戻ったんだ。お前から貰った神具のお陰で一飛びだったよ。嘉神は戻るまでリンドウに任せてきた」
「ハハハ!そりゃあ良い勉強になるな。それで……お前の花嫁さんは?」
「色々準備があるらしくて……城は殆ど改修されたけど、イブキ殿の養子にする認可を待ってる状態だ」
「そっか……。ところで、イブキさんは?」
「異国の方々と談話をしている様だぞ?ドウゲン様に処分を任されたらしいから」
オルネリア達の元に向かったライは、笑顔で談笑するイブキとオルネリアの姿を見付け驚きの声を上げる。
イブキの傍らには当然ながら天雲丸が控えていた。
「ず、随分仲良しになりましたね……」
「ライ殿!いや……話してみれば皆、ご苦労なされていたみたいで……それに女同士色々と……」
イブキは少し照れている様だ。
「私も男の振りなんてしていたから中々縁が無くて……なんて話してたんです」
「へ、へぇ~……ところでオルネリアさん。プラトラムさん達は?」
「建物の修繕を手伝いに。自分達が壊したのだから是非にと」
「じゃあ、もう自由に?」
「はい。イブキ殿が口利きして下さいましたので」
オルネリアはすっかり険の取れた穏やかな顔をしている。元はお姫様だけあり、時折通り掛かる飯綱兵が見蕩れているのが印象深い。
「……よかった~。流石、イブキさん。助かりました」
「助かった、とは?」
「オルネリアさん達を待ってる人が居るんですよ」
リーブラの民にまつわる話を簡略的に伝えた途端、オルネリアは泣き崩れた……。
「レフティスが……ああ!お父様……お母様……護ってくださったのですね。良かった……」
「細かい事情は、あちらで『妖精女王』にでも聞いてください。それと向こう側にはトシューラから離れた兵達が居ますけど、敵ではありませんので」
「……わかりました。ありがとうございます」
丁度そこへプラトラム達も集まり、再び事情を説明することに。
「勇者ライ……居ないと思ったらそんなことを」
「プラトラムさんの奥さん、無事でしたよ。上手く立ち回って貴族のメイドになっていたみたいです。息子さんはアスレフさん達が助けていたみたいで……」
「アスレフが……ありがとう。済まない……言葉しか返せるものがない」
「そんなのは良いんですよ。それより、新しい国の名はアプティオと言うんですよ?頑張って国を守り立てて下さいね」
「ああ……」
元リーブラ王女オルネリア、及びリーブラ騎士団は自由の身。イブキとの別れを惜しみつつ、メトラペトラの《心移鏡》によりアプティオ国へと去っていった。
「さて……イブキさん。もしかして、捕縛しているトシューラ兵も処分を任されてますか?」
「ええ……今回は全て任せると。どうやらトビ殿が口を利いてくれたらしく……」
借りは返した……ライには一瞬、そう指差すトビの姿が見えた気がした。
「じゃあ、俺に処分を任せてくれませんか?」
「それは構わないけど……」
「それじゃあ、送り帰しましょう。トシューラ国はもうスランディ島を使えない。二度とこの国には踏み込めない」
一応、死者が無いとはいえ敵兵……生かす理由も無いのだろうが、ライは救いたがりだ。魔石採掘場や魔の海域、そして四頭蛇の様な事が無い限り救いを優先する。
「メトラ師匠。お願いします」
「え~?めんど~い」
「……。イブキさんから飯綱の地酒貰ってあげるからお願いしますよぉ」
「仕方無いのぅ。で、何処に送るんじゃ?」
「そうですね……ドレンプレルにでも送っちゃって下さい。あそこなら助けてくれるでしょうし」
「了解じゃ。酒、忘れるでないぞよ?」
トシューラ兵が囚われて居たのは、始めにイブキ達が捕まっていた倉の中。
「お~い、元気か~い?」
「き、貴様は『褌魔王』!」
「え?あ、あれ~?何時の間にそんな酷い称号に?それに、顔を隠してたのに……」
「その白髪頭と体格を見ればわかるわ!くっ……こんな若僧に………」
「どうも~、若僧で~す!」
「うるさい!」
処刑されると考えているのか他の兵は暗い顔をしている。一人だけ元気なのは隊長……という訳でも無いようだ。
「へい、アンタ?取引しないか?」
「魔王の甘言になど乗らんぞ!」
「あらあら……何も『世界の半分をくれてやるか手を組もう』ってんじゃないよ?そんなの、俺でも乗らないし」
「うるさいわ!くっ……貴様さえ居なければ今頃任期切れで帰れたのに……」
「だから帰してやるってば。取引だよ取引」
「仲間は売れん!諦めろ!」
割と頑固なトシューラ兵はライを全く信用していない様だ。まあ、あんな無茶苦茶で捕まえた当人だから当然ではあるが……。
そこで『猪口才勇者』は、またまた策を弄する。
「へへっ……俺、トシューラのメルマーさん知ってんだぜ?」
「……な、なに?」
「なぁ?取引に乗った方が良くね?俺を怒らせっとメルマーさん黙って無ぇぞ?」
「……………」
トシューラ大貴族・メルマー家の名を勝手に持ち出す漢。なんという小者臭……だがライは、実に生き生きしていた。
「嘘だと思ってんな?うわぁ……絶対メルマーさん怒らせたわ……。アンタ終わりだわ。絶対ヤベェ」
「ま、待て!話だけは聞いてやる」
──ニヤリ。『悪い顔しとる勇者』は止まらない。
「実はアンタ達を助ける算段があるのさ?その代わりメルマー家に仕えると約束出来るか?」
「俺達はマコア様の部下だ」
「マコアは既に(男としては)死んだ。だからこその取引……どうだ?このまま死ぬより良いだろ?」
「………何故メルマー家が」
「メルマー家はいつでも優秀な人材を募集しております。目指せ!成り上がり貴族!」
「……………」
面倒なことはメルマー家に丸投げ……という訳ではなく、これもドレンプレル領の為である。
魔王ルーダによる被害の程はわからなかったが、怪我をした兵は相当数居た筈だ。城の修繕にも人手は必要だろう。
トシューラの中で縁が出来た貴重な相手。少しだけでも助けを考えた結果だった。
「………取引というのは?」
「この国に手を出した結果、自分達以外皆殺しにされた……そう吹聴して欲しいんだよ。一々トシューラの相手すんの面倒だからさ?あの国には手を出すな、ってね?」
「………嘘は付けん」
「嘘も方便だろ?アンタ達はドレンプレルで雇われて万々歳。偵察尖兵だから全滅してもお咎め無し。責任は全てマコアに押し付けて、後続は今後遠く離れた場所で危険に晒されずに済む」
「………だが」
「あ~、もう!面倒くさいな!じゃあアンタが責任取れんの?このままだと全員打ち首だよ?皆の命を救うか、皆仲良く晒し首か……さあ?選んでみ?」
実質、選択肢の無い取引。男は渋々といった顔だ。
「くっ………騙したら化けて出てやる」
「本当だったらアンタらに貸しだからな?メルマー家に返せよ」
「良いだろう。……お前はメルマー家とこの国、どちらの味方なんだ?」
「さてね……。フハハハハ!それでは諸君、さらばだ!」
指をパチンと鳴らし合図した途端倉の床には巨大な鏡が発生し、囚われていたトシューラ兵は沼に飲み込まれる様に“ 沈んで消えた ”。
更にライは倉を盛大に破壊。慌てて駆け寄ったイブキとトウテツは、ライに詰め寄った。
「い、今の爆発は……」
「トシューラ兵は送り帰しました。でも、それじゃイブキさんの立場が悪くなるでしょ?だから奴らは魔法で自爆したこということで……」
「……私としては、虚偽は王への忠義に反するのだけど」
「勿論、ドウゲンさんにはちゃんと説明しますよ。飽くまで建前としての話です」
「……わかったわ」
「倉を壊してスミマセンでした。後で何かお詫びを……」
その言葉にイブキは声を上げて笑った。
「私達はライ殿に返せない程の恩を受けた。倉の一つ二つでは気にもしないわ」
「そう言って貰えるとありがたいです。……玄淨石鉱山の方は大丈夫ですか?」
「あそこはドウゲン様から許可を頂き封鎖したわ。信仰のある山を削るのは忍びないから、本当に必要な日が来るまでは封じることにしたの」
「成る程……じゃあ、飯綱領はもう大丈夫ですね?」
「ええ。ありがとう、ライ殿」
「礼は酒で良いぞよ?」
ライの頭上でふんぞり返る酒ニャン。イブキは楽しげに笑った。
「ライ殿に残しておいたお酒があるから持って行って」
「ありがとうございます。次に会うのはトウテツの結婚式ですね」
「……そうね。元気でね?」
「はい、イブキさんも。天雲丸、イブキさんを頼むぞ?」
「ウォン!」
「じゃ……またな、トウテツ」
「ああ。またな、ライ」
《心移鏡》で移動したライを見送るトウテツとイブキ。と、そこに遅れてツバメとヒバリが到着した。
「イブキ様。ライ殿は?」
「もう行ったわよ?」
「間に合わなかった……残念ね、ツバメ」
「うぅ~……お仕事だから仕方無いわよ、お姉ちゃん」
「トウテツ殿の婚儀にはまた会えるわよ」
「そうね……修行中らしいし、邪魔はしないように諦めるわ」
女性隠密二人も、その気になれば神具で会いに行けるのだ。慌てることも無いだろう。
「さ、お仕事お仕事!」
「待って、お姉ちゃん!」
久遠国・飯綱領。お家騒動も終結したその領地の主は、霊獣を連れた女性。
この先、ライの理解者として味方に付く領主の一人である。
その繋がりは『首賭け』の時に大きな助力となるだろう……。
次にライ達が向かったのは、御神楽・最上層──社殿内。そこにはラカン、トウカ、リクウ……そして久遠国王・ドウゲンが待っていた。
「ド、ドウゲンさん!どうしてここに……」
「娘が戻らないから心配でね……此処なら神具で良からぬ虫を監視出来るし」
「うっ!……済みませんでした」
正座で頭を下げたライを見てドウゲンは笑う。
「冗談だよ、ライ君。本当はラカン様に相談があって来たんだ」
「相談……?」
「何……個人的な話さ。それより大変だったね。経緯は聞いたけど、殆どは御神楽の神具で見ていたよ」
「…………」
それは見て欲しくないものも見られていたことを意味する。
四頭蛇やトシューラ兵、ドレンプレルのこと……王位を退いているラカンは寛容に見ているが、ドウゲンはそうは行かないだろう。ライは肩身が狭い思いだった。
だがドウゲンは、ただ困った様な笑顔を浮かべている。
「君は根っからのお節介なんだね……目に付いた者は全て救う。ある意味勇者らしいよ」
「…………」
「でも、私は今回君に忠告をしよう。君は周りが見えていないね?多くを救う陰で、君以外にも苦労を背負い込む者を増やしている」
「……はい」
「自らを削ることは君を心配する者を蔑ろにするに等しい。これは私以外からも忠告を受けていたね」
「………はい」
「そして最期に……。君が無意識に助けることは他人の試練を奪い取ることになる。それは、その者達の成長を止める可能性もある」
「それは……」
考えもしていなかった……。
確かに考え無しに助けてしまっては、救われた者の成長を妨げるかもしれない。苦難の中で成長を遂げたライだからこそ、ドウゲンのその言葉は重く感じられた。
「と、まあ忠告は以上だよ。それでも感謝の方が本当は多いけどね。ありがとう、ライ君……君のお陰で久遠国は抱えていた歪みがかなり正された」
「いえ……。俺、考え無しで……済みませんでした」
「ちゃんと自覚したならもう良いよ。私からは以上だ。トウカ、リクウ。ライ君と桜花天で休みなさい。私はまだラカン様と話がある」
ドウゲンは一瞬だがメトラペトラに目配せした。
「ラカンよ。ワシらは酒盛りでもするかの?いつものお返しにお主にも振る舞ってやるぞよ、ドウゲン?」
「じゃあ、御相伴に預かろうかな」
「ライよ。送ってやるから今日は休むんじゃぞ?」
「わかりました」
《心移鏡》による移動……御神楽に残ったラカン、ドウゲン、メトラペトラは酒を酌み交わし始めた。
「で、何の話じゃ?」
ドウゲンの意図を汲み取ったメトラペトラは、噛み砕いた聞き方はしない。
「………ライ君の行動は無茶だよね?」
「うむ……それが奴じゃからな?」
「彼は……首賭けに介入する。違うかい?」
「さての……アヤツはワシにも滅多に本音を明かさんのよ。じゃがまあ……間違いなく介入するじゃろうな」
「………そう、か」
ドウゲンは一拍置いてからメトラペトラに頭を下げた。
「どうかライ君を止めて貰えないだろうか?」
「『首賭け』への介入をかぇ?」
「うん」
「無理じゃな。先に言った様にアヤツは自分に溜め込む。それにワシが言ったところで聞かぬよ」
「………」
「それどころか益々負担を増やしてでも止めに入る筈じゃ。奴は根が頑固じゃからな……それに──」
師匠として助ける、メトラペトラはそう決めていると語った。
「アヤツは久遠国の敵と認定されてもお主を救おうとするじゃろう。何故かわかるかぇ?」
「……彼の性分かい?」
「違う。お主が好きじゃからよ」
「……好き?」
「アヤツは自らが気に入った相手を何より優先する。その他大勢の敵になるとしても、心を寄せた相手の味方を選ぶのじゃよ。そんな奴に気に入られたお主は、もう手遅れじゃよ」
「……ハハハ……参ったな」
ドウゲンは嬉しいのだろう。そして嬉しい反面、辛かった。自分の為にライが身を削ろうとすることが、何より怖かった。
「………首賭けは止められんのかぇ?それが最善なんじゃが……」
「無理だよ……もう完全な儀式になっている」
「じゃが、お主はそれを止めたいのじゃろ?」
「その為に……私が最後の首賭けをしなければならないんだ」
「……まあ良いわ。ワシはライの味方。ライの行動を助けるのみじゃ」
グイッと酒を煽ったメトラペトラは、発生させた《心移鏡》の中へと姿を消した。
「ラカン様……私は………」
「お前はお前の思うように動けば良い。皆、そうして生きている。役割や立場は違えど、己が分を越えることは出来ん。ライは少々特殊な様だがな……」
「…………」
「結果はその後で付いてくる。例え時間が掛かってもな?それが良きにせよ悪しきにせよ、後悔せぬよう生きろ」
ラカンは嘉神分家の誅殺という負い目がある。それを悔いたことは無いが、結果として遺恨を残しライにまで負担を掛けたのだ。
「ま、俺も偉そうなことは言えんな………難儀だろう?王と言うのは」
「………はい」
御神楽で酒を酌み交わす二人は、王の重みを理解している。だからこそ、王の役割を……ドウゲンはライとはまた違う覚悟を決めた様だ。
この後五ヶ月の間──ライはそれまでの行動が嘘に思えるほど修行に明け暮れることになる。
必要な交流を除けばカヅキ道場から殆ど離れず、己の全てを注ぎ込み修行に没頭した。
ライが久遠国と別れる日はゆっくりと、そして着実に近付いていた──。
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