第四部 第七章 第三話 猫神の巫女達


 天猫教祭壇に場所を移してお披露目となったリプルとミーシアの姿。そこには既に噂を聞き付けた大勢の人達が集まっていた……。


 ここは天猫教の村。猫神様の巫女ともなれば見逃す訳にはいかない………要は暇人共である。


「コーチ……ほ、本当にこんな格好で……?」

「はい!バッチリ似合ってますよ、二人とも!」

「うぅ……リプルちゃんはまだ若いから良いですよ。私、流石に恥ずかしいです」

「だ、大丈夫ですよミーシアさ……ちゃん!とても似合ってますから!ただ……何というか、妙に色気で溢れていますけど」


 祭壇の中央に立つ二人は、【完全武装】に身を包んでいた。


 実は昨日、アクト村唯一の洋服屋に向かった分身ライ。仕立て職人のクトリさん(四十八歳・女性)に衣装作製を依頼したのだ。


 メイド服をベースにした衣装……しかし、それは似て非なるもの。まずスカート丈はかなり膝上だ。袖は大胆に半袖にされていて、エプロンに当たる部分はフリルが縫い付けられている。

 特筆すべきは胸……胸元は胸の谷間が大胆に強調された素晴らしいデザイン。洋裁職人クトリ……田舎に置くには惜しい逸材である。


 更に色もカワイイを追求。爽やかな白を基調としたデザインは二人同じだが、リプルは赤色、ミーシアはピンクに色分けされている。


 手袋にはリボン、ブーツにはリボンと翼をモチーフにした飾り。更に頭には使用を禁じた猫耳カチューシャを改良。その全てに純魔石が備え付けられている辺りが匠の技と言えよう。


 ニーソックスにガーターベルトは、見学に来た男共の鼻の下が伸び猿になるほど魅惑的だった……。


 更に二人の手には、ハート型と翼を組み合わせ先端に付けたステッキが握られている。良く見れば、ハートは複数の純魔石で形作られていた。


「うぅ……は、恥ずかしい」


 スカートを押え照れるミーシア。しかし、ライはこれをあっさり納得させる技を持っているのだ。

 そう……それは呪い……ならぬ魔法の言葉。


『猫神様の思し召し』


 これでミーシアは別人の様にやる気を出すことになる。


「今日は衣装合せと踊りの確認です。じゃあ、早速始めて下さい」

「は、はい!」

「が、頑張ります!」


 踊り始める『猫神の巫女達』……それが、とにかくエロチック。


 特にミーシア……。大人の色気溢れる豊満ボディで懸命に踊る姿は、見ている者の内側に背徳感にも似た欲情を湧き上がらせるのである。


 結果……見学していた男達の尽くは腰を『くの字』に曲げることになるのだが、司祭マイクは娘が巫女として献身する姿に涙を流していた……。


 欲望と信仰、そして迸る熱いパトス──。そんなカオスの中、ライは感無量の余り流れる一筋の涙を止められない。


「………おい」

「グスッ……何ですか、リクウ師範?」

「私にはお前の趣味にしか見えんのだがな?」

「趣味ですが?」

(い、言い切りおった)

「………。でも、悪くないでしょ?」

「……うっ……む。ま、まぁ、悪くはないがな?」


 リクウも所詮は男……その素晴らしさに、“ 悪い ”などとは口が裂けても言えない。



「フッフッフ……想像以上の破壊力だ。これで小国連合など容易く纏まるだろう……」

「………どうもお前の思考は良くわからん。こんなことで小国か連合を組むのか?」

「まず握手会……そして歌を披露する権利を競売にかけて……後はグッズ販売かな?クックック……豚どもが私財をなげうって我々の糧となるさまが見えるようだ……」

「………聞けよ、オイ」


 何かどうでも良くなったリクウは教会に戻って寝ることにした。


「は~い!お披露目はここまで!巫女達は最後の訓練に移ります!」

「はい、コーチ」

「では、教会に戻りましょう。踊りは問題ないみたいですから、あとは神具の使い方ですね」


 男達の惜しむ声が聞こえる中、天猫教会へと引き返したライと巫女達。マイクは祭壇で一心不乱に感謝を捧げていたので放置した。



「さて……。残る問題は……」

「コーチ。着替えてきても良いですか?その……少し汗ばんでしまって……」


 半刻近く懸命に踊っていたのだ。女性からすれば汗が気になって当然だろう。


「そうですね。汗を流してきて良いですよ?あ、その衣装は脱ぐと自動で洗浄が始まりますから壁に掛けるだけで大丈夫です」

「……そ、そんな機能まで…」


 大地魔法による洗剤精製、水魔法による洗浄と神聖魔法による浄化、風魔法による温風乾燥……全て生活魔法。まさに匠の技だ。


(本当は更に《空間格納》と《物質転送》を組み合わせた『変身』も欲しいんだけど、まだ時空間魔法ロクに使えないからなぁ……)


 後で完成させよう……そんなことを考える『魔法少女?育成勇者』。


 完成したらフェルミナやマリアンヌに着て貰えるか聞いてみよう……そう“ 迸る股間のパトス ”が囁いていたのは内緒の話である。




 巫女達が風呂でさっぱりとした後、ライは改めて今後の訓練方針の説明を始めた。


「今日はこの後、戦闘訓練を始めます」

「え!じ、じゃあ、お風呂に入った意味が……」

「大丈夫です。魔法を使ったイメージトレーニングみたいなものですから」

「そ……そうですか……」

「明日の昼前までそれを繰り返します。で、午後はお休み。急ぎになりますが明後日には出発……いよいよ本番になります」


 踊りはまだ辿々たどたどしく、戦闘訓練の出来も分からない。そんな状態で行動に踏み切ること自体、リプルとミーシアにはかなり不安だろう。


「時間が足りないのは承知してますよ。しかし、時間を掛ければ解決するものでも無いですから……お二人の覚悟がイシェルド国を救う、そう諦めて下さい」

「……………」


 リプルは、イシェルドと無関係の筈のライがこれほど貢献してくれたことに感謝している。加えて、一国の姫としてライを信じると決めていた。

 ミーシアは猫神様のお供であるライを疑うことはない。猫神様の思し召し……当然覚悟は決まっていた。


 二人ともトシューラ侵攻の危機を理解している為、意気込みも十分だ──。


「大丈夫です。ね?ミーシアちゃん?」

「勿論!大丈夫です、リプルちゃん!」

「くっ!素晴らしい……お前達は最高の生徒だ!」

「コーチ!」


(何だ、この茶番は……)


 その姿を見ていたリクウはやはり馬鹿馬鹿しくなった様で、予定通り寝室に戻り眠りに就いた……。



 こうしてリプル、ミーシアは、『鬼コーチ・ライ』との師弟の絆を確認し戦闘訓練へと移行する。


 戦闘訓練はライの言った様にイメージトレーニングの部類。但し、ライの考えることである。勿論それが只のイメージトレーニングということは有り得ない。

 精神幻覚魔法 《迷宮回廊》を利用したかなり現実感のある思考の中、リプルとミーシアの意識を繋ぎ互いの神具で手合わせさせているのだ。


「思考の中なので怪我も死ぬこともありませんが、少しだけ痛みはあります。でないと身に付かないですからね……。ある程度力量が上がったら自動で目覚めますので、安心して下さい」

「コーチはどうするんですか?」

「俺も修行があるんですよ。時折、様子を見に来るので安心して下さい」

「わ、わかりました」

「仲良しだからって加減してはダメですよ?相棒なら寧ろ全力で……良いですね?」

「はい!」

「わかりました!」


 思考の世界から抜け出したライは、リプルとミーシアを教会の一室に放置し自らも修行……するつもりだったのだが、リクウが寝ている為に断念。

 そこで、明後日の下準備を始めることにした。



 イシェルドを含む小国がある地域は、山間部に隣接し『高地小国群』と呼ばれている。

 この高地小国の北に連なる山脈を越えればそこはシウト国領内となるのだ。


 ライは先ず『高地小国群』の内、イシェルドを除く五国の偵察を始めた。


 行商人を装い各国の文化、経済、軍事力、王族の構成を把握。分身を使い余すこと無く集めた情報の中、トシューラと繋がりがありそうな国を優先して調査。小国連合に取り込む為の策を労じる。

 時にはトシューラの間者らしき者を見付けては国に送り返す手間まで掛けた。


 それをたった一人……一日掛かりで成し遂げる様は、やはり人から一線を画した存在の顕れ。勿論、本人にはそんな自覚など無い。




 そして瞬く間に二日が過ぎ、いよいよ行動当日──。


 アクト村祭壇に立つリプルとミーシア……二人の巫女は、訓練のお陰か自信に満ちた顔をしていた。

 祭壇には村人達が巫女達の旅立ちを見送りに集う。


「では、司祭様。行って参ります」

「お気を付けて……。私は此処から皆様の成功を祈っております。猫神様の祝福があらんことを……」


 司祭マイクは天猫教のシンボルを胸に掲げた。


 因みに天猫教のシンボルは、十字の棒の上部に猫耳の付いた輪を組み合わせたものである……。


「リクウ師範。後は頼みました」

「……といっても、お前の分身が残るのだろう?修行だ修……」

「出発!」


 村人の歓声の中、猫神の巫女と痴れ者勇者は飛翔を始め彼方へと旅立っていった──。




 一行が真っ先に向かったのはイシェルド王城。事前にライによる“ 天の声 ”が告知していた為、城の広間には兵が大挙して待機している。

 皆、神具で飛翔する姫君に驚きを隠せない反面、ミーシアの姿に目を奪われていた……。


「リプル!無事だったか!良かった……本当に……」

「お父様……」

「うむ……無事で何よりだ。さぁ……そんな衣装を着替えて早く戻りなさい」

「出来ません。今の私は猫神様の巫女……果たさねばならないことがあります」

「な、何を言って……」

「民を犠牲にすることは出来ないのです。……お父様!誇りをお持ち下さい!」


 内気な娘が強い意思を見せたことに、イシェルド王は狼狽している。


「私はこれから小国を巡り連合を提案して参ります。猫神の巫女としてだけでなく、どうかイシェルド王族として行動をさせて下さい!」

「………し、しかし」

「これは、この国の為なのです……。トシューラに取り込まれれば、イシェルドは名だけを残した別物となるでしょう。お父様は……本当にそれで宜しいのですか?」

「…………」

「もし反対されても、私は猫神の巫女として行動をします」


 国王はただ黙ってリプルを見つめている。


「……立派になったな、リプルよ。ほんの数日の内に別人の様だ」

「お父様……」

「わかった。大切な役目があるのだな?ならば、今からお前は私の代理として呼び掛けよ。だが忘れるな?成せるかどうかは別として、お前が帰るべきはこの城だということを……」

「はい……」


 そっとリプルを抱き締めた国王。視線をミーシアに向け穏やかな声で語り掛ける。


「リプルを……どうか頼む……」

「はい。お任せ下さい」


 こうしてリプルは満面の笑みでイシェルド王城から出立した。


「大丈夫だったみたいですね」


 上空で待機していたライは、リプルの笑顔を確認し胸を撫で下ろす。

 これで猫神の巫女という怪しい立場でなく、イシェルド国よりの使者となり各国を巡れるのは大きい。


「次はどちらへ?」

「え~っと……ラムロという国ですね。あの国にも姫様が居るので……」

「姫が居ると何かあるのですか?」

「フッフッフ……着けばわかりますよ」


 自らが背負っている荷物をチラリと見やり不敵に笑うライ。しかし……リプルとミーシアはライの突拍子の無さに段々慣れてきていた為、問い質すことはない。


 次に向かった国・ラムロは、高地小国群の中では最大の国土と軍事力を持つ国。同様に事前告知をしていたが、明らかに怪しい者達を入城させる訳が無く門前で足止めを受けた。

 が、それは僅かの時間。門が開くと瞬く間に王への面会が叶うことになる。


「……何をしたんですか、コーチ?」

「まあまあ。後は見ていればわかります。それでは~」


 同行すると怪しまれるのでライは素早く姿を眩ました……。



 そうして面会が叶ったラムロ国王は、訝しげな表情を崩さない。

 しかし王は、イシェルドの姫リプルを確認した途端に思わず立ち上がった。小国間と言えど交流はある。ラムロ国王はリプルと面識があったのである。


「リ、リプル姫!まさか本当に……」

「……?どういうことですか、国王様?」

「い、いや……実は昨日、天から響く声が告げたのだよ。『猫神の巫女は選ばれた。巫女は国を担う王族より多く選ばれるだろう』と。そして我が娘も……」

「……え?」


 謁見の間の扉が開き現れたのは、ラムロ国の姫、チェルシー(十一歳)。驚くべきはその衣装だ。

 何と猫神の巫女衣装に身を包んでいたのである。


 同じデザインで色は黄色。猫神の巫女衣装で間違いはない。


「……猫神などまやかしと思っていたのだが、こうなると無視も出来まい」

「私達が連合の呼び掛けに来たことは……」

「無論、天の声とやらで知っていた。しかし、まさかリプル姫が来るとは思わなかった……。加えて今朝方、チェルシーまでもがその姿で巫女がどうとか言い始めたのだ」

「では、御理解と御協力を頂けるのですね……?」

「……いや。ダメだ。そんな怪しい存在を許す訳にはいかぬ」

「では、お試し下さい。猫神様の巫女は一騎当千。その力を見れば考えも変わるのでは?」

「何……?」


 軍事力を誇るラムロ国のプライドを擽るリプル。内気さは消え、すっかり王女の風格だ。


「………良かろう。我が騎士を倒せたら無条件で協力してやる」

「それで……何人ですか?」

「フッフッフ……女子二人では騎士の相手はキツいか?」

「いえ……私一人で何人を倒せば良いかと聞いたのです」

「!……たとえイシェルドの姫と言えど我が騎士達を侮辱することは赦さぬ。筆頭騎士との一騎討ち……後悔しても遅いぞ?」

「わかりました。猫神の巫女の力、とくと御覧下さい」


 庭に移動しての一騎討ち。ラムロ兵達が見守る中、リプルは筆頭騎士を前に退く気配は無い。


「フッ……色香を使い隙を突く気でしょうが、そうは行きませんよ?」


 魅惑的な衣装に見学している兵達は釘付け。だが、筆頭騎士はそんな色香に惑わされること無く剣を構える。


「始め!」


 ラムロ国王の掛け声の元開始された一騎討ち───しかし、結果は瞬殺。どちらが?など確認する必要もない。


【完全武装神具・猫かぶり】


 ライの持つ能力を限界まで詰め込んだ神具は、単体で小国を滅ぼせる謂わば兵器である。

 筆頭騎士がどれ程優秀でも【猫かぶり】の前では案山子かかしの如き存在。まともに対峙するには、最低でも【黒身套】でなければ太刀打ち出来ない。


 何せライを以て『使い熟された場合、まともに当たれば無事では済まない』と言わしめた装備。小国の騎士が勝てる訳がない。


「……国王様?」

「……くっ!……しょ、勝負あり!」

「どうか騎士殿をお責めになりませぬように……これは【猫神様】から授かった神の御力なのですから」


 こうして……ラムロ国は連合に加わることになった。


「それでは、この連合参加合意書にサインを……」

「わかった……。それにしても、猫神の巫女なる存在は何と言う力よ……。こんな力をチェルシーも宿しておるのか?」

「はい。ですが、お気をつけ下さい。猫神様は国を守る為にこの力を授けてくれたのです。もし悪用しようとした場合……」

「……ど、どうなるのだ?」

「……その……装備が消滅し着用者が全裸になると……」

「くっ!……な、何と恐ろしい……」


 それは、実際にライが組み込んだ魔法である。国がその力を悪用しようとした場合、それに加担した装着者の意識を読み取り全ての装備が消滅する。当然、スッポンポンだ。

 これは王族にとって避けねばならぬこと。全て狙い通り……上空から《透視》で観察しているライは悪い顔してはった。


「では、私達はこれで……」

「ま、待て。チェルシーも連れて行くのか?」

「それは……」


 戦いを見ていたチェルシーは王の前に歩み出た。


「私も巫女に選ばれました。だから行きます」

「し……しかし……」

「大丈夫です。お姉ちゃん達が一緒ですから」

「仕方無い………わかった。気を付けてな。巫女達よ、チェルシーを頼んだぞ!」


 今し方【猫かぶり】の力を見せ付けられたばかり。あの力ならばチェルシーに危険が及ぶことも無いだろうことがラムロ国王の思考を軟化させた。



 こうしてラムロ国が連合表明をしてからは纏める速度が上がることになる。


「お兄ちゃん、隠れてたの?」


 上空で待機していたライと合流した巫女達。ライが先手を打っていたことにミーシアは驚いていた。


「何時、こんな仕掛けを?」

「昨日です。チェルシーちゃんと話して協力して貰ったんですよ」

「それで衣装まで……。それにしても……」


 ミーシアは少し暗い表情だ。


「チェルシー様は……」

「同格ですよ、同格」

「チェ、チェルシーちゃんは十一歳……私より一回りも下なんですよ?私、やっぱり恥ずかしくて……」

「そんなこと無いですよ?兵隊さん達は皆、ミーシアさんに釘付けでしたし」

「そ……そうですか?」

「エロチ……お姉さんキャラは必須ですからね?」

「あ、あれ?今、エロチックと言おうとしませんでしたか?」

「さあ、行こう!全ては猫神様のご意志!」

「……。はい!」


 魔法の言葉はミーシアには絶大だ。


「お兄ちゃん、悪い顔……」

「おっと……チェルシーちゃん。約束だったけど、これで良かったの?」

「うん。これでようやく色んな場所に行ける。お城、つまらないんだもん」

「ハッハッハ……後で街を見学出来るよ。さあ、この調子で残りも署名させよう!」


 人数が増えた猫神の巫女。センター、エロチック担当、ロリ担当……順調にキャラは揃い始めた。


 次に向かったのはオズワルド国。因みに『高地小国群』は一国を除き全てに若い姫君がいる。ライは既にその姫達を言葉巧みに説得している……。


 それからの交渉は、時には巫女達の力を見せ付け時にはリプルの説得でと順調に進む。そんな中でラムロ国の署名という事実は大きく、次々に巫女の数を増やして行った。


 姫達は皆、快く巫女の役を引き受けてくれていた。それは『王族の責任感』からのものでもあるのだが、『巫女の役を受ければ自由を得られる』ことの意味が殊更に大きかった。


 その後加わったのは、オズワルド国の姫・ベルガ、ルオラ国の姫・ミネット、フィラル国の姫・クーネミア。


 ベルガ(十六歳)は黒髪ツインテールでややツンデレさん。明るい薄紫の衣装。

 ミネット(十七歳)は、活発で運動が得意そうな短め黒茶髪の少女。橙色の衣装。

 そしてクーネミア(十五歳)は無口でクールな印象を受ける銀の長髪。水色の衣装。


「良し。あとはエクナール国だけか……でもなぁ」

「何よ?何か問題でもあるのかしら?」

「ベルガ姫……実はですね?」

「その前にあなた、私達のコーチなんでしょ?じゃあ敬語はダメよ」

「え?……ああ、うん……」

「べ、別にあなたの為に言ってるんじゃないわよ?せっかく堅苦しい立場から離れたのに台無しになるじゃないの……あなたの為じゃ無いんだからね?」


 ベルガさん、見事なツンデレ……。


 この時……アクト村に残してきた分身ライは張り裂けんばかりの声で『ツンデレ、キタ━━━ッ!?』と叫び、それがイシェルド王城にまで聴こえたのは余談だ。


「わかりま……わかったよ。全員それで良い?」


 全員から承諾されライは敬語を止めることにした。


「それで……何が問題なの?」

「エクナール国には姫が居ないんだ……。だから、巫女の立場を利用して連合に誘うことが出来ない」

「……大丈夫じゃないかしら?五つの国が賛同したなら加わらない方がおかしいわよ?」

「う~ん……調べたところによると、エクナールの王はトシューラに親類がいるらしいんだよ。もしかすると難しいかも……」


 エクナール国王の伯母に当たる人物がトシューラ貴族に嫁いだ為に、エクナールは前回の連合に参加表明しなかったのだ。


「じゃあ、五国だけで良いんじゃないの?」

「エクナール国がトシューラ側に付くと地理的に厄介なんだよ、ミネット。出来れば連合に取り込みたいんだよねぇ……」

「……とにかく行ってみる」

「そうだな……クーネミアの言う通りだ。とにかく行ってみよう」


 あわよくば、ベルガの言う通り他の国に釣られて連合に加わる可能性……は低いが、無いとも言い切れない。



 こうして向かったエクナールは、連合加盟に絡む問題だけでなく様々な出来事が待つ地。猫神の巫女達は直ぐにそれを理解することになる……。



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