第四部 第四章 第三話 御神楽八人衆
御神楽の島・下層──。
スイレンに案内され上層への道筋に向かうライは、この機会に聞いておきたいことがあった。
それは、折角ディルナーチ大陸に居るのであれば知っておきたい……いや、今後の為にも是非知るべき事柄。
「スイレンちゃんに聞きたいことがあるんだけど……」
「何でしょうか?」
「あの纏装を斬る技……天網斬りって言うんだっけ?アレ教えて貰えないかなぁって思ったんだけど、ダメ?」
纏装を使う相手と対峙した際、かなり優位な戦いが出来る筈の『天網斬り』。今後……強力な魔人や魔獣、黄泉人等が現れた時のことを考えると、是非とも手に入れたい技である。
しかし、スイレンは残念そうな表情を浮かべつつ首を振った。
「えぇと、その……多分、無理ですね」
「何で?もしかして秘密の技なの?あ……まだ信用出来ないから教えられないとか?」
「いえ……。あの技は感覚が掴めないとダメなんです。的確な指導が出来る者の元で学ばないと……」
やはり修練が必要らしいのだが、ようやく出会えた使い手。せめて触りだけでも教えて貰いたいライは、何とかスイレンに食い下がる。
「じ、じゃあ、スイレンちゃんの感覚で良いから、こう……何となく言葉に出来ない?」
「え?えぇ~……?そうですね……あまり期待しないで下さいね?」
足を止めしばらく考え込んだスイレンは、鞘を抜かぬまま構えた剣を振りつつ何かを確認している。
「私の場合ですが、こう……やるぞ!っていう気合いを籠めると言うか、斬れるぞっていう気持ちを乗せると言うか……。言葉にするとやっぱり難しいですね……」
自らの説明に納得出来ないスイレンは、何度も首を傾げていた。
「………フワッとしてますね、説明が」
「………フワッとと言うよりモヤッとじゃな。これで理解出来たらお主、間違いなく天才じゃぞ、ライよ?」
「えぇ~っと……無理っす!」
メトラペトラに指摘された様な天才では無いと自覚しているライ……今回はおとなしく諦めることにした。
使い手が確かに居ることが判ったのだ。豪独楽に向かえばまた情報も得られる筈、と思考を切り替えることにした。
しかし、スイレンは申し訳無さそうに頭を下げた。
「ちょっ……スイレンちゃんが謝る必要無いよ?言葉にしろって無茶振りしたの俺なんだから。寧ろゴメンね?」
「いえ……。お恥ずかしながら、私は昔から人に教えるのが苦手なんです。だから、師には向きませんね」
「でも、『天網斬り』を使えるんだから十分凄いよ。やっぱり御神楽で覚えたの?」
「御神楽で天網斬りを使えるのは私と頭領、あと一人の三人しかいません。だからこそ私は直属護衛に選ばれました」
ディルナーチ大陸でも天網斬りの使い手自体が稀なのだと語るスイレン。御神楽が魔人を管理しているならば、然程重要な技術ではないのかも知れない。
「私は剣術家の娘ですので実家で修得しました。子供の頃からずっと修業を続けたので……」
「スイレンちゃんの実家は久遠の王都にあるんですよ?ホオズキ、一度スイレンちゃんと行ったことがあります」
人との接触禁止と言いながら、実家に戻る程度の自由はある。そんな厳格なのか緩いの良く判らない組織『御神楽』──未だ頭領の意図が分からぬ以上油断は出来ないが、ホオズキやスイレンを見ているとそれ程悪い組織にも感じない。
「それはそうと……聞いてる俺が言うのもなんだけど、情報をそんなに喋って問題無い?後で怒られたりしない?」
「御神楽の地に辿り着いた者に今更隠し事をしても意味が無いと思いますが……」
「……まあ、確かにね」
その気になれば記憶を探れるライに対して沈黙は意味を成さない。勿論、ライはそんな理不尽を行うつもりはないが……。
「恐らくですが、頭領はあなた方を呼ぶ為に小細工を労したのかも知れませんね」
「小細工……?」
「そういう方なのです、頭領は。会って頂ければわかると思いますので先へ急ぎましょう」
森に覆われた小路を先導して進むスイレン。やがて森が拓けた先に断崖が姿を現した。
道はそのまま岩壁に向かって進んでおり、そこには岩肌を削り出した長い折り返し型の階段が確認できる。
「ほへぇ~……どんだけ手間掛かってんのかね……」
「あの階段は、初めに島を開拓した者達が時間をかけて削り出したものらしいですよ?今から五、六百年前のことだそうですが……」
「六百年……そんな前から御神楽は存在するのか……」
「いえ……御神楽が組織になったのは三百年前だそうです。それ以前は組織ではなく神社として存在したとお聞きしました。詳しい由来までは分かりませんけど、この島は神具と聞いています」
「神社……神具……」
島が空に浮いている時点で尋常ではないのだが、神具だと言われても巨大すぎて今一つピンと来ない。
「普段からの移動、大変じゃないの?」
「階層ごとの行き来はあまりしないことに加え、皆さん魔人なので大した労力ではありません。下層は農作物や食料を扱う者が、中層は武器や衣服、食器などの工房職人が、上層は魔人管理を請け負う役付きの者達が暮らしています」
「スイレンちゃんは上層か……。ホオズキちゃんは?」
「ホオズキは全部の層に家があります。御神楽の管理がホオズキの仕事ですから」
そんなホオズキが何故ライへの伝言役に選ばれたのかは甚だ疑問が残るところだが、御神楽の頭領に会えばその理由も判ることだろう。
「では、行きましょうか。あまりゆっくりも出来ないのでしょう?」
「そだね。ん?何か階段のところに人が……メトラ師匠、見えます?」
「うむ。しかも武装しておるのぅ……何じゃ、あれは?」
「……ホオズキには全然見えませんよ?」
「私にも見えません。凄いですね、お二方とも……」
「とにかく行ってみよう」
急いで行く……必要も無いので普通に歩いて行くと、既に階段に人影はない。
「誰も居ませんよ?」
キョロキョロと辺りを見回すホオズキとスイレン。だが、ライとメトラペトラは移動中も人影から目を離さずに動きを追っていた。当然、何処に居るのかは知っている。
「メトラ師匠……どうしますかね?」
「うぅむ。放っておいても構わん気もするがのぅ。話では天網斬りの使い手はスイレンを除けば頭領ともう一人のみなんじゃろうしの」
「ホオズキちゃんとスイレンちゃんが居れば無茶な攻撃はして来ないですよね?じゃあ放置して行きま……」
「フハハハハ!待てぇい!?」
ライの言葉を遮り突如響き渡る笑い声……。と同時に、上方にある階段の踊り場から三つの人影が降り立った。
着地の衝撃で地響きが起こり、近くの森から鳥が一斉に飛び出す。
「外界から来た魔人は貴様か!」
着地した三人のうち一人がゆっくりと立ち上がり、ライに長刀の先を向ける。
「イイエ、ヒトチガイ デスヨ?」
「やはり貴様か……。この御神楽の地に土足で踏み………えっ?ちっ、違う?」
「ワタシ マジン チガウ」
「………スイレン。本当か?」
スイレンは溜め息を吐いた。メトラペトラとの会話を聞いていたのでライの言葉が嘘では無いことは理解している。
『外界から来た魔人』ではなく『外界から来た半精霊体』……。
ただの屁理屈なのだが、その抜け穴を突いて惚けるライにスイレンは呆れるしかない。
因みに、カタコトなのはライのサービス精神溢れる『おまけ』である。
「そんなことはどうでも良いですよ。ロウガさん。それにソウジャクさんにフガクさんまで……一体何のつもりですか?」
「どうでも良くは無い!外界、しかも異国の魔人だぞ?御神楽の為に我ら八人衆が其奴を確かめに来たのだ」
「この方達は一応客人なのですが、いきなり刃を向けるのは失礼では?」
スイレンのこの言葉に、メトラペトラはニヤニヤしながらライに語り掛ける。
「おい、ライよ……いきなり刃を向けてきた奴が正論を垂れておるぞ?何か言ってやらんか?」
「ま、まあまあ。スイレンちゃんもホオズキちゃんが心配だったと謝罪したじゃないですか。許してあげましょうよ……」
小声だったがしっかりスイレンの耳にも届いていたらしく、微妙な顔で真っ赤になっている。
ライは見兼ねてスイレンの頭を撫でた。
「大丈夫、大丈夫。スイレンちゃんの対応は正しかったと思うよ?得体の知れない相手には警戒するのは当然だし」
「ラ、ライさん……」
改めて前に出たライは、努めて丁寧に自己紹介を始めた。
「さて……八人衆の方々。ご紹介が遅れて申し訳ありません。私はシウト国から来た勇者、ライと言います。あなた方の探しているのは私でしょう。何か用ですか?」
「やはり貴様か……この御神楽の地に土足で踏み入るとは許せん」
「一応ですが、私はホオズキちゃんを運んで来たんです。久遠国を五日も野宿しながら駆け回るんじゃ、あまりに酷いでしょ?」
「それは……どうもご丁寧に……」
「いえいえ。分かって頂ければ良いんです」
八人衆を名乗った三人は深々と頭を下げ、ライも合わせて丁寧に頭を下げた。
「だが!それとこれとは話が別だ!今から貴様を試させて貰う!?」
「えぇ~……またしても話聞かない系ですよ、師匠」
「うぅむ。ならば相手をしてやるが良い。八人衆なら八人納得させれば良いのじゃろ、スイレンよ?」
メトラペトラからの問いに、死んだ魚の目に半笑いのスイレン……。
「何じゃ?何か問題があるのかぇ?」
「いえ……その……八人衆なんて御神楽には存在しないんです」
「は……?どういうことじゃ?」
「その方々が勝手に名乗っているだけなのです。実質、六人居ません」
「……………」
驚愕の事実……。八人衆なのに六人居ないとはこれ如何に?とメトラペトラはスイレンと同じ表情になっている。
だが、ライはやや興奮気味だ。久々の……そう、実に久々の逸材達なのだ。
(コイツはヤベェ……。乗るしかない、この大波に!?)
そしてここから、痴れ者達の茶番劇場が開始されることとなった。
「クックック。八人衆か……。だが、果たして私を倒せるかな?我が名はライ──魔王を倒しその座を奪った者」
つい先程ライは勇者と名乗ったばかりなのだが、そんな記憶は嬉しさのあまり彼方へと吹き飛んでいた。
そして、八人衆側も思いがけぬ急展開に瞳を輝かせている。
「魔王だと……?くっ!これは御神楽の危機。だが、この身を賭しても御神楽は守る!」
「クックック……出来るかな?八人揃わぬ貴様らに?」
互いにノリノリで香ばしい台詞の応酬を繰り出し始めた『自称魔王とエセ八人衆』……。そのあまりの痛々しさに、メトラペトラとスイレンは遠い眼差しで見守るしかない。
「の、のう。スイレンよ?八人衆とやらの内訳はどうなっておるのじゃ……?」
「あの三人は一応、島の戦力には違いありません。あんなですけど強いですよ?」
「うむ。頭はともかく確かに腕は立ちそうじゃな。で、残りは……?」
「後は中層で大工をやっていた者が居るのですが、奥方に嗜められ今は大人しくしています。後の一人はやはり中層で鍛冶を営む男ですが、気弱な男で無理矢理に引き込まれて……多忙を理由に一度も参加した様子はありません」
八人衆は残念のオンパレードだった……。しかも、まだ三人足りない……。
メトラペトラは『人数少ないなら四天王で妥協しろよ!』と心の中で叫んだが、どうせ残念な奴らに届く訳がないと諦めた。
そうこうしている間にも残念な人達の香ばしい会話は進み、ようやく戦いまでこぎ着けた様だ。
「例えこの身が滅びようとも、この島を……御神楽に住む者達を守ってみせる!」
八人衆、恐らく首魁であろうロウガ。ディルナーチ特有の細長く緩かな曲刀を持つ男はかなり美男である。残念でなければ、さぞモテたことだろう。
「わ、我らの力……とくと味わえ、魔王!」
八人衆きってのクールガイを気取った長髪長身の男・ソウジャクは、二本の短槍を持ち三白眼を髪の隙間から除かせている。が、ライからすればまだまだ照れがある様に見えた。
「ご飯、ご飯……早く終わらせてご飯にするんだな」
明らかな大食漢であろう大男・フガクは、柄の短めな金槌を手にしていた。この男だけは素なのかキャラづくりなのか良く分からない。
「クックック……。ならば、この魔王の手で滅びるが良い!」
そして我らが痴れ者勇者。片手で顔を隠し身体を斜めに崩した香ばしさ溢れるポーズを決め、残念さを加速させていた……。
「さあ、行くぞ!魔お」
「さあ、行くぞ!食らうが良い!?」
台詞駄々かぶりのまま先制攻撃を行ったライは、分身体を展開。但し、今回は数体ではない。場を埋め尽くさんばかりの分身体を発生させた為に全員が身動きが取れない程だった……。
「………。なんじゃ、こりゃあぁぁぁっ!?」
かろうじて空中に回避したメトラペトラとスイレン、そして持ち上げられ難を逃れたホオズキ。
眼下の異様な光景に三名は絶句するしかなかった。分身体の数は千を超えているのは間違いないだろう。
数が多すぎて分身全ての意識はライ当人も把握しきれない。故に意識が届かず、半笑いのままヨダレを垂らし虚ろな目をしている分身が殆んどである……。
【必技・満員地獄】
紅辻の街を見て歩いた際、あまりに盛況な菓子屋を見て編み出した嫌がらせの技である。
しかし効果は絶大──手も足も出ない『自称八人衆』三名は、右に左にと押しくらまんじゅうさながらに振り回されている。
「くっ……腕が上がらん!刀も落した!」
「俺もだ!何と恐ろしい……」
「苦しい~……腹へった~」
最初に分身を出した時点で相手の武器をちゃっかり叩き落とすライの抜け目の無さ……。足を掴み飛翔で逃げられない様にもキッチリ対策済みだ!
「クックック……。どうだ、人ごみ地獄は?御神楽の田舎者には苦痛だろう?」
「おのれ魔王め……!だが、俺達は負ける訳には……」
「クックック……ならば、これならどうだ!」
分身体は少しづつ体温を上げ始め、一団は瞬く間にサウナの如き熱気に包まれる。
「うわぁ……あれはキツいのぅ」
「巻き込まれていたらと思うとゾッとしますね……」
例えるなら、『炎天下の部屋にすし詰めされる様な蒸し蒸しとした暑さ』──だが、ライの攻撃は更に熾烈さを増して行く。
分身体はいつの間にか褌一帳になっていた……。
「こ、これは、もはや地獄じゃのぅ……」
「み、見ているだけで寒気がします……」
分身体は無気力な顔のままで『ソイヤ、ソイヤ』と掛け声を上げつつ更に熱気を高めてゆく。
その光景は祭り……そう、『満員地獄』はこの場にて更なる昇華を果たし『地獄祭り』になったのだ。
シウトに帰ったらティムに見せてやろう……等と痴れ者勇者が考えているのだが、ティムにとってそれはありがた迷惑でしかない……。
ともかく、そんな精神と肉体の地獄に苦悶する八人衆を確認したメトラペトラ。とうとう見兼ねて救いの手を差し伸べることに……。
「ライよ……その辺りで終わりにしたらどうじゃ?」
上空からメトラペトラが呼び掛けると、分身体が一斉にメトラペトラに顔を向けた。
「うぉう!気色悪い!」
半笑いの虚ろな目をしたライが約千人近く……しかも褌一帳。それに見つめられる光景は夢でうなされそうだった……。
そして、そんな分身体ライの口々から言葉が漏れ始める。
「クックック……この【地獄祭り】は何人たりとも逃れることは出来ぬ」
「いやいや、もう十分じゃろ。いい加減終わりせい」
「……。師匠がそこまで言うなら仕方ない。祭りもいよいよ佳境!哈っ!?」
掛け声が一層大きくなる中で本体ライが分身の群衆から抜け出した。メトラペトラ達を手招きで呼び寄せる本体は、当然ながら服を着ている。
「じゃ!仕上げますので俺の背後に」
「仕上げ?何じゃ?」
「まあ、見てればわかりますよ」
ソイヤ、ソイヤの掛け声と共に分身達は連鎖爆発。勿論、殆んど威力の無いものだが八人衆には丁度良い終わりの合図になるだろう。
分身が全て消えた頃には、八人衆(三名)全員がピクピクと痙攣し突っ伏していた。
「フッ……我に勝とうなど千年早いわ」
「おのれ……ま、まだだ。まだ行かせんぞ……」
「貴様とは……時代が違ければ、友になれたかも知れんな。だが……我は先に行く!」
「……いつか必ず……貴様……を……」
ガクッと力尽きたロウガはとても満足な笑みを浮かべていた。よほど嬉しかったらしいロウガさん(二十八歳)。良く見れば親指を立てている。
「……スイレンよ。御神楽は残念な奴しか居らんのかぇ?」
「あの人達は特殊ですので一緒にしないで下さい」
「………。ま、まぁ良いわ。先を急ぐぞよ?」
「わかりました。ライさん、行きましょう」
「は~い、わっかりました~!」
茶番は終わったと言わんばかりに跳ねながら駆け寄るライを引き連れ、スイレンは階段を上る。
中層に辿り着いた時、視界に映る下層には中々の絶景が広がっていた。
「そろそろ夕刻ですね。折角ですので頭領とお会いするのは明日にしませんか?大したおもてなしは出来ませんけど……」
「それならホオズキが腕に縒りをかけますよ?嘉神ではお世話になりましたから」
「そう言えば家事全般が得意なんだっけ?小さいのにエライ、エライ」
「ホオズキ、子供じゃないですよ!何時になったら大人扱いしてくれるんですか?」
頭を撫でられ嬉しそうでありながらも不満を口にするホオズキ。その姿がまた微笑ましく見える二十三歳……これはこれで不思議な光景である。
「ホオズキよ。大人扱いされたら頭を撫でられることも抱えられることも無いんじゃぞ?勿論、飴もそれほど貰えなくなるんじゃが……」
「ホオズキ、子供で良いです」
即答したホオズキ。やはり飼い慣らされている……スイレンは思った。
「そう言えば御神楽にお酒ってあるの?」
「はい。料理にも使うので酒蔵はありますよ?魔人でも酔える様にかなり強いお酒を造っています」
「皆さん仕事はどうしてるの?」
「御神楽に暮らしている者は、元々魔人になる以前からの仕事に就いています。ロウガさん達は確か神羅国の兵士ですし、下層の人達は農民。それ以外の方達も、自らの得手不得手を見極めつつ仕事を見付けています」
「通貨はどうなってるの?」
「ありません。基本は物々交換です。需要が少なく実入りが少ない仕事でも皆で助け合っていますし、生活苦にならない様に頭領が調整もしています。組織というより家族の様な形態ですね」
頭領の元には様々な物が『備蓄・備品』名目で多めに保存されているらしい。あまり贅沢は出来ないが不公平や不都合が無いように調整され、基本物価は物々交換ということになっている様だ。職人の手が必要な物は当人が自ら材料を用意し依頼するか、頭領の許可を得て外界から調達するとのことになっていた。
因みに、健康面は皆が魔人なので病を患うこともなく医者も居ないとのこと。
「不都合があればその都度方策を考えることにしています。御神楽の地は島としては小さいかも知れませんが、魔人達が住むには広いですから」
島の魔人は全員で百人超程……。島は優に数千人は住める広さ。魔人ならではの労力もある為に研鑽・開発も容易いだろう。
「酒か……飲んでみたいのぉ……」
「御神楽の酒なんて珍しそうですから飲んだらどうですか?」
「よ、良いのかぇ?」
「飲み過ぎなければ良いですよ。明日御神楽の頭領に会うんですから程々にして下さいね?」
「ひゃっほぉ~ぅ!では急ぐのじゃ!」
「わかりました。中層のホオズキ先輩の家に向かいながら用立てます」
スイレンは随分と対応が良くなった。最初と違い優しさを感じさせるその姿こそが本来のスイレンなのだろう。
ライはそんなスイレンに素直に感謝した……。
やがて辿り着いたのは小さいながら手入れが行き届いた館。家事全般が得意というホオズキの言葉は、どうやら本当のことらしい。
その後……入浴、食事と予想以上に満足な待遇を受け、一行はホオズキの家で休むことになった。
徐々に明らかになる御神楽の実態──その頭領との出会いも様々な驚きに包まれることになる。
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