第四部 第二章 第八話 嘉神に巣食うもの


 紅辻の街──そこは嘉神領の中央街にして久遠国有数の経済都市。


 国中から集まる物流の中継地……それを開拓したのは嘉神領主コテツの手腕である。


 領地間の諍いなしに取り引きを行えることは商人としても魅力的な話であり、加えてスランディ島国からの真新しい輸入品は品揃えが豊富。必然的に嘉神領には人が増え、需要と供給が高まり大都市へと成長を遂げた。



「はぁ~……いや、デカイ街ですね」

「うむ。しかも何やらペトランズ大陸の文化も混じっている様じゃな……。とても鎖国していた国には見えん」


 街を歩くライは頭にメトラペトラを乗せている。久遠国の人達より頭ひとつ高い身長、さらに猫を乗せた容姿は傍目から見てもかなり目立っている。

 しかし、街にはスランディの商人も多く過度の注目を浴びることはなかった。


「しっかし人、人、人じゃな。これ程に人がいると……思わず滅ぼしたくなるのぉ」

「お願いだから止めて下さいね?確かにゴミゴミしてますが……って、あれ?ホオズキちゃんは?」

「お?あそこに見える手がそうかのぅ?何やら流されておるようじゃが……」

「小さいですからね、ホオズキちゃんは……」


 【御神楽】なる組織から派遣された魔人・ホオズキ。伝言役としてライの元を訪れた彼女は苦労人な様で、不憫さを見兼ねたライ達に保護されるに至る。

 ホオズキはライ達の予定に合わせ紅辻の街に同行をすることとなった。


 因みに当人は『監視』を行っていると本気で信じている……。


 そんなホオズキ。身長はライの胸元までしかない。やや小柄な人間の多い久遠国の中でも小柄に入るホオズキは、一見子供に見える童顔の持ち主でもある。当然、人混みに飲まれれば流されるままだった。


「捕まえた~。駄目だよ、ホオズキちゃん……何で流されてんの?」


 仮にも魔人なのだから本来は人混み程度に流される訳がない。しかし、ホオズキは目を回しながらもその力を使用しなかった。


「め……目立つことはダメなんですよ。ほ、本来は人里に来るのもダメなんですから……」


 人との関わりを禁じる【御神楽】。その教えを守り人里では力を使わないと決めているホオズキだが、監視名目で街に入った時点で禁を破っていることに気付いていない。


「ともかく、また紛れると保護者としては心配だから手を繋いで」

「保護者?保護者って何ですか?ホオズキはもう立派な大人ですよ」

「そう言えばホオズキちゃんは幾つなの?」

「今年で二十歳です」

「…………嘘じゃな」

「………嘘ですね」

「う……嘘じゃないもん!本当だもん!疑うんですか?」

「飴、食べる?」

「頂きます」


 事実なら、それはそれで大変な事である。外見の十代半ばはともかく、飴に釣られる二十歳というのはかなり問題があるだろう。


「じゃ、自称『二十歳の大人』を夢見る少女ということで」

「そうじゃな……それなら納得じゃ」

「むもむむむ!………むふぅ……」


 何やら抗議していた様だが、飴に満足して諦めたホオズキ。ライは『やはりお子ちゃま』という結論に至った。


 その後、しばらく街中を散策した一行。ホオズキに髪飾りや帯留め、替えの着物などを買い与え、更に食い倒れを敢行し温泉旅館に到着した。


「今日の宿はここで良いかな。ホオズキちゃんも旅の汗を流して来なよ」

「そ……そんなこと言って逃げようとしても無駄ですよ?」

「逃げないよ。ほら、早く温泉に入ってこないと晩御飯が食べられないよ?」

「……仕方無いですね。そこまで言うなら入って来てあげます」


 少しそわそわしながらも宿の内装に目が輝いているホオズキ。如何に【御神楽】の生活が質素だったのかが良くわかる表情だ。


「臭いと目立っちゃうからね?しっかり洗って来なよ?」

「失礼な!ホオズキ、臭くなんてないですよ!」

「メトラ師匠、一緒に付いて行って下さいね。溺れると困るから」

「溺れませんよ!子供じゃないんですから!」

「………え?う……嘘じゃろ?」

「むぅぅ!ホオズキ、怒りました!」

「飴食べるかの?」

「頂きます」


 チョロいホオズキはメトラペトラに任せ、ライは単身で嘉神領主の居城に向かった。



 紅辻の街のその奥──小高い丘を利用して建築された嘉神の城『鹿雲城』。城の左右に聳え立つ高い塔が特徴だ。




 かつて……嘉神領主の血筋は跡目争いが絶えなかった。城下町での果し合いから始まり、常日頃から暗殺、謀殺が飛び交っていたのだ。赤く染まった往来はやがて『赤辻』と呼ばれ曰く付きの場所とされたのである。

 落ち着いたのは三百年の久遠国王の時代。当時の国王【ラカン】により派遣された密偵により、もっとも潔白な領主を残し誅殺が行われたと伝わっている。


 領主は悲劇が終わったことにより因縁の名、赤辻を『紅辻』と改め治安の維持に努めた。その手法はラカンより齎された隠密の重用……久遠国随一の隠密を抱える領地となったのが現在の基礎となっている。



(ってのがシギから聞いた話だけど……凄いね、本当に)


 鹿雲城に近付くにつれ、周囲に付いてくる人間の数が増えて行く。その数、五十人程……全員が密偵の様だ。


 ライは紅辻に着いてからすぐに密偵が張り付いたのを確認している。テンゼンの命によるものか目立つ者に対する通常対応かの判断が付かなかったが、どうやらテンゼンの命令で間違いようだ。


 そして街から離れた城門前───ライは固く閉ざされた門に向き合い、腕組しながら盛大な声を上げる。



「お~い!俺を呼んだのお前だろうが!とっとと会わせろ~!?」


 密偵は忙しなく動いている様だが、城の門は開かない。常に開き通しの不知火・白馬城と違って堅牢な門戸は沈黙を保っている。


「そっちがその気なら穴開けるぞ~!十秒だけ待ってやる!九、八、七、六、五、四、三……」


 重厚な音を立て門が開き出す。そのあまりの遅さにイラッと来たライは、数字のカウントを止めない。


「二、一、発射!!」


 眼球から放たれたのは火炎圧縮魔法【穿光弾】──。僅かに開きかけた門扉を押し戻すと盛大な大穴を開けた。


 突然の事態に慌てたのは密偵達だ。まさか門を破壊するとは予想外だったらしい。


「続きまして~、右の塔の崩壊まであと十秒、九、八、……」

「ま、待て!テンゼン様がお会いすると仰せだ。来い!」

「人を挑発しておびき寄せておきながら何だ~、その態度は~!このまま本丸に大穴開けるぞ~?良いのか~?」

「わかった!……いや、わかりました!どうぞこちらです」

「わかれば宜しい」


 フンスと鼻を鳴らすライは家臣らしき男に導かれるまま城内を進む。場内に人影はなく、窓も全て閉まっていて薄暗い。

 だが……ライにはそこかしこに潜む密偵を感知していた。その手に握る鋭く光る物さえも。


(………殺る気満々じゃん。でも、仮にもシギの仲間なんだよなぁ。ま、良いか)


 背伸びをしながら足の底から《雷蛇》を発動。ワラワラと床下を這い移動して行くが、密偵達からは見えていない。しばらくすればアチコチから悲鳴が聞こえて来るだろうと、そのまま家臣の追った。


 城の階段を上り続け天守の間へ。そこは光が射し込んでおり、明暗の差で一瞬だけ目が眩む。

 視界が戻るとそこには座して待つ一人の男の姿が……。


「ようこそ。お待ちしてましたよ、魔人殿。イサザ、下がって良い」


 配下を下げたテンゼンはライに座るよう促した。


「こっちは会いたくも無かったんだけどね。改めて言っとくけど……『俺を挑発した覚悟は出来てんだろうな?』」


 ドッカリと腰を下ろすライ。テンゼンは無機質な笑みを浮かべている。


「ハッハッハ……面白い方だ。では、こちらも改めて…。初めまして、我が名はクラギ・テンゼンと申します」


 ディルナーチでは一般的な黒髪を背中で束ね、左目には眼帯をつけた特徴ある容姿。全体的に線の細い印象の中で、一際鋭い右目。その男──『クラギ・テンゼン』は、嘉神の家臣にしてはかなり若い印象を受ける。


 そんなテンゼンに、ライは始めから違和感を感じていた。


 テンゼンの身体には魔力の流れを感じないのである。視覚纏装の【流捉】を常時使用しているにも関わらず、魔力の流れが身体の何処にも見当たらないのだ。


 だがライは焦る素振りを一切表に出さない。こういう時、演技力の高さは便利だった。


「名乗らなくても知ってるよ。さて、俺も名乗りが必要かな?」


 気取られぬようテンゼンの周囲を観察。現状では情報は幾らあっても困らない。


「必要ありませんよ、『ライ殿』。大聖霊様はご一緒ではないのですか?」

「どうせ見張りが付いてんだろ?」

「お気付きでしたか。ハッハッハ」


 テンゼン側にも焦りや気負いは見当たらない。いや、余裕かすら判断が出来ない。浮かべている笑顔はまるで意図など無いかの如く、只その形を保っているだけに見えた。


「お前は何を企んでるんだ?才ある領主を殺して成り代わりたかった……訳じゃねぇよな。どちらかと言えばただ壊して遊んでいる様に見える」

「そこまで理解しているなら説明は不要でしょう?何か疑問があるならお答えしますが……そうだ。貴方の考えを語って下さい。間違いがあれば指摘しますので」


 テンゼンはどうも人をナメている感じがするがもう少し情報が欲しい。この際都合が良いので、ライは話に乗ることにした。


「じゃあ遠慮無く……。領主コテツを殺したのはハルキヨに対する嫌がらせか?」

「正解」

「シギの記憶を弄り不知火に送ったのも同じ理由」

「正解」

「地下にいるコテツの子供達は、後で傀儡にして他領地に亡命させる気だった」

「はぁ……そこまで正解しますか」

「俺達を挑発して引き寄せたのは手駒として操る為か?」

「そこは半分ハズレですね。一応、同志になるか誘うつもりでしたし」

「だけど、そうならないことは理解してただろ?」

「正解……素晴らしい……」


 テンゼンの表情は変わらないが動きがやたらと役者ぶって大袈裟だ。


「久遠国中に目があるな?」

「正解」

「俺達が修業してたことも見てた」

「それを見ていた目を貴方は潰したでしょう?お陰で一昨日から今日まで貴方の動きが掴めませんでしたけどね」

「……嘉神領は既にお前の手の中か」

「正解。やはり貴方は素晴らしい素材だ」

「お前……最近の魔人じゃねぇな?」


 この言葉でテンゼンの動きが止まった。おかげでライは、ようやく真実に手を掛ける。


 テンゼンの動きはあまりに大袈裟でその分動きが人為的に見えたのである。まさに操り人形の様に……。

 手段を見破るには、更に【流捉】を強化する必要性があった。


(やっぱりか……)


 見えたのは超極細の糸。ライの使う感知纏装の様に、注意せねば見抜くことすら出来ぬほどの極細の糸だ。


(コイツ……ヤバイな。リンドウ達の修業手間取ったのが正解だったとか、どんな皮肉だよ……)


 ライの目にすら捉えられなかった繊細な糸。更に感知纏装に掛からなかったということは、極細の纏装を見抜き全て避けていたことになる。

 しかも現在も魔力を感じない完全な隠密……今までの相手とは別格の様だ。


「なあ、アンタ。諦めて帰ってくんないかね?」

「随分と横暴ですね。ここは私のナワバリなのに……。貴方の方が出て行くのが筋でしょう」

「それを言うなら人間の縄張りに踏み込んでるのはアンタだろうが……」

「何故、人間如きに気を使う必要があるのです?我々は魔人……人など所詮、餌なのですよ?」


 目の前のテンゼンが小刻みに震え始める……。


 ここでライは地下に潜ませていた分身体を昆虫から変化させ、纏装としてハルキヨ、トウテツ、カエデを包み込んだ。使用したのは覇王纏衣の最終型【黒身套】──。

 そのまま三人を操作し障害物を尽く破壊しながら場外へ避難させた。三人が絶叫する様子が伝わって来たが、非常事態故に無視。


 目指す場所はメトラペトラのいる旅館……。現在のディルナーチで最も安全だろう場所だ。


「……貴方もさかしいですね。予め分身体を張り付けてあったとは」


 当然その様子を見ていたテンゼン。だが苛立つ様子も見当たらない。


「お互い様だろ?まさか嘉神領地全てにキッチリ網を張っているとはね。とんでもない魔力だ」

「お誉めに預り光栄ですよ。今まで気付く者もいませんでしたからね……ウフフフフ」

「いい加減、姿を見せたらどうだ?【クモ】さん」


 踊るような身振り手振りをやめたテンゼンは、身体を捩り全身からバキバキと音を立て倒れる。見るも無惨な姿は、まるで搾った雑巾の様にも見える。血が出ないことから死後かなり経過している事が窺い知れた。


「アタシを……蜘蛛と呼ぶんじゃねぇぇぇえっ!!」



 天守の天井をぶち破り降りてきたのは異形の姿……人と蜘蛛の融合体。


 久遠国でも最高級であろう鮮やかな十二単を着込む女体は、肌が有り得ない程に白い。黒髪は腰を越える長さで綺麗に切り揃えられていた。

 顔は美形だが、額に見える赤い複眼が確かな異形を感じさせる……。


 そして最も顕著な特徴──女性の下半身は巨大蜘蛛の頭部に当たる位置に融合しているのだ。半人半蜘蛛とでも呼称すべきその姿からは、今まで隠していた魔力が立ち上っているのを感じる。


(ヤベェ……。こりゃ不味いぞ?)


 ライは焦りを顔には出さないが、相手の強さを感じ取り思考を稼働させ続けていた。

 確かに魔力では退けを取っていないかもしれない……しかし、目の前の魔人はあまりに技量が高いのだ。


「生意気な小童魔人め……こちらが下手に出ていれば調子に乗って……終いにはアタシを蜘蛛だとぉ?」

「……それは失礼。俺はアンタの名前を知らないからな。何せ『テンゼン』としか会話してないんだ。それとも何?アンタ、テンゼンて言うの?」

「フフ……アハハハハ!これは迂闊だったわ。そう……確かに名乗りがまだだったわね。私の名はヤシュロ。ディルナーチ大陸を支配する魔人、ヤシュロよ。覚えて……いる必要は無いわ。私を蜘蛛と呼んだ者は例外なく殺すことにしているから」


 ヤシュロと名乗った蜘蛛型魔人は余裕の笑みを浮かべている。ライの力を一部見ている筈だが、焦りは微塵も見当たらない。


「ディルナーチを支配、ねぇ……。随分と大きく出たな」

「ただの事実よ。私は三百年ディルナーチ大陸にいるけど、単体で私より強い相手に出会ったことはないわ」

「三百年……魔王の時代じゃねぇか。知り合いだったのか?」

「知り合い?私はかつての魔王エイルの腹心よ」

「魔王軍の幹部の生き残りかよ……」


 三百年前の魔王・エイルには数人の魔人幹部がいたと伝わっている。詳細な顛末は残されていないが、それ以降確認されていない為に勇者バベルの手で滅ぼされたと考えられていた。


「他にも幹部って生き残っているのか?」

「フン……どうかしらね?皆、バベルやその仲間に滅ぼされたと思うわよ。アタシは辛うじてこの大陸に逃れ助かった。思い出すのも忌ま忌ましい……」

「三百年前じゃ【黄泉人】に出会した筈だ。それはどうした?」

「ああ……あれ?あれはアタシがやったのよ。この国を弱体化させる為にね?」

「……何?」


 ディルナーチ大陸を滅ぼしかけたとライドウが語った【黄泉人】。それがヤシュロと名乗る蜘蛛型魔人の仕業などということは、当然久遠国の人間には知る由もない。


「嘘じゃないわよ。私がこの大陸に根付くには邪魔なものが幾つもあった。当時の久遠国王【ラカン】は厄介な奴でね。アイツ、先祖返りだったのよ。それにラカンの元に来るネコ……大聖霊が一番厄介だった。あの馬鹿ネコ……私を見るといきなり攻撃を始めて……危うく殺されかけたわ」

「……………」


 昔のメトラペトラを知らないが、何となくその光景が見えた気がした。


「それに聖獣使い……。高い魔力を使うのが気に入らなかった。それにあの顔……見下しやがって、クソ女」

「だから【黄泉人】にしたのか……」

「そうよ。あの女の身内を皆殺しにして、アタシへの憎しみを高めてからゆっくりとね。案外簡単だったわよ?」


 三百年前のディルナーチの真実。この話を今のエイルが聞いたらどう思うだろうか……などという考えが過る。

 ライのそんな心中など知らぬヤシュロは話を続けた。


「それからは予定通りだった。黄泉人が暴れ久遠国は疲弊し、ラカンと対峙している隙に一番弱体化していた嘉神に潜む。メトラペトラはどういう訳か二度と現れなかったけど、寧ろ好都合だったわよ」

「ラカンも疲弊していたなら、そのまま久遠国を奪えば良かったじゃないか。何故やらなかった?」

「……あの女が来たからよ。勇者バベルの仲間。女勇者がね」


 ペトランズ大陸から渡ってきた女勇者。王達と共に【黄泉人】を倒し、再び去っていったという存在。ライドウの話ではそう記されていたとされる。だが……。


「あの女がラカンと結ばれなければ久遠国はもっと早くアタシのものだったのに……忌ま忌ましい」

「ちょっと待て。女勇者は帰ったんじゃないのか?」

「……ラカンと結ばれて産まれた子が今の国王の血筋よ。女はそのままディルナーチ大陸で生涯を閉じた。それが何か?」


 では、何故帰ったことになっていたのだろう……。こればかりは確認しようが無い。


「ともかく、準備を重ねてようやく行動を始めようとしたら貴方達が現れた。正直、これ以上居られても邪魔なだけ。それに……アタシを蜘蛛と呼んだ罪を償って貰わないとね?」


 ヤシュロが軽く袖を振ると無数の極細の糸がライに襲い掛かる。纏装により直撃は避けているが、勢いのまま背後に飛ばされた。


 だが背後から襲ったのは同様の糸。既に部屋中に張り巡らされている様だ。


(クソッ……いつの間に……)


「流石は大聖霊と共に在る者かしらね?監視している間に得体の知れない力を見たけど、あれ何?」

「得体の知れない力?」

「あの肌が黒くなるヤツよ……」

「何の話をしているのかサッパリだよ」

「そう……残念」


 リンドウとシギに対し見せた全力。一瞬過ぎて自分の姿を確認していないライには何の話か理解できないのは当然である。


「じゃあ、もう話は終わりよ。大聖霊が厄介だけど、三百年力を溜めた今のアタシならどうとでもなる筈。そうねぇ……貴方の死体を利用すれば殺すのも一興かしら?」

「ハハッ……させる訳無ぇだろ。この化け蜘蛛」

「こ、この餓鬼がぁ!?」




 嘉神の城・鹿雲城の天守にて、魔人同士の戦いが始まる……。



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