第二部 第四章 第九話 積日の中で
エイル・バニンズは、長らく『自分』というものが分からなくなっていた……。
兄を失う前の自分は臆病で、兄を失ってからの自分は苛烈。そして、【魔人の禁忌】に手を出してからの自分は梟雄にして狂態──。最後にはそのどれもが入り雑じり、心の
それからは……まるで白昼夢に囚われたように心を置き去りにして、暴威を振るう自分をただ眺めていた。
そんなある日……赤髪の男が現れた。様々な言葉を語り掛けて来たがエイルは殆ど覚えていない。そんな中で一つ、明確に届いた言葉があった。
『止まれないなら止めてやるよ』
エイルはその言葉に答えることは出来なかったが、赤髪の男はエイルの心を汲み取ったようにその暴走を阻み、世界の『外』へと追い出した……。
感謝の反面、邪魔をされた怒りや憎しみが渦巻き、やがて負の感情一色となる中を眠りに堕ちることとなる。
それからの日々は、肉体の時間が止まった中で精神のみが彷徨い続ける。夢の中、不確かな自分同士で語り合っていた……。
【白い自分】、【灰色の自分】、そして【黒い自分】──。
『もう嫌……もう終わりにしたい……』
『兄さんの仇を討つまで諦めない!』
『憎い……全てが……全てを……根絶やしに!』
語り合いは平行線。しかし、平行線ならば【黒い自分】が優勢を誇る。結局、内側から湧き上がる『黒』に抗うことは出来なかった──。
自分の手は既に血塗られている……。罪の意識を持ちながらも老若男女その全てに手を掛けてしまった。もう戻ることは出来ない。もう……赦されることはない。【黒い自分】のそんな言葉が、エイルの心を更に黒く……黒く染めて行った……。
変化が起きたのは三百年が過ぎた頃……。エイルにとっては永遠にも感じ得る時間……変わらず【黒い自分】が形勢を握る中───突如として世界に解き放たれることとなる。
其処にいたのは赤髪の……エイルを封じた赤髪の男とは似ても似つかない、幼さの残る顔をした青年だった。
青年は【黒い自分】との問答の末に戦うことになったが、その存在がとにかく変わっていた。
世界の理とも言われる人間嫌いの大聖霊と共にあり、どこか真剣さに欠けていて、それでいながら他者の労りを忘れていない。そんな青年に【黒い自分】がやけに疼き暴れた──。
戦いが始まれば、青年は確かに強かった。しかし、脅威という程ではなかった気がする。
いや……そもそも脅威と認識させる程の殺気を向けていないのだ。そんな青年の中に何かを察した【白い自分】が、助けを求め足掻き始めた。そして同時に、心の中に沈んでいた『兄』が甦る。
【白い自分】はそれから『兄』を求め足掻き続けた。【黒い自分】がそれを抑えようとするが、【白い自分】は『兄』を求める心を手離さない。赤髪の青年が『兄』を求める自分を揺さぶり続け、【白い自分】は益々勢い付く。そして……『本物の兄』が現れた。
ずっと求め続けた『兄』……。心は共にあることを告げた『兄』が、エイルの幸せを願い優しく包む。その温もりで【白い自分】は力を増し続け、黒い自分と縺れ合った末に溶けて混じった。そして残った【灰色の自分】は、もう一つの灰色であるそれら全てを取り込んだ……。
残された【灰色の自分】は、不思議と『黒』が湧き上がることは無くなり、寧ろ『白』が湧き上がる感覚に包まれる。『白』は少しづつ膨らみ灰色を薄めるが、【灰色の自分】は決して白には戻れないことを知っていた……。
それでも……【灰色の自分】……『レフ族のエイル・バニンズ』は、これまでにない満たされた感覚を感じ始めていた……。
焚き火の爆ぜる音で覚醒を促されたエイルは、重い目蓋をゆっくりと開く。
辺りは既に闇夜。焚き火の灯りが仄かに暖かく、安心を与えてくれている様だった。
(あたしは一体……確か海の上で……)
不快感はない。寧ろ本当に久々の、心地の良い目覚めを感じている。
微かな記憶を辿りながら周囲を改めて確認すると、炎の向こう側に照らされる人影に気付く。どうやら誰かがエイルを見守ってくれていたらしい。
身体を起こし改めて顔を確認しようとしたその時……その異常な光景に気付き固まった。
其処に居たのはエイルと戦ったあの青年──『勇者ライ』である。
但し、一人ではない。人数にして八人……その全員が同じ顔で座っているのだ。
その目は死んだ魚の様に虚ろで、魂が抜けたような呆けた顔……。中にはヨダレやら鼻水やら垂れ流し、渇いた笑いを繰り返している者もいる。焚き火の灯りはそれらをより妖しく浮かび上がらせていた。
まさにホラーと言えよう……。
「う……うわぁぁ~っ!!」
エイルの目は完全に覚めた。その光景のあまりの気持ち悪さに座ったまま高速で後ずさる。そして、勢いそのままに背中が何かに接触して止まった。
確認しようと視線を背中に向けると、そこには……やはりライの顔が……。
「うわぁぁっ!こんの……変態野郎が!!」
「なぐぇぇ!!」
恐怖のあまり拳を振るったエイル。見事にライの顔に直撃し、『妖しい勇者』は暗闇の彼方に消えていった。そのしばし後、遠くで盛大に水に落ちる音がする……。
「ハァハァ……」
「起きたか?エイル・バニンズよ……」
「……あぁ?メトラペトラか?」
「随分な仕打ちじゃのう……アヤツは一応恩人じゃろうに」
「は?何の話だよ、一体……?」
以前のエイルならば常に苛々した感覚が付き纏い会話ですらも棘があった。しかし現在、その不快な感覚が無いことにエイルは気付かない。
「………お主、自分の変化に気付かんか?」
「……だから何の話だってんだよ?」
「以前のお主はそんなに友好的じゃったか?と聞いておるんじゃがな?」
「…………」
「今のお主は不安定な暴君ではなく、安定した“エイル・バニンズ”じゃ。その意味はわかるな?」
「…………え?」
「……鈍い奴じゃのぉ、お主も」
肩を竦めヤレヤレと首を振る大聖霊ニャンコ。エイルはそこでハッと思い出した。
「そ、そんなことよりアレは何なんだよ!何でアイツが何人もいるんだ?」
エイルが指差す先には、今だライの分身達が呆然と火を見つめている。しかも時折“フヒヒ……”という笑い声まで聞こえる……。
「ん?ワシには何も見えんがの……?」
「う、嘘吐くんじゃねぇぞ、コノヤロウ!アレだ、アレ!!お前の弟子らしき同じ顔した連中だよ!!」
「はて?……ワシには炊き火しか見えんが……」
ワナワナと震える魔王様。恐る恐る炊き火の方を振り返ると、暗闇の中から怪しい声が……。まるで怪談を語る巷談師の様な口調だ。
『その時、浜辺に座る男達を見た女は恐るべきものを目の当たりにした……。何と!男の一人が突如として消えたのだ』
すると……ライの分身の一人がガクガクと痙攣したかと思えば、スゥ~ッと姿が薄れ青い炎を一瞬燃やし完全に消え去った……。
「お、おおおぉ?お、おい!ア、アレ!消えたぞ!見てたろ?なぁ?見てたよな?それに変な声も……」
「声じゃと?知らんわ、そんなものは……」
「知らないじゃねぇよ!ホラ!あそこだって……」
『周りに尋ねても怪訝な顔で相手にされず、女は再び男達を見た。すると、またしても男が消える……。但し今度は、二人、三人と消え、最後に一人を残すのみとなった……』
すると再びライの分身がガクガクと痙攣を始める。今度は手前から順に痙攣を始め、同じ順にて薄れ一瞬の炎を上げて消えてゆく。
「おぉい!ふ、ふふ、ふっざけんなよ、なぁ?あたしはこういうオバ…有り得ないものが嫌いなんだよ!!」
「先刻から何を騒いどるんじゃ……うるさい奴じゃのぅ」
「ニャン公!ホラ!アレだってアレ!居るだろ?」
「……ワシをからかっとるのか?いい加減にせんか!」
「ちっ、チックショ~ッ!おい!ライとかいう奴!いい加減にしねぇとマジでぶっ飛ばすぞ!」
『女は慌てた。誰も気付かない、誰も信じてくれない。だが現実に、女の目には其処に男の姿が映っているのだ……。そして最後に残った男は、ゆっくりと女に顔を向ける……。女を指差し、呻くような声でこう囁いた。うしろ……と』
エイルは涙を浮かべながらも、背後に広がる闇に視線を向けた。しかし……其処には何も無い。
安心して再び男に向き直ると、男はいつの間にかエイルのすぐ傍に移動していた……。
引き攣った顔で硬直するエイル──男は絞り出すような声でエイルを指差す。
「は、犯……人は……お、お……ま……」
魔王様の恐怖は既に限界間近……しかし、目を離すことが出来ないのは人の性ゆえか……。
そして遂に……トドメの言葉が──。
「……お、ま…え…のオッパイだぁ~!!!」
「いぎゃぁぁぁ~!!!」
魔王様は恐怖のあまりそのまま意識を失った……。
「ニャハハハハ!見事に気絶したのぉ……」
シラフなのに悪ノリしているニャンコは、とても満足気だ。
「師匠……ちょっとばかりやり過ぎじゃないっすか?」
対してライは、手伝うには手伝ったが珍しく乗り気ではない。
「良いんじゃよ、これくらいでの?こんな状態でも暴走が無かったんじゃ。調整は成功じゃろう」
「………これから大丈夫ですかね?罪の意識に潰されたり、改めて復讐心に目覚めたり……」
「さての……。それは此奴自身が決めることよ。ただ、精神……心は安定しておる筈じゃから、自害や特攻は有り得んと思うがの?」
「そうですか……そうですね」
意識の無いエイルを抱き上げ再び寝床に戻す。改めて触れると、見た目より軽くかなり華奢な体格に感じた。
「それにしても『お前のオッパイだ』は無いじゃろ……」
「いや……犯人は間違いなくあのオッパイですよ。俺の心を惑わす憎い奴……何とまあ、けしからん」
「まあ、初見が全裸じゃったからの……お主には刺激が強すぎたのぅ」
色仕掛けにガッチリ嵌まる漢・ライ。ある意味最大の弱点ではなかろうか……?
「細かいことは明日改めて話すとしよう。じゃが一つだけ決めておかねばならんことがある」
「急ぎってことですか?」
「うむ。魔剣・【獅子吼】のことじゃよ。あれはバベルの剣……魔王を封印する際の楔として使ったんじゃろう。それに適した剣じゃったからのぅ。しかし今、所有者はいない。あのままじゃマズイんじゃよ」
「何ですか、マズイって?」
砂に突き立てられたままの黒剣は、焚き火の揺めきに照され脈打っている様にも見える……。
「獅子吼は黒竜を封じた、というか変化させた剣での?謂わば生きたドラゴンそのものじゃ。剣になった今でも意思を持ち食事もする」
「………そりゃまた、ぶっ飛んだ剣だということはわかりましたよ。それで?」
「問題は食事じゃ……。これは魔力食いでのぉ…今はまだ魔王から食っていた魔力があるが、それが切れたら辺り構わず魔力を食い出す。最悪、大地が枯れる」
「………。何でそんなアホな代物をご先祖が持ってるんですか?」
「アヤツが造ったからじゃな。あのアホ勇者、誰彼構わず喧嘩吹っ掛けてはボコボコにしておったからの……ある時、生意気な黒竜を半殺しにしてそのまま剣にしたと自慢してたのを覚えておるわ」
ライの中で『伝説の勇者』のイメージが音を立てて壊れ落ちた。考えてみれば、【破壊者】とか言っちゃっていたのだ。まともな訳がない……。
「………で、どうしろと?」
「お主が所有者になれ」
「…………」
「どうした?強い武器じゃぞ?しかも神具じゃ。願ったり叶ったりじゃろ?」
「どーも怪しいですね……」
「な、何がじゃ?」
「……別に急ぐ必要無いんじゃないかと」
「ライよ……今日も満天の星空じゃ。些細なことなどどうでも良くならんかぇ?」
猫故に“フヒュー、フヒュー”と鳴らない口笛を吹きながら顔を逸らす大聖霊。明らかに態度がおかしい。
「………先刻、エイルに仕掛けた小芝居。全部メトラ師匠の仕業だってバラしますよ?」
「所有者を決めねば、あの剣は勝手に動くんじゃよ。飛んで回って所有者を見付け相手を乗っ取る」
「……………」
「……………」
ライはメトラペトラを素早く捕らえ全身をなで回した。勿論、ポイントを的確に攻める。
「あぁ~っ、だ、駄目ぇ~!」
「フッフッフ……今日は特別に念入りにしてあげましょう」
「あぁん!アタイ……おかしくなっちゃう~っ?」
傍目から見れば充分に頭がおかしく見える……。
そしてグッタリとなった大聖霊様は、観念したらしく説明を始めた。
「あ、アレは所有者を選ぶのよ……選ぶんじゃよ。放置すると片っ端から寄生を始める。特に魔力の高い者が好きでの……」
「人間には面倒ですけど、メトラ師匠は困る理由としてはおかしくないですか?」
「ところがこの剣、しつこいんじゃ。一度見初めた相手をしつこく追い回す。所有者が決まらん限り、の?この島には獲物が四つも居るんじゃぞ?」
ライやエイルは勿論ながら、メトラペトラやリルも莫大な魔力持ち。当然、既に目を付けられている筈だ。
「それはまた……何とも傍迷惑な……」
「じゃから、一番有用に使えそうなお主を所有者にと思ったまでじゃ」
「……自分が目を付けられたかも知れないから、俺に持主になれ!ってんですね?」
「そ、そんなこと無いニョ?」
「ニョ!ニョって何ですかニョ?」
メトラペトラを揺さぶるライ。メトラペトラは猫なのに白眼を剥いて力無く揺さぶられている……とてもシュールで普通に怖い。
そんな時、突然ライの腹部を貫く様な一撃が襲った!
「アハハ!ライ!ドカーン!」
「グニョーォォォッ!!!」
メトラペトラを瞬時に手離し吹っ飛んだライは岩場に激突。胸元を見れば、そこには偉大な海王様が……。どうやら『寝んねの時間』から復活なされた御様子。
「リ、リルは……少し加減を覚えような?」
「?」
リルの頭を撫でながらライは考える。確かにこの島には魔力持ちばかりだ。こういった場合、結局ライの選ぶ行動は決まっている。
「分かりましたよ。俺が貰います」
「うむ!良く言った!これで安心して眠……ゲフン!世界も一安心じゃな」
「……………」
メトラペトラの指示で獅子吼の柄を握るライ。持主としての宣誓を行う。
「新しい持主は俺だ。宜しく頼……」
言葉の途中でライの意識は途切れた。剣を握り立ったままで動かない。
「ライ!うごかない!」
「これ!じっとしておれ!ライは今、意識の中じゃ。しばらくすれば目を覚ます……筈じゃ」
「?」
リルは不思議そうな顔をしていたが、メトラペトラに従いおとなしく見守っていた……。
ライが気付いた時、そこは暗闇だった。距離感を測るものなど無い、ただただ漆黒の闇の中──。
(また、ここかよ……。まさかバベルなんて出てこないだろうな?)
以前と違うのは、ライは姿を維持していることと足場を感じること。意識の中でありながら違和感無く身体は動かせる。
「……どうせお前が引き込んだんだろ?勿体つけないで出てきたらどうだ?」
呆れるようなライの言葉と同時に周囲には篝火が灯る。そして正面から現れたのは黒きドラゴン……魔剣・獅子吼そのものである黒竜だ。
「クックック……貴様が新しい持主だと?小童めが……認めて欲しくば力を示せ」
「具体的には……?」
「そうだな……先ずは我に一撃を入れられれガァァァ!!」
言葉の途中で黒竜の頭付近まで飛び込んだライは、容赦なく拳を振るう。どうやら纏装も使用可能な様である。
「痛い!……き、貴様!最後まで話を聞かんか!!」
「スンマセン……黒竜様ならてっきり油断などしてないものかと……。あ?もしかして、試す為にわざと隙を見せたんですね?流石です!」
「むっ?ほ、ほほぅ……よくぞ見抜いたな。だが、まだだ!この程度では認めてやれんな」
どうやらコイツもチョロいクチな様である。
「では、一体どうしたら……」
「ワシに魔力を食わせよ。何……さほど難しい話ではない」
すると突然、目の前に大きな壺が現れた。流石は意識の中──何でも有りだ。
「その壺は我が胃袋。それを満たせれば貴様を主と認めてやろう」
「どうやって満たすんです?」
「壺に触れ魔力を流し込むだけで良い」
「了解で~す!」
気軽に答えたライは壺に手を当てると、少しづつ魔力を流し込み始めた。
(馬鹿め……人如きの魔力で胃袋が満ちる訳あるまい。クックッ……乾涸びるまで吸い尽くしてくれるわ! )
黒竜の思惑などライには分からない。しかし──。
(ほう……人にしては中々……む、むむ?結構一杯になりそうな気が……)
更に……。
(間もなく胃袋が満ちる……此奴、まさかそこまでの魔力を)
更に更に……。
(マズイ!胃袋が溢れる!!腹が!)
魔力注入は止まらず、壺から溢れた水の形をした魔力は、徐々に意識空間内を満たし始めた。ご丁寧に篝火が“ジュッ”と音を立て、既に黒竜も半分ほど魔力の水に浸っている。
「もうヤメテぇ!!!」
「遠慮は要らないっすよ?ほうら、たぁんと食え!」
「わかった!!我の負……」
「お見それしました!!」
魔力注入を止めたライは、黒竜が敗北宣言する前に突然土下座を始めた。魔力の水に沈む姿がこれまた奇っ怪だ……。
「な、なんだ突然……」
「まさかこれ程の魔力を受け入れるとは……流石は黒竜様。私などが所有者に相応しいかは分かりませんが、どうか舎弟としてお力添え願えれば、と」
「………う、うむ!その心意気や良し!良かろう!我が舎弟として力を貸してしんぜよう」
「有り難き幸せ」
黒竜は何とか体面を守りつつ持主を得たことを喜んでいる様だ。対してライは、狙い通り面倒な遺恨を残さず持主になった。
実のところライは、黒竜が扱い易いタイプであることを見抜いている。プライドの高いドラゴン……普通なら最初の不意打ちに激怒する筈。しかし、高慢な態度を維持しながらも我慢したということは寂しがり屋の『かまってちゃん』と予測。この手の輩は持ち上げれば自分が損してでも期待に応える。要はチョロいのだ。
「で、黒竜のアニキのお名前は?」
「あ、アニキ?う、うむ!我が名はフィアアンフだ!貴様の名を聞こう!」
「ライ・フェンリーヴと申します。じゃあフィア兄ィ!今後とも宜しく!」
「うむ!任せよ!」
意識が身体に戻り“ハッ!”と目を開けたライ……黒剣を握るその顔は、いつもの如く悪い笑顔だ。
「…………お主、悪い顔しとるぞ?何かやらかしおったな?」
「……ハッハッハ、滅相もない」
「本当かのぉ…?まあ良いわ。それで、これからどうするつもりじゃ?」
「それは明日にしましょう。流石に眠いっす」
対魔王戦は予想以上に疲労した……。それも当然である。『分身体』を操り魔法まで行使するには脳をフル活動させねばならないのだ。
「じゃあ、お休みなさい。師匠、アニキ」
「うむ……良く休め。……ん?アニキ?」
メトラペトラの疑問に答える間もなくライは眠りに落ちた。
その夜──『寝んねの時間』のせいで昼夜が逆転したリルがはしゃぎ回り、ライが久々の寝不足となったのは余談としておくべきだろう……。
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