第二部 第一章 第五話 新たな大聖霊
フローラを抱え奈落へと落ちて行くライは、現状打破を考える。
この先の深さ次第では二人とも助からない。特に問題になるのは空気や食料……暗き洞の危険性は父・ロイから聞いていた…、。
「稀にだが洞穴などの地下深くは空気が無いことがあるんだ。湿度が高すぎると呼吸出来ないし、火も着かない。毒性のガスなんかもある。そんな中、明かりも無いと足元も覚束ない。食糧がなければ体力も減る。だから最低でも対応能力のある魔法使いと非常食が必要だ。いやぁ……父さん、最高のパートナーがいて良かったよ。美人だし料理は美味いし……フフッ!よぉし、今夜も寝かさな……ガハッ!か、母さん?グーは痛いよ?」
「子供の前で何言ってんの!教育に悪いでしょ!」
「愛し合うことを伝えて何が悪いか!この子らは愛の結晶だぞ!」
「……もう……馬鹿ね」
桃色の雰囲気に包まれる両親。兄は呆れて訓練に出掛けた。そんな懐かしい記憶が甦る……。
ライ、未だ落下中───。
「とにかく一度、止まらないとな。……フローラ。空飛ぶ魔法って使えない?」
「飛翔魔法ですか?使えないことはありませんが、二人は支えられませんよ?」
「じゃあ、フローラだけでも……」
「いえ……魔力調整が乱されるこの場所では恐らく飛翔も無理かと……。せいぜい落下を止めるか減速させることしか出来ないと思います」
《飛翔魔法》は世界で唯一通常使用されている【神格魔法】である。
下位重力魔法……つまり時空間魔法に分類されるそれは、神格魔法自体が喪失したことになっている為に独立した魔法として呼称されていた。
その飛翔魔法も扱いが難しく使い手は限定される。それでも魔法王国の末裔たるフローラならば使用出来るだろうと踏んだのだが、結局魔力を奪うというこの場所では使用は難しいそうだ。
「じゃあ仕方ない。岩壁まで移動して減速しよう。フローラ、しっかり掴まっててね?」
「はい……すみません」
「フローラのせいじゃないさ。気にすんな」
自然と奪われる為に残り少ない魔力。何とか風魔法を絞り出し岩壁側に落下軌道を変えると、ライは命纏装を展開した手で岩壁を掴んだ。
岩壁を崩しながら何とか減速しているので落下の衝撃が強くフローラを守るようにしっかりと抱える。やがて岩壁深く腕が食い込み停止に成功……二人は安堵の溜め息を漏した……。
不思議なことに、こんな地下深くでも視界は薄っすらと確保されている。どうやら魔石が下方から光を放っている様で、下に行くほど明るさが増していた。
「何だ……もう少しで底だったのか……危なかった!いや本当にヤバかったね?」
流石の纏装でも直接叩き付けられたら大ダメージだったろう落下速度。かなりの時間落下していた気がする。タイミング的に助かったのは相変わらずの運の良さだ。
「この辺、暗くて足場も見当たらないから一回下りるけど良い?」
「私は足手纏いですからお任せするしか出来ません」
「いや……頼りにしてるよ?俺より魔法得意だろうし。でも必要な時以外は温存しといてね?」
「はい」
実のところ魔力が奪われる場所である為に『温存』は期待出来ない。ライがそれを言葉にしたのは足手纏いを気にするフローラへの配慮だ。
ライはそのまま岩に食い込んだ手を引き抜くと底まで一気に落下した。衝撃を覚悟していた着地の瞬間、フローラが風魔法で減速を掛けライはふわりと足を着けた。
「おぉ~!流石は魔法王国の末裔。頼りになる」
「そんな……」
「さて……それじゃ現状確認といこうかね?」
地の底たる其処は幻想的な光景だった──。
魔石が至るところで光を放ち、性質の違いで様々な色が辺りを照している。それ以外はただの岩壁なのだろうが、まるで彩りを写す絵画の様にすら見えた。
ライとフローラはそんな光景にしばらく惚けていたが、早く脱出を考えねばならないと我に返る。
「呼吸は……出来るか。まぁ風もあるから外気が何処からか流れてるんだな」
「はい。それに多分これも……」
フローラの指差した先には苔が群生していた。鮮やかな魔石の光で見辛いが、良く見ればかなりの苔が発生している。
「湿度も温度もありますから発生したのかも知れませんね。もしかすると魔石の影響も……」
「毒のガスとかも無い様だし、ともかく助かった。あとは食料なんだけどなぁ……」
「魔石を灯りにして探索すれば何かあるかも知れませんよ?」
「そうだな……よし」
白い光の魔石を二欠けほど命纏装で壁から抉り取る。それを互いに一つづつ所持し探索を始めた二人……魔石の影響か洞穴内があまり寒くないことは有り難いことだった。
最初に落ちた場所付近は行き止りになっていたが、一部からは横穴が続いている。魔物が居ないと確信出来ない為にフローラを背負って歩くライ。初めは照れていたフローラだが事情を理解し大人しく背負われている。
「フローラ。魔力切れの頭痛は大丈夫か?」
「はい。まだ何とか……」
「折角だから何か話そうか……そういやレフ族はどういう生活してるんだ?」
「『死の大地』に結界を張って暮らしています。外敵は防げますが、大地が枯れてしまっていて……その再生を試みながら少ない食糧で暮らしています」
「う~ん……大地が枯れてるのを再生しながら、か。何でそんな枯れちまったのかねぇ」
「以前お話しした禁忌魔法の影響です。《魔人転生》は周囲の魔力を人体に凝縮する魔法。緑豊かな森が一夜で枯れたと聞いています」
「じゃあ『枯れた大地』ってのはある意味魔王のせいじゃ…」
「そう……ですね。本来は緑の森でしたから食料は豊富でした」
「迷惑大魔王……いや、大迷惑魔人かな?」
その言葉でフローラは吹き出した。笑いを堪えているらしく小刻みに震えている。
「あ……可笑しかった?」
「はい……それにライさんはこんな状況でも動じないので、つい安心してしまいました」
「う~ん……何かもう、いつもの事かなってさ?知り合いの騎士団長……フリオさんていう人なんだけど、俺の事『トラブル大魔王』って言うんだよ?こっちも巻き込まれてるのにさ?」
しかし、自分から首を突っ込んでいることは語らない辺りトラブル体質は自覚はしている様である。
「でも、何だかんだと生きてるから運だけは良いらしいよ。だから二人とも無事に帰れるさ」
「はい。期待しています」
横穴はうねりながらしばらく続き、時間が経つにつれ現実感の無い光の迷路にいる気分に……。
しかしそんな時……通路の先に特に明るい光が洞穴を照らす場所が見えてきた。
二人が辿り着いたその場所は、それまでの洞穴の様なゴツゴツとした岩肌ではなく綺麗に抉られた半球体の部屋になっていた。部屋の中は眩いほどに明るい。所々に巨大な尖った岩が突き出し、それが煌々と輝いているのだ。
「……フローラ。これ、自然物って感じがしないんだけど?」
「はい……私もそう思います。しかし、何故こんな場所が……」
部屋を観察すると半球体の空間の壁に紋様なものがビッシリと書かれていることが分かる。初めは染みに見えたそれは、ほぼ隙間なく部屋全面に広がっているのだ。
「これ……神代文字ですね。封印術式……しかもかなり古い型の」
「分かるの?封印か……そういや見たことある文字だな」
ライは自らの記憶を探り類似した文字を思い出す。ディコンズ付近の森の洞穴……文字は似ているがあれは封印ではなかった。となればフェルミナを開放した湖の底……。
「大聖霊の封印?こんな所に?」
ライが漏らしたその呟きに応えた者がいた。
フローラではない別の誰か……こんな場所に無事に訪れる者などそうそう居ない筈なのだが、放たれた言葉でライはその存在を確信する。
「こんな場所に来る物好きは誰じゃ。それに大聖霊を知る者とはのぅ……。顔を見せい」
「やっぱりか!アンタは何の大聖霊だ?」
「礼儀のなってない若僧め!先ずは顔を見せんかっ!こっちは寝る以外楽しみが少ないんじゃぞ?」
「スミマセン……」
その声……女性の声がするのは部屋の中央に位置する場所。巨大な光る岩で囲まれ見えなくなっているが、ライとフローラはなんとか隙間を見付け中を覗く。
そこには……首に鈴を付けた一匹の黒い獣が鎮座していた。
「……ネコ?」
「……ネコですね」
「ネコネコうるさいわっ!理を司る存在に向かって失礼じゃぞ!!」
「でも、ネコなんでしょ?」
「……ネコじゃよ?だって生まれてずっとネコじゃもん。悪いか?悪いのか?ん?」
「いえ……その……ス、スミマセンでした」
フェルミナと違い態度が大きく、かつ面倒な性格らしい大聖霊。このまま放置して帰ろうか真剣に悩むライ。しかし、フェルミナを想えば助けるべきだろうと結論付ける。
「それで……あなたは一体……?」
「フフン!聞いて驚くが良い!我が名はメトラペトラ。【熱】を司る大聖霊なり!」
「分かりました。それでですね?」
「待てぇい!何じゃ!何でアッサリ流すんじゃ!大聖霊じゃぞ?この世界の四元の一柱じゃぞ? な……何じゃ、その可哀相なものを見る目は!止めんか馬鹿者!」
喋る黒ネコがプリプリと怒る様は実にシュールだった。それにしてもテンションが高いのは寂しさから解放されたからなのかが気になるところだ。
「え~……ともかくですね?大聖霊様を解放した方が宜しいですかね?」
「か、解放してくれるのかぇ?いや……うむ、解放させてしんぜよう。善きに計らえ」
「……やっぱり帰ろうかな」
「ま、待て!その……何だ。ワシも態度が大きくて悪かった。解放してくれるなら相応の礼をしよう」
「じゃあ下僕」
「な、何……?」
「下僕になるなら解放しようか?」
久々に悪い顔をしているライ。フローラはそれが本気ではないと気付き隠れて笑っている。
「フ、フン。ならば帰れ!ワシは束縛されるのが死ぬより嫌いじゃ。貴様などに従うつもりはない」
「多分、もう二度と人は来ませんよ?」
「構わん!去れ!!」
ここ一番で気概を見せたメトラペトラ。ライは態度を改めた。
「失礼しました。大聖霊様の気高さ感服いたしました。実は私も大聖霊に知り合いがいるのですが、皆様を心配していたのです。解放はその者の願い。是非とも協力させて頂きます」
「な、何じゃ急に……まあ良い。殊勝な心掛けである。で、その大聖霊とは?」
「はい。【命】を司る大聖霊・フェルミナです。これがその証し」
ライは胸元を開きフェルミナの紋章を見せた。驚いたのはメトラペトラである。
「そ、それは契約か?しかも主従契約ではないか!何故……」
「そ、それは成り行きでですよ。私はフェルミナを一度も下僕として扱ったことはありませんよ?今は私の家族とシウト国で穏やかに暮らしている筈です」
「……お主、今さっき下僕になれと言わんかったかえ?」
「それは、あなたを試させて頂いたのです。決して『態度がデカイ猫が気に入らなかった』とか『コイツ面倒だから下僕で良いか』とか思った訳じゃないですよ?」
「……………」
心の声を自ら漏らす残念勇者。しかし、その顔は爽やかそのものだ。本音か冗談かメトラペトラには判断が付かないだろう。
「……ま、まあ良い。解放して貰えればそれでの。封印は上の鎖を壊して中央の輪を外せば良い。頼んだぞよ」
ライは早速纏装を使う、つもりだったのだが発動しない。魔力の霧散で疲労が限界に達したのである。
「スンマセン……少し休んでからで良いっすか?」
「情けない奴め……構わんぞよ。まあ今さら時間など気にせんわ」
「だってここ、魔力奪われるんですよ?それに腹も減ってますから……」
最下層だけあり魔力の減りがかなり早い。食事も摂れないのは回復に影響が出る。それを見越したメトラペトラは一つライに指導を始めた。
「良く聞け。まずは魔力回復からじゃ。ただ瞑想するのではなく胸の『命の紋章』に集中しながら瞑想をするのじゃ」
「え?……わ、分かりました」
言われた様に素直に瞑想を始めるライ。胸の紋章に意識を集中。すると通常より倍以上早く魔力回復が起こる。
「うおっ!なんじゃこりゃ!」
「気を抜くな!魔力はすぐに散るぞよ?次は胸の紋章を思い浮かべ地に手を着き、果物の樹木を想像する。出来るだけ鮮明にの?そして一気に魔力を流し込むのじゃ」
「はい!」
メトラペトラの言葉通り魔力を流すと、みるみる林檎の木が成長した。赤い実を付け林檎の木は成長を止めた。
「凄い……」
フローラは流石に驚いていた。しかし真に驚いていたのはそれを為したライ本人である。
「な、何ですかコレ?何でフェルミナと同じことが……」
「大聖霊との契約というのはこういうことじゃ。力を一部とはいえ代行することは事象に関与することに他ならぬ。にしても随分早かったがの……まあ良いから食え」
林檎の実をもぎ取りフローラと二人で食べ始める。ライは少し不満そうな顔をしていた。
「……フェルミナの林檎みたいに甘くない」
「ハハハハハ。まあ、そこが大聖霊と小童の違いじゃな。それにしてもお主、フェルミナと契約した割には少々物知らずではないか?」
「フェルミナは弱っていたんで無理させられなかったんですよ。当然、力の使い方なんて聞けませんし…。それに今の世界は大聖霊という存在自体が認知されてないんです……あれ?そう言えばフローラは知ってるの?」
「はい。レフ族は皆知ってますよ。あと知っているのは竜族と天使ですね。多くの人間は神の不在による【改変】が起きたので知らなくても仕方ありませんが……」
「改変まで知ってるのか……しかしフローラは幼いのに博識だよな」
「何を言っとる。そこな娘はお主の三倍は生きとろう?」
「はい?ほ、本当に?」
申し訳なさそうに首肯くフローラ。ライはガックリと肩を落とす。
「スミマセン、フローラさん。自分、生意気でした……」
「い、いえ。お話ししなかったのが悪いんですから。どうか今までの様にフローラとお呼びください」
「そうじゃぞ、小童。ワシは齢十万年以上じゃ。ワシからすればどちらも子供じゃよ。ハハハハハ」
レフ族は長寿だが精神的な大人扱いされるのは百歳を越えてからだと説明され、ライは渋々納得する。
「さて……腹も膨れたし本格的にやってみるかな」
再び胸の紋章に集中し瞑想を始めるとメトラペトラから待てがかかった。
「先刻は気付かなんだが、お主普段何食っとるんじゃ?」
「え?ここに来てからは不味いパンとすごく不味いスープですけど……」
「他には?何も口に入れておらんか?」
「ん~……あ、魔石を砕いて一緒に」
しばし無言でライの身体を凝視するメトラペトラ。それから今までと違い真面目な口調で忠告を始めた。
「お主、今後はもうそれを止めることじゃ。それ以上やったら間違いなく人で無くなるぞよ?」
「え~っと……それはかなり危険てことですか?」
「うむ。お主のやったことは間接的な【魔人転生】じゃ。既に半分手遅れかも知れんが、今の状態が人としてギリギリじゃな」
「………」
メトラペトラの説明では、取り込んだ魔石が心臓付近に新たな臓器を生み出しているのだという。安定すれば完全な臓器【魔力生産器】として機能するのだと。これが大きすぎる場合、適応するために肉体変化が起こる。それが魔人化だと改めて告げられた。
「そもそも、お主は『人間の魔力』とは何か理解しておるかぇ?」
「いえ……大雑把にしか」
「人の魔力は細胞が生み出す微弱なものじゃ。しかし自然界のものと結び付くと魔法の元になる。自然界の魔力は常に世界に溢れ、植物・動物、無機物とあらゆる種類に関わらず吸収される。人の魔力濃度が増すのはそれを更に取り込むからじゃ」
「それは呼吸や飲食のことですか?」
「そうじゃ。更に皮膚呼吸なども含まれる。じゃから時間で勝手に回復する訳じゃが、では何故魔力に個人差が生まれるのか?それは貯蓄量の差じゃ」
人の細胞に溜め込める魔力量には個人差があるのだとメトラペトラは言った。
「例えばその娘と普通の人間では桶と茶碗程も違う。それは環境や遺伝に左右されるのが基本じゃ。因みに魔力の回復にも差が出る訳じゃが、それは普段からの使用量と回復量の問題じゃな。使って回復した量が多い程吸収が効率化されるのじゃ。基本的な細胞の魔力生産量は変わらないのにのぉ」
要するに魔力を使った量が多いほど魔力吸収が速くなるという話だ。当然、魔術師は吸収が早い。
「じゃが、お主のソレは云わば反則じゃな。細胞の比ではない速度で魔力を生産する臓器であり、魔法に長けた者以上の早さで魔力を吸収する臓器でもある。じゃからこそ、この場所ですら先程の魔力超回復が起こせる。これから益々最適化されるじゃろうから、人ではないと言われても否定は出来んじゃろ?」
「……昔の魔術師の記述を真似たんですが、その人も人外になったんでしょうか?」
「さてのぅ……ただ、本当にやったなら【魔人】になっとるじゃろうな。お主の場合、大聖霊との契約もあるから尚更どうなるかわからん 」
既に人でない可能性、今後人でなくなる可能性、多くの人間はそれに耐えられる精神を持っていない。
メトラペトラはそんな危惧をしつつライの顔を改めて観察している。暴走すれば新たな魔王になりかねないのだ。
だが、そこは我らが勇者ライ。心配など杞憂である。
「魔人化すると意識が消えるんですか?」
「いや……禁術の【魔人転生】の様な強制変化ではなく、お主のは適応進化の様なものじゃからのぅ。今まで大丈夫なら、外見が多少変化するかも知れんが意識は消えん筈じゃ」
「居るだけで迷惑掛けるとかは……?」
「うむ……それもない。寧ろ、お主の近くにいると魔力回復が速くなるじゃろうな……」
しばらく考えたライは頭をボリボリと掻きながらあっさり答えを出す。
「じゃ……別に良いや」
「はぁ?お主、話を聞いとったのかぇ?人じゃなくなる意味を理解しとらんな?」
「だって、フェルミナと結婚したら人外になるって言われてたし……。何か今更な気がして」
「大聖霊と結婚?お主のぉ……」
「いや、フェルミナが言ったんですよ?正確には俺の両親が聞いたんですけどね?それも別に良いかなぁって思ってた訳で……」
メトラペトラは大きな目を更に大きくしてライを見た。そして……。
「ハハハハハ!うむ!面白いの、お主。成る程のぅ……どうやら退屈凌ぎにはなりそうじゃ」
「………?」
「お主と契約してやろう。但し、下僕は無しじゃ。何か考えい」
大聖霊との契約……メトラペトラは博識だ。それに熱を司るなら魔法が確実に強化される。契約して不都合は無いだろう。
「わかりました。じゃあ師弟というのはどうですか?俺、魔法得意じゃないので……」
「うむ、それで良い。光栄に思えよ?ワシが人と契約するのは初めてのことじゃ」
「じゃあ何て呼びます?メトペト先生?大聖霊先生?あ!ニャンコ先生ってのは……」
「却下じゃ~!!」
必死に拒否するメトラペトラ。何故なのか気になり確認するライ。すると少し困った様子で答えた。
「う、うむ……異世界に居るのじゃ。招き猫を依り代にした者が……マズイじゃろ?著作権とかパクリとか……」
「著作権?パクリ?良くわかりませんが……じゃあ、大聖霊と合わせて『大ニャンコ先生』というのは……」
「却下じゃ!!空中六回転する者にそれもおった筈じゃ。あれ?『ニャンコ大先生』だったかの?いや……『大大ニャンコ先生』か?……と、ともかく、危ないから却下!」
色々危ないものを懸命に避ける。それは作者とて同じこと。魔法の言葉。『モメゴト ハ ゴメンダゼ?』
「う~ん……じゃあ猫師匠はどうです?」
「それ、割りと良くあるからのぉ……」
「わがままだなぁ……じゃあメトラ師匠で」
「うむ!妥当!」
こうして大聖霊メトラペトラとライの間に師弟契約が結ばれたのである。
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