第六話 館長はお忙しい?

 さっそく館長のところへ、と思ったもののどこにいるのか全く見当がつかない。仕方がないので先ほどの場所で待つことにした。

 あの体型のわりにというのも失礼だけど、意外とアクティブなところがすごい。


「館長、どこにいるんですかね」

「うーん、多分もうすぐここに来ると思うんだけどなぁ。ここでくつろいでること多いから」

「そうですね。ここかスタッフルームかどちらの場合が多い。最近はそうでもないようですが」


 二人もあきれた様子なのでたぶん館長の性格はずっとあの調子なのだろう。

 でもあの火山の対処方法はわからない。

 福田さんにもなんて言ったらいいのか。


「でも最近館長の様子がおかしいんだよね」

「そうなんですか?」

「だからちょっと内緒で調べてみたけどいまいちその生態は謎のままだ」

「UMAみたいな?」


 そんな雑談をしていると館長がのっそりとやってきた。噂をすればなんとやらというやつだ。

 こちらを見て一瞬驚いたがその後に事情を聞いて地図を開いて「説明してくれよ」と言った。

 館長は終利世山周辺の異変を聞いてもびくともしなかった。


「館長、何が原因ですかね」

「火山というよりその山と風の向きが関係してるんじゃないかな」

「でもそれなら前例があってもいいんじゃないですか」

「それは何とも言えないよね」


 館長の様子がおかしい。

 館長レベルの人なら何か火山に異常があるのではないかと思うのが普通だろう。

 なのになぜ?


 不自然な笑いを浮かべながら館長は地図をじっと眺めていた。


「じゃあとりあえず現場までよろしく頼むよ。何かわかったことがあったらメモしておいてくれよ」

「分かりました。じゃあ三人で行きます」

「優波さんにはちょっと手伝ってほしいことがあったんだけどね」

「すみません館長、優波さんの知識も借りたいので」


 長谷川さんは館長を振り切って急いで部屋を出た。

 どうしてあそこまで焦っていたのだろう。


「長谷川さん、どうしたんですか」

「今の館長は何をするかわからない。もしかしたら闇の実験に協力させられるかも」

「それはないと思いますけど……」


 私たちは長谷川さんの車に乗り、福田さんのもとへ向かった。


 さっきの闇の実験に協力させられるかもと言った時の顔は冗談を言っている顔には見えなかったように思える。


 今は館長の謎だけが頭から離れないままだ。


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