第三話 初日の悲劇
「あの~、探偵って聞いてなかったんですがどういったことでしょうか」
「それについては長い時間が必要とされますのでまあ中で話そうじゃあないですか」
「はっ、はあ」
長谷川さんは混乱している私を誘導し、会議室へと入った。
両サイドにはなんだか難しそうでうっすらとほこりのかかった本がずらーっと並べられ、理科室のような部屋になっていた。
実験器具に大きな黒板、これではまるで実験室。探偵とはかけ離れているような。
「ここは……、実験室ですか?」
「我々はただの探偵ではない。科学探偵だ。依頼を科学の力で華麗に解決し、迷える子羊を助け出すという最強なヒーロー。それには実験も必要」
「そ、そうですか」
長谷川さんの熱意に押されながらも黒板の文字が気になり読んでみる。
遠くからなのでしっかりとは読めないが館長と書いてあるのだけはわかった。一体何を調べていたのだろうか。
「で、何か質問はありますか」
「うーんと、いろいろありすぎて言えないですがそのお仕事はどれくらいの割合でやられてるんでしょうか。というかそもそも私にできますか」
「大丈夫です。最近は依頼が少ないですしそんなに難しい仕事ではありません。人助けになる素晴らしい仕事です」
「ほんとに大丈夫でしょうか……」
難しくないわけがない。
でもちょっと科学探偵って気になるような…。
もう少し理解するのには時間が必要だ。
しばらく中を覗いていると、ドン! と激しい音を立ていきなりドアが開いた。
「大変だっ! 新しい依頼が来たぞっ!」
「えんちゃん、いったい何があったの?」
えんちゃんと呼ばれる人はものすごい血相で中に入ってきた。
”ハァハァ”という荒い息遣いが聞こえる。一体どこから走ってきたのかは知らないが汗がすごい。
「事件だよ、事件」
「どうしたんですか? というかどうも、私は真河優波っていいます」
「どうも、僕は遠藤です。久しぶりの依頼なんだけどちょっと厄介でな」
「聞かせてくれ」
あの、初めて会った第一声が「大変だっ」はなかなかないと思うんですけど。
しかもなんか大変な事件そうじゃないですか!
初日から全然愉快じゃない事件に巻き込まれてしまいそうです。
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