古代都市と科学探偵
第一話 愉快な先輩
しばらく自転車をこぐと大きなドーム型の建物が見えてきた。あれが私の初めての職場だ。
この町は特に何も特徴がないので
科学館に入ると職員たちの集まるスタッフルームがあるのでまずはそこであいさつに行くことに。
ちょっと、いやだいぶ緊張する。
「失礼します。あの、今日からここで働くことになりました真河ですが……」
あれ、ドアを開けるが誰もいないようだ。早く来すぎたわけでもないし、もしかしたら科学館の展示コーナーで準備しているのかもしれない。
とりあえず準備をしなくちゃ。
ドアを閉めようと後ろを振り向いた瞬間、
「おう。優波さん、おはよう」
「おっ、おはようございます」
びっくりしたぁ~。
そこに現れたのは館長の陽原さんだった。大きなおなかと福耳が特徴の人だ。事前に何度かあっている。
「優波さん、今日からよろしくね。うちは男しかいねぇけど大丈夫か?」
「全然大丈夫ですよ。私はここで働きたくて来てますから」
「そうか。今日は先輩と見学だよね」
「でもこないだ見学しましたけど……」
「人がいるといないじゃ違うしね、今日はちょっと特別なところも行ってほしいからからね。もうすぐ来ると思うよ、優波さんの相棒が」
「相棒?」
勝手に話を進める陽原館長に戸惑いつつ急いでかばんを館長から言われた席へ片付ける。
準備万端! だけど館長はどこかへふらっといなくなってしまった。先輩らしき人も来る気配がない。一体どうしたらいいんだろう……。
動きたいけどどうしようもないのでしばらく待つことにした。といってもやることが無さすぎる…。
すると、後ろでドアがすっと静かにあいた。 恐る恐る振り向くと一人の男の人が立っていた。茶色に近い髪ときちっとしたスーツが特徴の人だ。慌ててさっと立つ。
「おはようございます。今日からここで働くことになりました真河優波です。よろしくおねがいします」
「どうも、長谷川祐希です。今日はよろしくお願いします。ところでゆうちゃんとゆうっち、どちらがいいでしょうか?」
「え?」
丁寧な日本語とは裏腹にいきなりすごい質問をしてきたのに驚く。いきなりあだ名を? まさか最初に聞かれた質問がこうなると思っていなかったので返しに困る。
「えっと……」
「長谷川さん、優波さんが困っちゃってますよ」
「あ、ごめんごめん。まずかった?」
「だいぶまずいと思いますよ。優波さんごめんね。ちょっと先輩はムードメーカーなところがあるから」
「そ、そうなんですか」
いきなり現れたのはすらっとした優しい笑顔の男の人だった。入ってきたのは長谷川さんだけかと思ったけどいつの間にきていたのだろうか。
「えっと、ゆうっちでいいですよ」
とりあえず答えておこうと思い言ったが二人とも驚いている。
「おお、なかなかやる新人だ!まさかこの質問に答えてくれるなんてさあ、なかなかないよ」
「そっそうなんですか?」
思ったより固くない人だったのが意外だった。長谷川さんは大笑いしている。
あれ? 私なんか変なこと言ってないよね?
「優波さん、じゃあさっそく見学に行きましょうか。回りながら仕事内容とか詳しく説明するんで」
さっと長谷川さんは切り替えてドアを開ける。なんか温度差が激しい人だなぁ。
「わかりました。そういえばあの……」
「あっ、ぼくですか?」
あとから入ってきたもう一人の名前を聞くのを忘れていた。さすがに聞かないまま行ってしまうのはまずい。それをわかってくれたのか自分から言ってくれた。
「あっ、僕は大波賢太っていいます。よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
「じゃあ俺ら行くから、そっちも頑張ってね」
「はい。じゃあ」
こうして私たちは館内見学へ。
そういえば館長はどこへ行ったんだろう。意外にふらふらしている人だ。あの体型からいうとずっと動かないのかと思っていた。
そして館内はだんだんとにぎやかになっていった。準備も着々と進んでいる。
いよいよ開館です!
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