第21話 腐れ縁
「私に会うため・・・ですか?」
殆どウソだと思う。
でも、こうするしかなかった。
「このAIであるまほは、雄樹さんにとってかけがえのない存在です。
まほも、雄樹さんの事が大好きなんです。
なので、待ち受けにしている女の子・・・つまり瑠奈さんを探してたんです」
「そうですか・・・で、兄はどこに?」
「引っ越していないようなので、家にかければいると思います」
「私が、電話するのですか?」
「もちろんです。雄樹さんも、喜びます」
瑠奈さんは、自分の携帯から、盛田さんの家に電話をした。
「あのう・・・お兄ちゃん・・・私・・・瑠奈・・・
ごめんなさい。ずっと連絡が取れないくて・・・」
ひたすら泣いて謝っていた。
程なくして、盛田さんがこの喫茶店にやってきた。
場所を変えようと思ったが、手間を省きたかったのだ・・・
「瑠奈!」
「お兄ちゃん、会いたかった」
店内で、兄と妹が5年ぶりの再会を果たした。
俺とまほは、それを眺めていた。
「よかったね。一郎」
「ああ」
とても、微笑ましい光景だった。
しばらくして、盛田さんが来た。
「佐藤さん、お世話になりました。何とお礼をいっていいのか・・・」
「いいえ、僕は何もしていません」
「事情は、瑠奈から聞きました。でも、ようやく会えて嬉しかったです」
「よかったですね」
「はい。ありがとうございます」
盛田さんと、瑠奈さんは、何度も頭を下げた。
「あのう、佐藤さん、まほ・・・いいえ真歩のことなんですが・・・」
「もちろん、お返しします」
「ありがとうございます」
俺は盛田さんに、まほを手渡した。
「マスターくん、良かったね。」
「うん、真歩にも、迷惑掛けたね」
「それは、言わないの」
「マスターくん、私、マスターくんのそばにいていいの?」
「もちろんだよ。これからも頼む」
「うん」
盛田さんは、まほを抱きしめた。
「盛田さん」
「何でしょうか?佐藤さん」
「あなたにとって、まほは?」
「大切な、パートナーであり、家族です」
盛田さんの顔に迷いはなかった。
こうして、俺はまほと別れた。
騒がしいAIだったが、別れると悲しいな・・・
俺とまほとは、もう会わないだろう・・・
そのはずだった。
はずだったのだが・・・
数日後、とんでもないことが起こる。
「お兄ちゃん、来て」
まやに呼ばれた。
行ってみると、まやのパソコンにまほが映っていた。
「やあ、一郎、元気」
「まほ?お前どうして?」
「私がいないと、一郎寂しいでしょ?だから、遊びに来た」
「盛田さんは?」
「いるよ。これはテレビ電話みたいなものね」
あのな・・・
「そんなわけで、これからも時々、遊びに来るから、感謝してね。
じゃあ、マスターくんと、瑠奈ちゃんと、デートだから・・・」
切れた・・・
俺はすぐにまやに言った。
「パソコン、買い変えろ」
パソコンに疎い俺は、買い変えても無駄な事を、この時は知らなかった。
最強コンビ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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