第11話 大切な人


「盛田さん、どうして、まほを購入したのですか?」

プライベートには、首をつっこみたくない。

でも、手掛かりとして、必要だった。


「僕を見ていただければ、わかると思いますが、僕はぼっちでした」

「でした?」

「ええ前は、なので友達が欲しかったのです」

「友達・・・ですか?」

「正確には、癒しですね。生きる支えが欲しかったのです」

「それで、まほを?」

「はい。まほのおかげで、僕はとても、変われたと思います」

まほは、静観していたが、泣いているようだった。


「今では、少しですが、友達も出来ました」

「彼女は?」

「いません。それは、まほだけです。」

「まほだけ?」

「ええ。まほに教わったんです。今は同性の友達をたくさん作りなさい。

一生の友達になってくれるから・・・と・・・」

俺は、まほを見た。

ピースサインをしている。


喜怒哀楽の激しい子だ。


「で、本題なんですが・・・」

「はい」

「ダミーとして、使用している女の子、わかりますか?」

「ええ、この子は妹なんです」

まほが、割り込んできた。


「マスターくん、妹いたの?」

「ああ、小さい頃に両親が離婚してね。僕は父に、妹は母に引き取られたんだ」

「そうだったの、マスターくん」


「じゃあ、妹さんの居場所はわかりますね、盛田さん」

「それが、わからないんです」

「わからないんですじか?」

「ええ、5年ほどまえは、内緒で会っていたのですが、突然連絡が取れなくなりまして・・・」

「連絡が?」

「電話番号も知りませんし、住所も知りません。手紙を出しても戻ってきます」

「そうですか・・・」

複雑な方なんだな・・・盛田さん。


「でも、よく妹とわかりましたね」

「それは、兄ですからね。わかります」

血は水よりも濃いか・・・


「失礼ですが、妹さんの名前は?」

「母の旧姓で、佐々木瑠奈と言います。

母が再婚していなければですが・・・」

「結婚とかは・・・ありませんね・・・

「ええ、今は高校1年ですが、早生まれで15歳です」

法律上、結婚できないか・・・


「僕なりに、探しているんですが、まほを落した日も、その途中でした・・・」

まほが、割り込んできた。


「マスターくん」

「まほ?」

「くよくよしない。男の子でしょ!大丈夫、私が探してあげるから」

「でも?」

「お願いします。まほさんは?」

「お願いします。まほさん」

「うん、それでこそ、マスターくん。大好きだよ」

「ありがとう、まほ」

もし結婚したら、盛田さん、尻にしかれるな。

でも、まほとはお似合いかもしれない。


俺なら、即離婚する。


「いくわよ、一郎」

「まほ、どうしたいきなり」

「ほら、早く」

盛田さんは、こちらを見る。


「なら、僕も?」

「マスターくん、私を信じて、絶対に見つけるから」

「まほ?」

「大丈夫、私が好きなのは、マスターくんだけ、一郎は舎弟」

こいつ、まじで叩き壊そうか・・・


「盛田さん」

「はい」

「ここは、僕たちに任せて下さい」

「ですが・・・」

「信じて下さい」

盛田さんは、頷いた。


「わかりました。僕は僕で探してみます」


盛田さんを残して、俺とまほは外へ出た。

「まほ、いいのか?盛田さん」

「うん、マスターくんは、優しすぎるから、私を困らせたくないと思ってくれると思う」

「えっ」

「あの日は、無理を言って、ついてきたの?」

「まほ、俺はやさしくないのか?」

「うん」

この女・・・


「俺と盛田さんと、どっちが大事だ」

「マスターくん」

即答かよ・・・


でも、盛田さんはいい人そうだ。

見つけてあげよう。妹さんを・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る