第7話  AIの恋

「なあ、まほ」

「何?」

「お前は、持ち主の方に捨てられたのか?」

「違うよ。そんな人じゃなかったもん」

「だろうな」

俺は、平然を装う。

カッコつけているわけではないが、高田さんの話を聞くと、

まほの、持ち主の事がわかってきた。


「その人は、男性。俺と同じか少し上。性格はシャイで内気。

良く言えば繊細、悪くいえば打たれ弱い。

自分の殻に閉じこもりがちだが、真は強い」

「すごいよ、一郎、殆ど正解」

「ああ、そういうタイプには、まほのような、積極的な天真爛漫なタイプがいいだろう」

「すごいね一郎。探偵みたい」

いや、誰でもわかるだろう。


「で、どうして持ち主ではなく、待ち受け画面の女の子を探すんだ」

「ごめん・・・今は・・・でも」

「でも?」

「私のマスターくん、持ち主の事なんだけどね。とても私を大切にしてくれた。」

「なら、なんで?」

次のまほの言葉に、俺は耳を疑った。


「実は。家出したの?」

「家出?」

「マスターくんも、私を探していると思う」

「そのマスターの名前は?」

「わからない。ずっとマスターくんって呼んでたから」

「顔は、わからないのか?」

「・・・うん・・・」

ますます、難しくなってきたな。


「そもそも、どうやって家出したんだ?」

「マスターくんが、待ち受けの女の子を、寂しそうに見てて・・・」

「ああ」

「私自ら、ポケットから、落ちたの?」

「気付かなかったのか?そのマスター」

「バスに乗る直前に、落ちたから、その時は気付かなかったと思う」

ややこしくなってきた・・・


「お前をデザインしたのは、作者が趣味で描いたと言ってたな?」

「うん」

「さっき、高田さんは、我が社の社員が描いたって・・・」

「作者さんが私を趣味で描いたのが目にとまり、あの会社にスカウトされたの」

よくある話だな・・・


「よし、行こうか」

「一郎?」

「探したいんだろ?その女の子」

「出来るの?」

「知らん」

「無責任ね」

「うるさい」

「一郎」

「なんだ?」

「ありがとね」

何だか照れくさい。


「まほは、そのマスターの事が好きなのか?」

「うん、大好き」

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