もっちりとしたスライム

「な、なんだこいつらー!」


 イナ大陸から帰って来た次の日の朝、僕が窓を開けると庭一帯になぜかものすごくもちもちしていて、結構大きいスライムが大量発生していた。


「お父さん、どうしたの?!」


 エルが息を切らして廊下から顔を出す。

 エルの部屋は一階だ、多分走って来たんだろう。・・・エル、もうこの歳で異能力を使いこなすのか。


「いや、外になんかもっちりしたスライムが」

「ああ、それならお母さんが朝楽しそうに氷漬けにしたりして討伐してその素材で何か料理作ってるよ」


 ・・・マジかよ、あのスライムたちが今日の朝ごはんになるのか? 

 それにしても、なんで楽しそうに討伐してんだよ。


「二人ともー、もうそろそろ朝ごはんできるよ」


 下からアクアの声が聞こえる。

 あのスライムが、朝ごはん。

 まぁ、魔物素材は食べられないわけじゃない。現にドラゴンの肉は高級食材だし、普通のスライムはポーションの材料にもなる。

 だけど、さすがにあんな未知の生物を食べるとなるとなぁ・・・。


 そんなことを考えながら階段を降りてリビングに向かうと、テーブルの上には茶色の粉や紫色の楕円な物体が置いてあった。


「あの、これ全部スライム?」

「そうだよ、いやぁ今日の朝いつものように洗濯物干そうと思ったらなんか美味しそうなスライムがいたから試しに調理して見たの、そしたらものすごく美味しくて、フェルトにも食べてもらいたいなって思ったから朝ごはんに出しちゃった」


 アクアはなんとも可愛らしい表情で言った。

 僕は席に着き恐る恐る白い物体を茶色の粉につけ口に運ぶ。


「・・・うまっ!」


 予想外だった。

 もっちりとした食感に甘い茶色の粉が合わさってこれまで食べどの料理とも違った新しい料理だ。


「本当? よかった。まだゆっくり食べてね」


 今なんか外にいるスライムたちが怯えたように見えたが、多分気のせいだろう。多分。



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