新たなる邂逅
しかし何故か我を狩ろうという気がなくなったようで、離れた位置から我の姿を見ては引き返した。
異形の行動理由など気にするだけ無駄なので気にもしなかったが、そんな頃にヤツラが『ヒト』という種らしいとようやく知った。
理由はもう覚えてもいないが。
またある日、
ふいっと顔を上げた我を見下す好戦的な目に、『亜竜』と罵った
だから言葉を交わして不快になる前に行動した。
我が立つ地面から空を行く竜の間にある空間を、こちら側へと強制的に圧縮して上位種を地に叩きつけた。
地に落ちた反動で空に跳ね上がる竜は、圧縮された空間が元に戻る力に巻かれて体躯が千切れ飛んだ。
一言のやり取りも無く、終焉を迎えた上位種
一瞬の出来事ではあったものの、それなりに消費した力を補給するため、しぶしぶ火山に散らばった上位種を喰らう。
やはり味は非常に悪かった。
それからもヒトは我の監視に励んでいたが、ふと麓に意識を向けると何かを作り始めたようだ。
縄張りの中でのことで少し気にはなっていたが、我を害そうとする風でも無いので放置した。
うむ、我は寛容なのだ。
またも月日が流れると、作られたものを通って我のところへ顔を出すヒトが現れ始めた。
以前と同じように色々と気負って立ち向かっては来るのだが…何かがおかしい。
殺意や敵意といった危機感や嫌悪感を刺激するような空気が無いのだ。
ただ恐怖心とでも言うのだろうか…本能が知らせる危険信号を無視して向かってくる感じがする。
怯えるくらいならやめておけば良いものを…といった思いを持ちつつも全て応じた我は負け無し。
月日を重ね強大になる我は、危機感を煽られることも無くなっていった。
だというのに、ヒトは変わらず我に楯突いた。
しかし向けられる感情は以前よりも遥かに好意的(?)なものになってきたように思う。
いや…我が視線に慣れただけなのかもしれないが、少なくとも悪い気はしなくなった。
竜とは目を合わせるだけで苛立ちが募るものなのだが。
集団に囲われるのが常な我の前に、ある日たった一人で者が現れた。
上位種族の竜ですら一方的に屠る我を前にして、随分な自信家だと感心したのを覚えている。
とはいえ、いつもと変わらない。
蹴散らせばそれで良かった…が、深追いもせずにあっさりと引き下がっていく。
不可解な行動に単なる様子見なのかと考えを棚上げした。
どうせ我と邂逅を果たしたヒトは、すぐに顔を見せることはない。
しかし、そやつは数日を置いてまたも我の前に現れ、同じようにすぐに帰っていく。
幾度も、何度も、少しでも負けそうになるたびに撤退し、戦う度に精度を増した。
簡単にあしらえていたはずの我が、気付けば片手間で相手するのに苦労するようになっていた。
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