和解 (vii)
それにしても――
力は、一度は見限ったクラス委員に感心する。
ぼんやりして任されたリーダー役を滞らせたり、突如、意味不明の言葉で奇声を発したかと思えば、以前よりささやかれていたオカルトチックな一面という馬脚をあらわした感があったり。
信頼はすっかり地に落ちたかに見えた環だが、落ちるのと同じぐらいの速さでV字回復を果たし、いつの間にか再びクラスを率いている。いったい教室でどんなマジックを使ったのだろう。
彼女は、力には知るよしもない心得をいくらか有していた。恩義を感じ心酔する人物のひとり、(自称)霊媒師・
取り戻した信頼感は100%ではないにしろ、女子高校生のたちまわりとしては上出来といえた。ジャンヌ・ダルクとの力の見たては案外、間違っていなかった。
もっとも、その下敷きにある裏事情を彼が知ったなら、ちょっと彼女とは距離をおこうと思っただろうが。
「じゃあ、行動を開始しましょう」生徒会副会長や演劇部副部長でつちかったリーダーの経験、そして霊媒師を称する人物の著書から得た知識を、環は再び発揮する。
「ひとまずこの場は私がとりまとめ役を務めさせてもらう。異議があれば言って」唱える生徒はない。そのように誘導している。「ないようなので、みんなに賛成してもらえたものと理解するね。ありがとう」
環は、各プレイヤーへLINEのグループ通話を使用するよう指示した。同時通話の利用で、プレイヤー間はもちろん、プレイヤーと
プレイヤーの7人全員が、まったく、あるいはほとんどグループ通話を使ったことがなかったが、環が先回りして使用方法をみずから調べてあった。引き換えに彼女のランクは中位層に転落していた。
このことにも力は驚く。保身のため自身のリスクを秘密裏に回避していたあの環が、と。
力は彼女に対し、計算があっての側面もあるだろうが、身を切ることで誠意を見せた、根性がある、と感服していた。
実際には100%計算オンリーなのだが。
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