和解 (v)
「あー、午角くんたち聞こえる?」
誰か女子の声がした。
ああ、と力が答え、聞こえる、聞こえてるよ、と天戸羊や市川あまねなども、差し出された力の端末と5階の教室の向けて返答した。
「さっきは逃げたりして、ごめん。自分までそっちに連れてかれるんじゃないかと怖くなって……」
「俺もごめん。古賀と同じで、巻き添えを食う気がして、つい……」
音色に続いて
俺もすまなかった、私も謝る、と
なんと言っているかは聞きとれないが一八のかすれ声や、
「みんな……」四ノ宮りつが口もとを押さえ、目もとを潤ませる。「いいよ……、みんなの気持ち……ちゃんとわかったから……」
またぐすりと涙ぐむりつを三宅まどかやあまねがなだめ、力や漂木隼冊らも、ああ、と応じた――思うところのある面持ちで。
本当は、りつ以外の面々は大なり小なりのわだかまりを残していた。
ある程度、冷静になってから考えれば、一定の理解はできる。ほかの生徒が恐怖のあまり、力たちプレイヤーを近づけまいとしてしまったのも無理はない。サポーター役の彼らになにかできたわけでもないのだと。
だがしかし、感情は理屈どおりには動かない。
救いを求めて追われた裏切られ感は、詫びのひとことで胸からするりと消えるわけにはいかなかった。
しかたないよね、と頭は理解を示しても、心という融通のきかないやっかい者はやすやすと首肯してくれない。それができるのは、口々に述べられる、ごめんな、ごめんねに、逐一「うん、うん」と目尻を拭いつつうなずく、お人好しのりつぐらいだ。力たち6人は、彼女がある意味うらやましかった。
複雑な思いを、りつを除いたプレイヤーの男女は、しかし、それぞれの胸奥にしまい込み、上階のクラスメイトをじっと仰ぐ。
単純に、この「いい感じ」の空気を読めない・読まない態度を示すのははばかられたのもある。が、それ以上に、打算的な意味あいが大きかった。
心情的に納得しかねようがどうだろうが、サポーターの支援は必須。問題を解いてもらわなければモンスターに傷ひとつつけることすらできないのだ。いたずらに教室と溝を作るのは得策でない。
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