暴環 (xxxvii)
「はあぁ?」
裏返った声でわけのわからないことを口走る私。
片眉を上げて、驚きと困惑と非難とあきれを4:3:2:1の割合でボウル入れてしっかりかき混ぜ、お好みで醤油小さじ1砂糖少々を加えた顔と声の午角くん。
教室内のいろんな位置から私に、ぱちくりとフォーカスしている40人ぶんの目。
定位置からまったく動かない美人ロボ。
教室の時が(少しだけ)止まった。
アプリのログによると、先のステージの最後で宮丘くんが時間を止めたとの驚くべき記録がある。
クラスメイトのなかにある私の
気まずいというのか、なんとも言語化しがたいおかしな空気が教室内を包む。
「あ……………えと……………」
私は、もし自分が漫画のキャラクターであったなら、滝のような汗をしたたらせているであろう引きつった笑顔で、とりあえずなにか言おうと声を発した。が、特に言葉は出てこなかった。
私が押した一時停止ボタンを、午角くんが再生ボタンで解除する。
「なに言ってんだよ、三郎丸さん!」
4:3:2:1の口調で午角くんが私をなじる。空想のなかの『環ってさ、近くで見るとまつ毛、長いんだな』(きゃああーっ)という、私にしか見せないロマンチックな一面や名前呼びはいっさいなく、私は普通に三郎丸さんのままだった。
「さっきからぼんやりしてっ」
「ごっ、ごめん……………なさい」
私は反射的にしゅんと謝る。そこそこのトーンで怒られて、「これは男性が女性へマウントを取ろうとする、典型的な男性優位思想のアプローチである」と冷静に分析し、(内心で)喝破する余裕もなかった。
なにもそんなに怒らなくても……。
ちょっぴり口をとがらせるが、彼の語調が厳しめなのももっともだった。「もう、次のステージが始まる」
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