暴環 (xli)
午角くんの示すスマホの画面には、ステージ7のアナウンスが表示されていた。
開始は5分後。いつのまに。
「さっき、いきなりアラートが出た」午角くんはいまいましげに言った。「毎回、前もって早めにわかるわけじゃないらしい」
私は状況の変化に沿った面もちに切り替え、自分のスマホを確認する。
2度、続けて驚かなくてはならなかった。
ひとつはLINEの通知。午角くんからのも含む、グループのみんなからのメッセージがいくつもたまっている。もちろん、雑談などではなく『プリムズゲーム』の対策に関するものばかりだ。
午角くんからは『さっき言った新しいやり方についてだけど』『おーい三郎丸さん なんか考え中?』『みんなで相談しね?』『なんか閃きそうなのかな 今邪魔しない方が良さげ?』『まとまったら声かけて』と、先ほど交わしていたやりとりの続きが来ていた。
そうだ、クラス全員に意見を募り、新しい作戦をたてよう、というところで話が中断していた。
みんなで策を練る代わりに私がひとり思考をめぐらせていたのは、午角くんとの関係や、
貴重な時間を費やしていったいなにをやっていたのだ。
その後悔が、もうひとつの後悔を絶望的なものにさせた。
次のステージの「課題」、つまりモンスターと対峙するプレイヤーがすでに決定していた。今回は7人もいる。
漂木くんと天戸くんは、優しい雰囲気系のイケメンコンビだ。よくペアで行動していて、ふたりそろっていると華がある。
澤くんは、ある意味、名は体を表すを地でいき、虎のように威勢がよく、騒がしい(虎にしてはやや小柄だが)。
彼女らはなかよし3人組だ。3人で1セットのように常にいっしょに行動している。昔からの幼なじみ同士なのかもしれない。女子では最初のプレイヤーとなる。
プレイヤーの選ばれやすさはランキングの順位、つまり、数学の得手・不得手によるが、彼らは低いのだろうか。
たしか、漂木・天戸ペアは、容姿だけでなく成績全般も優れ、ランキング上位だったはず。もちろん、選出率が低くても確率がゼロではないからじゅうぶんありえる話だが。
しかし――
最後のひとりについては納得がいかなかった。確率的にも、心情的にも。
信じられない思いで、私は言葉をなくしその名を凝視した。
私がにわかに意識するようになっている3つの文字。
アプリ上に並ぶ無機質な文字。
ありえない文字。
午角 力
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