暴環 (xxxi)

 男子おとこのこから触れられるのはそうとうに久しぶりのことだ。

 男性と体が接触する機会なんて、お釣りの受け渡しと電車や雑踏にいるときぐらい。最後に意図的に触れられたのは小学生時代にまでさかのぼるありさまで、自分をヒトだと思クラスのい込んでいるあわこころなれな二足歩行動物いだんしから暴力を受けたときという。

 突然、午角くんに触れられて驚いているが、先ほどからさんざん述べている犯罪性を彼にはまるで認めていない。嫌どころかむしろ、その……正直、うれしい……。


 私だって、男子とのつきあい経験がゼロなだけであって、心身ともに健全なごく普通の女子高校生おんなのこだ。LGBT漫画系とも難波瀬織アンドロイド系とも違う、一般人である(S.Rさんのような霊感もたぶんない。ただ、体質的には非常に呼び寄せやすいほうだといわれ、月に1度は都内まで行き、恵比寿の事務所でお祓いをしてもらっている。霊媒師せんせいいわく「えないほうがいい」)。男の子への興味は普通にある。


 正直に言おう。

 もしも、である。もしも仮に、こんな教室、クラスの面前、『プリムズゲーム』などというわけのわからない逮捕監禁罪はんざいこういのただなかなどではなく、たとえば、その……午角くんかれの自室であるとか……、私の部屋であるとか……(男子を家に上げるなどという勇気と覚悟が私にあるかはともかく)、あるいは、ホ……ホテル……とか……(む、無理無理無理! あんなとこ、絶対入れる気がしない)、そんなシチュエーションで迫られたら、私はたぶん……あの……その……ゆ、許して……………しまう……と思う……………(なにを?などとは聞かないでほしい……)。私はわりと流されやすいところがあるから……。

 午角くんから『環……(そう、もちろん名字ではなく名前呼びである)。おまえが、ほしい』なんて真剣な目で見つめられたら……ひ、ひぇゃあああぁぁああぁぁぁっ、そ、そ、想像しただけで……は、恥ずかしくて死にそうっ、むしろ死ぬ!



「おい!」



「ふっ、ふつつつつつか者ですが初めてなのでお手やわらかに末ながくお願いしますっ!!」

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