SyainingsRedys (iii)
「LINEの別れ話といえば、息子のケータイ、チェックしてたらまたフったのよ、あの子」
「えーっ、また!?」「これで3人目じゃないの?」
「5人目。相手のコが『わかれたくないよ・・・』とか『ちゃんと話、しよ・・・?』なんて延々、送りつけてきてて、もーストーカー状態」
「うわあー、引くー」「ヨウくん、モテるからたいへんねー」
「まあー、その辺はアタシに似てるし、うちの家系の伝統みたいなもん」
「ミカさんの家、フりかたのコツとか伝わってるんでしょう?」
「ええっ、そんなものが?」「すごい」「聞かせて聞かせて」
「アタシは『別れ話のレシピ』って呼んでるんだけどこれがもう効く効く。息子にも叩き込んでるとこ」
「いい男・女の見わけかたもあるんでしょう?」
「そう。ヨウにも教えているけど、いってもまだ中学2年生だからね。去年までアタシとお風呂に入ってたようなコドモだし判断力はまだまだ」
「ヨウくんはほんと、甘えん坊ねー」「ねー」
「さすがに下の毛も生えだしたし、13歳の誕生日前日に『明日からひとりで入りなさい。ママと入るのは今夜まで』って突き放したけど」
「オトナの階段登って彼女もフるようになったと」
「ううん。自分で判断させるのは危ないから、ちゃんとルールを決めてアタシが指示してる。『中学のうちは最終的にママが判断する。つきあう前に、相手の子の写真からメール・LINEの内容から全部、きちんと提出。ママが考えてOKならつきあってよし。彼女になったあとでも、毎日・毎週・毎月、きちんとママに報告』」
「わあー、厳しい~」
「ママが『この子はちょっとねえ』と感じたら、そこでその子は終了。あとくされないフりかたはママが教えてあげるから、じょうずにバイバイすること。これをしっかり守らせてる」
「徹底してるのねえ」「これだけしっかり見てあげてたらグレようがないね」
「言っとくけど、うちは反抗期しらずの家系で地元じゃ有名よ? 『子供と動物は口より手』がアマトの家訓だから。いうとおりにしなかったらまず体でわからせる。口での説明はそれから」
「スパルタ教育ね」「子供の教育って本来そういうものよね」「うんうん」
「ヨウもおとなしいもんよ。いやいや期? 第一次反抗期? なにそれ? よ」
「さすが、我らがリーダー」「フェミニストの急先鋒は家のなかも外もしっかりしてるものね」
「そりゃあそうよ。外でいくらバリバリ活躍してても、家庭はダメダメなんですぅ~、じゃあ、お話にならないもの。ドラマの設定とかならおもしろいかもしれないけどさ。厳しく育てたら恨まれて裏切られましたー、とか」
「あるある」「ありがちなパターンね」「手垢まみれのお約束」
「まあ、おもしろおかしいすじ書きにするのがテレビの世界なんだろうけど、現実は絵空ごとと違うからね? しっかり愛情が込もっていれば愛の鞭はちゃ~んと伝わるもなのよ」
「うんうん」「そのとおり」「さすが」
「愛の鞭といったって――あらやだ。タバコきらしちゃった」
「私の吸う?」
「ピアニッシモ系の味、苦手なのよね。ヨウがお腹にいたときにどうしてもがまんできなくて、たまたま近くにあったのを思わず吸ったんだけど、もーね」
「だめだった?」
「全然。節煙中でもあわないものはあわないんだなって」
「わかる」「私も普段吸わない銘柄はちょっとねえ」「そ、そうよね」
「あの子のために週7本まで、って決めてたルールを破ってまで吸った味がこれ、って。おかげで口なおしに3本よけいに吸っちゃった」
「あちゃ~」「せっかくヨウくんのためを思って減らしてたのに」「ミカさんのようなヘビースモーカーに週7本はキツいって」
「もー、あのときの
「ほんとね。うちの亭主もそう」「女性のことがなにひとつわかってない」「男ってほんっとダメよね」
「アタシ、ほかのことはたいていがまんするほうだけど、タバコがきれるのだけはダメ」
「買ってこようか?」
「うん、お願い」
「
「そー。タバコきれるとほんとイライラしちゃうから、急いでね。グラスとか割れるとお店の人に悪いでしょ?」
「了解ー。大至急」
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