弁解 (ii) ――― ∵
『プリムズゲーム』を司る厳然たるルールとランキングシステム。
各ステージで出題される問題に対して解答を試みると、口頭・黒板への記述など形を問わずランキングが上下する。
正しければ上昇し、間違っていれば下降。同じステージ内で上昇するのは1回のみだが、下降には制限がない。間違えるほど際限なく下がる。
ランキングはプレイヤーの選出率を左右する。換言すれば生死の左右だ。
そんなきわめて重大なパラメーターを、環は、クラスメイトに対し不用意に変化させる行動をそそのかした。一方で、自身はいっさい直接的に解答へ関与していない。クラスの支持を得てリーダー的ポジションを務める者にあるまじき行為といえた。
環は、身勝手、無責任のそしりをまぬがれない秘密の露見に恥じ入った。力の指摘はあまりに的確だと思った。
ルールの始めのほうに記述されている事項で、身の安全にも直結するものだ。誰かが異を唱えてもおかしくない。分の悪い賭けだとは思った。
だめもとでついた消極的嘘は、しかし、誰からも疑問の提示はなかった。
ヘルプの網羅するルールは量が多い。持続する負傷だの担任という実例を目撃した直後の死だのの、センセーショナルな言葉に目を引かれ、ランキングの込み入った仕組みには注意は向かなかったのだろうと。もくろみどおりだと。
ルールの分析についても、解答を誤ることの危険を認識されないよう気をつけた。調査範囲の重複を避けるとの名目で、よけいな箇所を精読されないよう誘導した。
41人の目をあざむくのは無理があるとは思ったが、案外、誰も気づく様子がなくことは運んだ。往々にしてものごとは、思ったよりもずっとスムーズにいったり、逆に難航したりする。難しく考えず、うまくいくときはあっけないほど順調に進むものだととらえることにした。
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