弁解 (iii)

 実際は、そんなに都合よくいきはしないことが明らかになった。

 高身長でがっしりとした体格や運動部所属という点で、(含みはないが)頭よりも体を動かすことが得意とのステレオタイプなイメージを持っていた力にさえ、看破された。

 頭の回転の速そうな(そして実際、ランキングトップ層の)天戸あまとよう漂木ひょうぎ隼冊はやふみなど、少なくない級友には、とっくにお見とおしなのではないか。

 小さい子供が見えすいた嘘をつき、言い逃れられると思っている、そんな幼稚さを自身に連想した。赤っ恥もいいところだ。冷静に考えてうまくいくはずがないことぐらい最初からわかっていたではないか。


 うかつな解答が命とりとなる事実を環が隠蔽している、そのことに気づいた生徒があえて見逃した理由。

 おそらく、


 ほかの生徒がランクを下げれば相対的に自分は上がる。ルールの仕組み上、ランクは上がりにくく下がりやすい。クラス委員のたてた作戦は、なにも知らない生徒が自滅的にランキング底辺へ落ちてくれる、好都合なものだった。


 環は、自身を棚に上げて、内心彼らを非難した。積極的ではないが、同じクラスメイトを踏み台にするようなことをなにくわぬ顔で、と。

 そしてすぐに、「おまえが言うな」と糾弾される立場にいることを思い出す。クラスメイトをいいように駒として使っている、と力に目されていることを。

 大至急、言いわけしゃくめいをしなくては。

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