看破 (v)

 どうもクラスが把握している「ルール」の範囲では、よくも悪くも現実離れした変化が身に起こるのは、「プレイヤー」としてフィールドグラウンドにいる間だけらしい。つまりアイテムや魔法で回復できる機会は、危険と背あわせということになる。


 冗談じゃない。先のモンスターとの戦いで危うく死にそうな目にあった。

 運よく生還はできたものの、手ひどいステータス異常をくらってしまった。次にプレイヤーに選ばれて無事に帰れる気がしない。よくて、さらにわけのわからないバッドステータスを追加で受けるか、力のようにHPを消耗するか。悪ければ、死ぬ。


 だいたい、このステータス異常を解消できる手段が登場しなければ、「課題」と称した戦いに臨んだところでまったくの無意味。ハイリスク・ノーリターンだ。

 今のところ3つのステージで回復手段は一度も確認できていない。どう考えても分が悪すぎる。


 とはいえ、戦場フィールドに出られず、口と耳を戒められたままでいるのも耐えられなかった。

 筆談を用いないと会話ができない、サッカーの試合や練習に支障がある、街で車などの接近に気づけない、テレビや動画は音声情報が欠ける、音楽がいっさい楽しめない。


 それら日常生活への大きな不便も大いに問題だが、今はさらに重大な問題として重くのしかかる。

 発声と聴覚を封じられたことは、午角うまかどりきの「歩行困難」に劣らぬ致命的な足かせを意味する。

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