看破 (vii)

 声が出なければ、耳が聞こえなければ、仲間クラスメイトとのすばやい連携がとれず、魔法も使えず、音での危険察知もできない。ステータス異常などなくてもじゅうぶん死と隣あわせの戦いだったというのに。――こんなの、文字どおりの無理ゲーじゃねえか!

 危険を回避するためには危険に飛び込む必要があるなんて、こんなむちゃくちゃな話があるか。


 幸か不幸か、このどちらに転んでも厳しい二択の選択権は一八にはない。プレイヤーの選出は無作為だ。

 そしてもうひとつ、よかれ悪しかれとして、当面、宮丘一八はプレイヤーに選ばれる可能性が低い。

 彼は前ステージのクリアにより、力とともに大幅にランキングが上昇していた。


 選出率と正確な順位がいずれも非公表となる、トップ層にランクイン。プレイヤーに選出される確率はかなり低減した。

 グラウンドフィールドに出られなければステータス異常の回復もないのは痛しかゆしだが、どうにか帰還できたばかりだ。またすぐ校庭立つ気にはなれない。


 前向きに考えろ。ステージが進んでいけば、なにかいい方法が見つかるかもしれない。普通のゲームだって、先へ進めば新しい武器や技、選択肢なんかが登場するじゃないか――


 なんら保証はないが、今は希望的観測にすがるしかなかった。一生このままだなんて絶対に嫌だ。

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