ペナルティーキック (xvii)

「で、副委員長様のすばらしい作戦は?」少々、ぶすりとした口調で力は続きをうながした。


「やりかたは今までと同じ。午角くんがミナスを引きつけ、宮丘くんがパワーをチャージ。さっき宮丘くんが言ったように、シュートのたびに失敗のリスクをともなうから、できるだけ一度で倒したい。今度は色が変わらなくなるまで強化する」


 おう、任せろ、と一八は意気込むが、力は、待て待て、と異を唱える。


「さっきどんだけ走ったと思ってんだ。次はマックスまで上げるって、俺を殺す気かよ」


 ただでさえダメージを受けて万全ではない。だが、我らのリーダーは不敵に語る。「リフティングを試すの」

「リフティング?」ふたりの男子生徒はきれいにハモって聞き返した。少し気まずい。


魔蹴球マジカルサッカーボールの説明を覚えている? ドリブルのほかにリフティングでも強化できるとある」

「でも、失敗したらリセットされんだろ」一八が反論する。「敵の動きにあわせた移動もしにくいしメリットねーじゃん」

「そこよ。一見、デメリットにしか見えない設定だけど、そんなものをわざわざ作るとは思えない。ハイリスク・ハイリターン。失敗するとリセットされるぶん、強化も速いんじゃないかしら」

「ローリスク・ハイリターンはまずねーけど、真逆のハイリスク・ローリターンはめずらしくねーからな? 『白狸プロジェクション』なんか、無課金だとありえないレベルのひでえアイテムしか――」

「その話、教室に戻ってからゆっくりやってくれ」力が一八をさえぎる。「副委員長の案に乗る。言っとくがあんま走れねえぞ? 俺のHP、わりと減ってんだろ」


 ええ、2/3ぐらいまで低下してる、との答えに力は引いた。死亡時が0ということを考えればそこそこきついダメージだ。体感以上に消耗している。倒れた状態から蹴ってきてこの威力なら、まともな攻撃などひとたまりもない。剣で渡りあうのがいかに無謀な考えだったか思いしる。


「そんじゃまあ、敵さんもそろそろしびれをきらしそうだし、とっととおっぱじめようか」

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