ペナルティーキック (xiii)

「モンスターの説明が変わった」環が手短にきりだした。「ミナスは、最後に攻撃した人だけを狙う特性がついた。今は午角くんは襲われない。剣とスマートフォンを回収して」

「なるほど、カズが牽制している間に、俺が剣を鍛えて一気にぶった斬るわけか」


 さすがクラス委員、考えたな、と評する力に、環は「違う」とつれないひとことを返す。


「つい今、痛い目をみた人が言うこと? 接近戦は危険と改めてわかった」

「あれは俺に油断と躊躇があったせいだ。次は迷いなく首をはねる」

「賛成できない。ミナスは頑丈よ。一撃でしとめられなければ至近距離で反撃を受ける」

「武器をめちゃくちゃ強化する」

「残念だけど午角くんの疾走如意剣ランニングソードは、宮丘くんの魔蹴球マジカルサッカーボールと違って攻撃力は一定なの。長くなるだけ」


 力は「はあっ?」と声をあげた。こちらは近接武器で、多少長さが増そうが白兵戦に身をさらすリスクに変わりはないのに、一八のものは遠距離攻撃のうえに威力も桁違いにアップする。ずいぶんと差がある。


「ガチ攻略用のジョブと、お遊び用、マゾプレイ用のとで性能差が大きいのはよくあることだろ」


 したり顔で一八は言う。オンラインゲームの話だろうか? どうでもいい。プリムズゲーム こ れ は字義どおりの遊びじゃないんだ。

 環の「一応、基本の威力は午角くんの剣のほうが高くなってるよ」とのフォローに力は、あたりまえだ、と内心で反発した。剣とサッカーボールで攻撃力を比較すること自体がおかしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る