ルール (xliii)

「手書きや手打ちでひとつひとつ登録しあうのは手間だし間違いやすいから、LINEグループを作ってやりとりしね?」


 たしかに、と皆、うなずいている。じゃあ、私が作る、と環が率先した。

 グループの作成を始めるとまどかが疑問を口にした。「LINEとか使って大丈夫なの?」


 そういえばそうだ、と気がつく生徒と、ぴんとこずに、なんで、ときょとんとする生徒にわかれた。


「メッセージのやりとりが俺たちの間だけだとしても、データはすべて運営をとおしている。これって、外部とのやりとりを禁止するルールに違反するんじゃないかってこと」


 それなら大丈夫だと思う、と端末操作をしながら環が言った。


「ルールの項目にこまごまと例外事項が載っているんだけど、送ったり受け取ったりする相手先がクラス内であれば、外部との通信にはならないみたい」


 LINEの作業をしてもランクは下がっていない、と彼女が言うとおり、ランクは11位と高い順位をたもっていた。口ぶりから、確実性があっての行為ではないようで、よく危険な橋を渡れるな、と感心させられる。


「みんなの代表みたいなことをやってるんだし、多少のリスクは引き受けるのがすじかな、なんて」


 環はいくぶん、はにかんだように微笑した。三郎丸さん偉い、と市川いちかわあまねなど女子を中心に彼女をほめそやす。士気が高まり、希望がみえてきた気がした。


「モンスターでもなんでも来やがれ」「頼もしいリーダーがついてんだ。負ける気がしねえ」「委員長、立場ねー」


 和気あいあいとした揶揄に、九十九は「申しわけない」と空笑いした。


 できうる範囲内で準備できそうだ、と環は実感したが、ひとつ問題が生じた。

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