ルール (xli)

「みんなに賛成してもらえたみたいだから、ほかの考えも出させてもらうんだけど、チームわけをしたらどうかなって」

「チームわけ?」大原おおばる珠子たまこが聞き返した。環はうなずきクラスメイトを見回す。


「この『プリムズゲーム』――ゲームという呼びかたはあまりしたくないんだけど――これは、数学の成績が左右する仕組みになっている」


 なんの役にもたたない数学を強制するとか、枡田らしいやりくちだぜ、と阿部あべ玲爾れいじが吐き捨てるように言った。


「問題を解くには数学の知識や能力が必要だし、ランキングやステータス画面に表示されているとおり、順位の高い人ほどモンスターと戦う可能性も低い」

「ほんと、露骨なシステムだよな。数学ができるのがそんなに偉いのかよ」

「逆、逆。大して認められないから優遇してんだよ」


 玲爾といつもつるんでいる田井良たいらひとしがともに悪態をつく。


「てことは、ランキング上位者は問題を解くほうに専念するってこと?」


 ふたりとは対照的に落ち着き払った天戸あまとようの問いに、環は首肯した。


「ステージの間は、問題を解く人、プレイヤーがモンスターと戦うのをバックアップする人、それ以外は、技や魔法の出しかたやルールについて把握したり研究したりする人、といった具合にわけるの」


 それぞれ役割分担するわけか、と千家せんけ大舟だいしゅうがうつむき気味に言った。高敷たかしきほむらが軽く挙手して「覚えるのと研究するのも、得意不得意があると思うから、それもわけない?」と提案する。いいと思う、と環は賛成した。


「次のステージまであまり時間がないから、とり急ぎ、誰がプレイヤーになっても連絡がとれるようにしておきたい。私の電話番号をみんなに教えるから、ひとまずこれを使って」


 言いながら、環は自身の番号を黒板に書きつけた。クラスじゅうが各自の端末に登録する。続けてメールアドレスも書いていく。個人情報を黒板上に示すのは、少なくない心理的抵抗感をともなうのだと彼女は実感した。


 メアドについてだけどさ、と征従が言った。

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