ルール (xxxvii)

「みんな無事に帰るには、できる限りの対策をとる必要がある」


「三郎丸さんの言うことはわかるけど、私、あまり記憶力よくないし……」「俺も覚えるの苦手なんだよな。能力が決まってからアプリで確認すればよくないか?」「モンスターと戦いながらだと難しいと思う」


「全部を覚えるのはたいへんだからこういうのはどう? 各自、それぞれに担当するものを決めるの。自分が覚えているものが当たればそのまま使う。別の人が覚えているものだったら、その人が電話やメールでサポートする」


「アイデアは悪くないかも」「でも、みんなの番号とか知らないし」「全員で交換しておく。電話番号、メール、LINE IDも含めて全部」「えーっ、全部? 全員と?」


「念のためよ。なにがあるかわからない。不測の事態に備えておくに越したことはない」


「クラス全員に教えるのかあ。気が進まないな……」


「たしかに、言いだしっぺが言うのもなんだけど、私自身だってちょっと抵抗感がある。けど、今は非常事態なのよ。悠長なことは言ってられない」


「さすがクラス委員って感じだな。こんなときによくてきぱきと考えられるよ」


「ううん、こんなときだからこそよ。なにか行動を起こしていないと落ち着かないから。半分、自分のためみたいな部分がある。仕切ってるようでうっとうしかったらごめん」


「全然。誰かまとめ役がいたほうがいい。しっかりしてくれて頼もしい」「委員長より委員長してる」「副委員長と交代したほうがいいんじゃない?」


 クラスメイトの軽口に九十九は、ははは、と後頭部に手を当て苦笑いした。環は気まずそうに「佐々田くんは、私以上に縁の下の力持ちタイプだから」とフォローを入れる。

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