ジャンヌ洋子   

北山茶近(きたやま さこん)

第1話  獣の目

 平成29年6月27日(火)午後10時過ぎ、東京都渋谷区乃木坂には、小雨が降っていた。

 梅雨時だったので強い雨ではなかったが、傘は必要だった。

 地下鉄千代田線乃木坂駅で、一人の若いOL風の女性が、急いで改札口を通り抜けた。

 女性は、22,3歳位だろうか。

 髪をアップにまとめ上げ、ウェストを引き締めたスカートを履き、鼻筋の通った美人だった。

 彼女が、改札口を出る際、10m程離れた斜め前方でスマホを見ている一人の男がいた。

 そうです・・

 男は、一見スマホを見ている振りをして実は、今夜の獲物を探していたのだっ

た。

 同時刻に改札口を抜けた女性の乗降客は、十数人いた。

 しかし、男は、彼女を見た瞬間、ギラッと目が光り、今夜のターゲットを彼女に決めたのだった。

 そして、男は、彼女の後を一定の間隔を空け、さりげなく追った。

 彼女は、夜も遅いことから、小走りに階段を上がり帰宅を急いでいた。

 階段から地上へ出ると、彼女は、ピンク色の折り畳み傘を差し、赤坂通りを南青山方面に向け進行した。

 その後、青山墓地を横切って赤坂通り沿いに歩いた。

 彼女のアパートは、青山墓地を抜けて直ぐの所にあった。

 男は、身長177cmのガッチリ型で野球帽をかぶり、スニーカーを履いていた。

 ジャージ姿であったので、一見、スポーツ選手にも見えた。

 彼女の歩く速度が速かったことから、男は、傘も差さずに忍者のごとく小走りに足音を立てずに後を追っていた。

 ただ、その立ち振る舞いは、恐ろしい程慣れていた。

 女性との距離は、50m位はあっただろうか。

 彼女は、雨音のせいか、男に追われていることに、まったく気づいていなかった。

 その後、青山霊園入口から200m位入った所で、男は周囲を見回し人がいないことを確認して、一挙に全速で女性に追いついたのだった。

 彼女は、突然、男が直近まで来たことから目を丸くして驚き

    「キャー!」

と、叫び声を上げ、夢中で逃げようとした。

 だが、男は、逃げようとする彼女の肩を後ろから羽交い絞めにし、それと同時にガムテープで口をふさいで、声が出ないようにしたのだった。

次の瞬間、彼女の肩と両足を軽々持ち上げ、一気に青山霊園の中に引きずり込んだ。

 柔道でいう一瞬技いっしゅんわざであった。

 女性は、手足をバタバタさせて夢中で抵抗したが、男は、怪力があり、さらに墓地の奥にある大きな墓石の裏側まで運んだのだった。

 女性は、必死に口に張られたガムテープをがし、助けを呼ぼうとしたが、次の瞬間、強烈な男の手拳を腹部に浴び、気絶してしまった。

 その後、男は、持っていたロープで女性の両手を縛り、服を脱がせて乱暴したのだった。

 途中、女性が気が付くと、男は、まるで楽しんでいるかの様に両手で彼女の首を絞め殺したのだった。

 彼女は、半目を開けてぐったりとしてしまった。

 男は、殺害後、ガムテープを剥がし、口の中にバラの花を一凛いちりんした。

 正に、性的異常者による極悪非道の犯行であった。

 彼女の遺体は、翌朝8時頃、墓の清掃をしていた管理人によって発見された。

 

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