第44話2-11-2.インターハイ予選決勝②
中堅戦、副将戦、大将戦・・・あと1敗すれば決勝戦は敗北だ・・・。
まあ“Z班”とすればグループB準優勝で十分なんだけどな。
グループA、B、Cそれぞれの優勝チームは全国大会に出場が決定する。
降魔六学園は優遇されているというか全国の高校生で召喚獣を持ち、取り合えずレベルはともかく高校生召喚戦士と呼べるのは5万人程で・・・そのうち7000人ほどが降魔六学園に在籍しているのだから・・・特例措置というか、まあ当然の話しだろうか。
僕はこんなことやっている暇ないんだけどな・・・。王家の御所を封印しないといけないし、そもそもどうやって御所の封印を解いたのか・・・後はいくつかラボを潰さないと・・・ラボと言えばイリホビルは厄介だ・・・ああ、原始の船の発掘は順調だけど・・・一番問題の“竜王ノ聖印”は全く手掛かり無いし。
―――中堅戦は隣の体育館の闘技場にて行うことになった―――
そう、十分考え事をしている暇があったのだ。
というのはさっき、闘技場が半壊したからだが・・・。
武野島さんとオールバッカーの試合は観客も騒然となったトンデモ試合だった・・・。
数値上、覚醒魔法は撃てないはず・・・なんだけど。氷竜レークスがまさか・・・。
中堅戦開始―――。
中堅戦はダブルスだ。中堅戦に勝つとアドバンテージが取れる、つまり2勝2敗1分けの場合、中堅ダブルスを勝っている方が勝利チームとなるのだ。そのため中堅ダブルスはどのチームも強力な選手を送り込んでくる。すこし特殊なルールとなり闘技場は広くなり魔装鎧と魔装武器はほぼ使用できない、ほぼと言うのはコストがバカ高いだけで影から出せなくはないのだ。
“Z班”の青木君と村上君の凸凹コンビ対“DD-stars”の藤崎成城ともう一人は知らないな久森人一、本来は大津留ジェニファーのはずなのだが・・・。藤崎成城は接近戦のスペシャリスト、空手の達人だ。久森人一は補欠か?同じく近接戦闘型のようだ。TMPAは2人とも3万越えている。ちなみに青木君は20500、村上君は23500くらいだ。
合宿で一番苦労したのがこの2人のコンビネーションだが・・・上手くいくといいけど。
戦闘開始だ。
でかい図体に似合わず緊張してガチガチの村上君はいきなり“バーサクモード”発動だ。
205㎝ある身長はさらに高く全身の筋肉は赤く膨れ上がり毛むくじゃらになり、完全にいかついモンスターだ。噛みついて反則負けにならないように“バーサクモード”になると顎の周囲の骨が発達して口を隠すマスクになるように分化誘導したのだ・・・いやあ僕って賢いな。そして“バーサクモード”は著しい知能低下と攻撃性を伴う代りにTMPAがあがるという・・・まるで纐纈君の“武神モード”のような特殊魔装状態なのだ。もちろん“武神モード”は知能低下を来さないが。
闘技場で青木君は星崎真名子に投げキッス的なポーズをしつつ、そのまま気持ち悪い顔で鋼鉄の塊になった。これも特殊魔装状態だ、おそらく降魔六学園で最高の硬度となる。MO20000以下の攻撃をほぼ無効化する・・・これは桔梗と僕と葵くらいしか攻撃が通らない数値だ、天野の“スチールレッグス”より硬い。ただし全く動けないという引き分け要員だが・・・・。
そして真名子はその青木君の投げキッスを避ける仕草をしている
藤崎成城クンと久森人一クンは2人ともスピードタイプの近接戦闘特化型だ、補欠のはずの久森人一クンも非常に高い能力だ。
コンビネーションがあるのだろう・・・。あっという間に距離を縮めてくる。強力な攻撃魔力を身に纏っている。
“バーサクモード”の村上君はおもむろに鋼鉄の塊の青木君の足を持って、こん棒のように振り回した。赤い巨人の村上君のTMPAは恐らく4万前後まで上がっている(数値的には葵と同じくらいだ)、青木君の重さは質量保存の法則など関係なく480Kgほど。
グォ――――――!!
まさしく咆哮する赤の巨人の恐るべき一撃だ、スピードが乗りとてつもない重さの無機質な塊は破壊の魔力を帯びており・・・つまり、硬質な鋼鉄の青木君を爆風をまといながら片手で振り回したのだ。
フォン!!!!!
距離を詰めていた藤崎クンと久森クンはとっさに両手でガードした。ガードした2人は視界から一瞬で消えた。
鋼鉄の塊と化した青木君の頭部をガードした藤崎クンは広くなった闘技場の結界の壁まで叩きつけられても勢いがやまず結界の壁を転がりながら登っていった。
久森クンは地面に叩きつけられ砕かれた闘技場の床を粉塵にまみれつつ割れ飛んだ破片とともに転がっていった。
霊眼でみると、藤崎クンは両腕骨折して気絶―――。久森クンは肋骨が数本折れてるな―――でも意識はある、水属性なのか・・・自身に「なんだこいつ、なんだこいつ、くそっ」と呻きながら回復魔法をかけている。
一瞬意識が遠のき回復する中で久森クンは見上げている「ええぇ?」・・・粉塵の中ゆっくり近づいてくる赤ノ巨人を・・・。
赤ノ巨人は軽々と500㎏近い人型の鉄棒(かなぼう)を片手で持ち。
そして無慈悲に振り下ろした・・・。
ドッシャー――――!!!
中堅戦―――勝利だ。けど大丈夫かな・・・2人とも生きているし回復するだろうけど・・・精神的ダメージが残るだろう・・・藤崎と久森か・・・鉄棒を携えた赤ノ巨人の最初の犠牲者になった。
ウワ――――――――――――!!!!
場内は再び騒然となった。
1勝2敗だがアドバンテージありの状況だ・・・もしかしてと・・・思わなくもない。
珍しくこんな試合にのめりこんでいる自分がいる・・・不思議な感じだ・・・心地悪くはない・。
副将戦―――。
唯一無二の男、ダイブツくんと戦うのは“DD-stars”の姫川樹奈だ。降魔六学園十傑3位、最強の氷竜使いだ・・・“アイスエンプレス”の異名で呼ばれる。説明の必要ないくらいの強者だ。TMPA36500は立派だ、対するダイブツくんは11000まで伸びている・・・。
さてどうなるんだろう。
姫川樹奈は肌は白く水着のようなバトルスーツを優雅に着ている、魔装鎧は纏っていない、魔装武器も持ってはいない、髪はストレートで長く腰まであり顔も出ているが表情から何かを読み取るのは不可能だ。幻想的な不可思議な雰囲気の女子生徒だ、普段もほとんどしゃべらないらしい。
ダイブツくんは裸にパンツを履いていて魔装鎧は透明で気色悪い。魔装武器は両手に透明なナックルダスターだ。天然パンチパーマで顔もまあ良くはないが頭も悪く表情からは何を考えているのか全く意味不明だ。すぐ脱ぐため存在自体が放送禁止の男子生徒だ、普段はグモ―としかしゃべらない。
緊張の一瞬なんだけど2人とも薄着だな・・・水着対パンツの戦いか。
開始線から動かず両手を広げて姫川樹奈は戦闘を開始する。
右手と左手の下から二本の氷樹が生えてくる。二本の氷樹は急速に大きくなり氷の枝が姫川樹奈を守るように包みだす。さらに氷の枝は増えて氷樹も大きく太くなる―――“氷樹界”だ。
まさしく姫川樹奈の代名詞のような術だ。ただ・・・やや姫川樹奈の目は戸惑っているようだ。
それはそうだろう、彼女に勝ったことがあるのは西園寺桔梗と不知火玲麻だけ。氷樹が育つと桔梗でも勝利は厳しいのではと言われるが“氷樹界”を撃破するには速攻が必須なのだ。
それを前にし、でっかい顔のダイブツくんは欠伸をしているのだ・・・。
敵が氷枝の届く範囲ならオートで薙ぎ払う。姫川樹奈の身体も氷樹が守るのだ。つまりこれは特殊魔装術に分類される、本人は動けない代わりに恐るべき防御力と攻撃力になるのだ。そしてさらに氷樹が成長すると氷の果物―――氷果―――が生るのだ。
氷果は敵を探知してオートでレーザー攻撃を開始する・・・。時間がたち氷果が増えると手が付けられなくなるのだ。
あっという間に氷樹は大きくなり氷の枝がダイブツくんの顔まで届く大きさになった。当然すさまじい魔法攻撃力の氷属性の薙ぎ払いが繰り返されるのだ。
ブワッシャ―――!!ブワッシャ―――!!
キンッ!と音がしてダイブツくんにふれる前に枝が折れていく・・・。
キンッ!キンッ!なんどでも同じだ。
異常は感じているはずだが姫川樹奈は氷樹の中で際立った動きはない。
でも氷果ができてきている。
魔力によるレーザー攻撃が開始される。
ジャ!ジャ!ジャ!
レーザー攻撃はダイブツくんの前で消えているようだ。
ブワッシャ―――!!ブワッシャ―――!!
キンッ!キンッ!
ジャ!ジャ!
ブワッシャ―――!!
キンッ!
(騒々しい音だな・・・。)
この試合は異様で・・・姫川樹奈は開始位置から動いておらず、対するダイブツくんもまた動いていない。
ジャ!ジャ!ジャ!
ブワッシャ―――!!
キンッ!
ジャ!ジャ!ジャ!
ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!
ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!
(ああうるさいなもう・・・レーザー攻撃が増えたね、枝はダイブツくんにふれる前に消えるから長い枝に成長できないようだ)
ブワッシャ―――!!ブワッシャ―――!!
キンッ!キンッ!
ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!
ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!
ブワッシャ―――!!
キンッ!
ジャ!ジャ!ジャ!
(両者ダメージ無しだけど・・・ああもう!うるさい!)
ブワッシャ―――!!ブワッシャ―――!!
キンッ!キンッ!
ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!ジャ!
(もういからダイブツくん!姫川さん倒して来いよ!うるさいし!うるさいよ!)
あ!一瞬こっちを向いた後で、やっとダイブツくんが行くつもりだ・・・いや?行かないんかい・・・躊躇するな・・・辞めるなよ。
でっかい顔でこっちを見るなこっちを・・・。
行かんかい!
やっとダイブツくんが姫川さんのほうへ走り出した。ダイブツくんが近づくと枝が折れて氷果もバラバラ落ちていく・・・。一つの巨大な幹になっている氷樹にダイブツくんが触れると一瞬でひび割れて砕けていく。
おそらく姫川さんのとこまでたどり着いたようだ。
悪いけどこの試合は100%ダイブツくんが勝つ。
裸パンツのダイブツくんは氷樹の幹の中の姫川さんにほんの軽く一発入れたはずだ・・・。
もう巨大となっている氷樹は内側から綺麗に砕けて消えていった・・・。
うーん。
ダイブツくんの能力は全部はまだ分からないが、とりあえず魔法攻撃の無効化だ。一切の魔法攻撃が無効だ。ただ物理攻撃は通るので。姫川さんは氷の枝で床のコンクリートでも引きずりだして殴れば勝てただろうけど・・・氷樹界は恐るべき性能だがすべてオート攻撃で制御できない、つまり攻撃は薙ぎ払いとレーザーだけだ。
また恐るべき性能の代償で“氷樹界”の間は姫川さん自身は一般の人と戦闘力は変わらない。まあダイブツくんなら100%勝てるわけだ・・・アフロの読み通り・・・か。
副将戦―――勝利だ。
ワ――――――!!
オオオー!!!
体育館が振動するほどの歓声・・・。うるさいな。
凄い歓声だ・・・まあ、そうだろう。どうして天然パンチパーマが“アイスエンプレス”姫川に勝ったのか分からないだろうからな。
2勝2敗、アドバンテージありだ。
ああ、大将戦か。
あれ?僕の出番か―――。うあ・・・憂鬱だな。
敵は西園寺桔梗のライバルだ。降魔六学園で第3高校の“DD-stars”の不知火玲麻(レマ)を知らない者はいない。雷神やエリアルマスター、戦乙女、戦女神と揶揄されるこの国で2番目に強い高校生だ。ほぼすべての個人戦タイトルが準優勝だ、そのためワンモアレマと呼ばれることもあるが・・・。第3高校では絶大な人気で一緒に暮らしている纐纈守人クンの彼女だ・・・美男美女カップルとしても有名だ・・・彼女なんて羨ましい話しだ。
まあいいや。それはさておき、空中戦最強で雷属性魔法も最強だ。
こんな僕なんかでは才能では全く手も足も出ない華やかな召喚士だ。人々の歓声と称賛の中で今後も生きるのだろう。彼女の魔装鎧は赤と白を基調としていて上品で美しい。僕のフィーネの鎧も戦乙女の鎧と呼ばれている。第一王朝中期のフィーネと呼ばれる戦乙女には悲しい伝説がる・・・部下の戦乙女に妬まれ裏切られて恋人予定者も奪われて、罠にはめられ魔族だらけの閉鎖空間に閉じ込められたのだ・・・そして・・・。
ああ、あっという間に始まるな。ある意味、戦乙女同士の戦いか・・・。
桔梗の時のように集中しなくては・・・。
戦うと決めたのだから・・・。
(レマ、君を殺す、僕を殺してみろ・・・)
竜殺のまさしく殺気を・・・魔力を周囲に開放する・・・万蛇木くんの時の比ではない。
桔梗戦を思い出せ。
竜殺槍のその切っ先一点に魔力を集中する。周囲に禍々しい魔力の回帰波が出ている。
半身になり奥村流槍術“半鐘の構え”だ。
左眼が紫に輝く・・・。
試合開始―――。
ヴィジョンアイ・クラッカーモード発動。世界は四分の一の速度になる。
レマの動きを予測する・・・回避、攻撃、魔法、飛行・・・準備段階で潰す・。
手加減無用だ・・・。
超高速で接近する、飛翔はさせない・・・一瞬でいい・・・殺気でレマの動きを止める・。
不知火さんは真上から攻撃が来るような気配を感じたはず。
奥村流槍術“静心乱れ突き”彼女の剣の腹1点に5発連撃だ。
彼女の剣はもろい棒っきれのように折れ飛んだ。
次の動きを予測・・・レマは離れつつ雷術か・・・右手に魔力をためようとしている。
抗術を槍の切っ先に集中、彼女の雷系魔力をキャンセル・・・魔法は撃たせない。
次は回避か・・・回避もさせない・・・回避先を衝撃波で攻撃・・・。
一瞬迷ったレマの心臓に確実に1撃入る・・・竜殺槍を突き立てる・・・。
!!!!
・・・いやまて・・死んでしまう・・・。
やめだ。蘇生するのは面倒だ。槍に急ブレーキをかけると同時に衝撃波に切り替えた。
彼女の鎧とサブクリスタルを破壊する・・・。
衝撃波が届くと一瞬で彼女の魔装鎧のサブクリスタルが何個かオーバーフローして砕けた。彼女は後ろに大きくのけぞっていく。
“加速一現”
追撃だ。ついでに槍のうしろの石突の部分で手加減抜きで彼女の胸部を突いた。
ファーストコンタクトとしては上出来だ。少し距離を離す。ここまで時間にして1秒切るはずだ。レマは僕の攻撃で鎧が砕けつつ後ろに跳ね飛ばされていく・・・。
・・・一回勝ったような気がするけど・・・まあいい。
どう立て直す?レマ?
DD-starsはたしかダイバースダスク-スターズの略だったか。夜空に輝く星々というわけだ。地を這う僕がこの手で今日だけは星を地に落とす・・・。
さあレマ!どうする?
―――ん?
なんだ?ゆっくりと?
何をする気だ?
ん?
んー?
不知火さん?どうした?―――倒れた?
―――大将戦勝利です!
えー?なんで?
勝ったの?もう?い、いま?
闘技結界が解けていく。
え?勝ったのぉ?
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