第42話2-10-3.インターハイ校内予選―――順調に行くわけが無いヤバい奴等

―――もうすぐグループBトーナメント、つまり我々のチームはなんと準々決勝だ、敗退チームは増えて観客にまわり・・・そしてZ班は注目を集め、試合はかなりのギャラリーを背負う形になっている。

次の相手は第3高校の強豪“デメロゴス”だ。第3高校のチーム多いな・・・さすがバトル大好き学園だ。

それにしても・・・如月葵のチーム“ドラゴンディセンダント”はやっぱり参加していないようだ。我々のグループBにも他のグループのトーナメントにもやっぱり出場していない。最近覗いていないから分からないが緑川尊の死が影響しているのは間違いないだろう。


霊眼で確認しているので間違いない。

ちなみに城嶋由良がチームリーダーの“Z班第二部王下竜騎兵団”は順調に勝ち上がっているようだが、なにせグループCは参加チームが多い・・・決着がつくのは夜中かもしれない。


さてグループAは・・・予想通り“ホーリーライト・ザ・ファースト”が順調に勝ち上がっている。すべて4勝1敗でだ・・・。なんと負けているのは西園寺桔梗だ・・・負けていると言うか・・・全試合棄権している。

先鋒から副将までで4勝しているから問題ないが、以前の桔梗からは信じられない。


「常に実戦である!全力を持って戦い―――」などと演説しまくっていた暴れん坊女帝の桔梗とは思えない・・・心境の変化だろうか?


まあそれにしても、すべてのグループを通してこれから周囲に最も驚きを与えるのは恐らく我々の“Z班”だろう。目立つのは嫌いだが今回は仕方ない。万年最下位の“Z班”が準々決勝、つまり8位以内にすでに入っているのだから・・・さらに驚く理由は・・・。


周りからヒソヒソ声がしている。


・・・あんな強かったか・・・

・・・Z班がここまで残るなんて・・・

・・・まじかよ、弱小って嘘かヨ・・・

・・・キャ――じんめサマーー!こっち向いてー!

・・・おいおい第6高校がこんな上位まで・・・

・・・一人だけ強くても・・・

・・・そろそろ化けの皮が剥がれるさ・・・

・・・お美しい、今日も一層お美しい、もうどちでもいい・・・


もさもさした緑色の頭が小刻みに上下している・・・うちの隊長は不敵に笑っている。

「くっくく。言いたい奴には言わせておけばいい。そろそろ真面目に行く必要があるであろう―――」Z班の経験を考えればベスト8でももう大したものなんだけどな・・・。

口角は笑いながら緑アフロ隊長の話しは続いている。クルっと振り向きZ班のできそこない達を見渡す様は歴戦の将軍のようだ。バトルスーツも全身イエローなので印象としてはブロッコリーというか・・ああ目が合った。

「―――準々決勝はすこし布陣を変えるので、よく聞けい!青木は先鋒を務めてもらう、次に―――」ああ・・・僕より背の低い青木君は眠そうだな、だから食べ過ぎなんだってば。


なるほど先鋒は引き分け狙いか。チーム“デメロゴス”は先鋒と大将が竜族でポイントゲッターなのだ。中堅ダブルスもかなり強いが竜族では無い・・・。みんな真面目にエスケープせず話を聞いている、調子悪いのかな。


「―――よし、作戦は以上だ。Z班よ全員、魔装せよ!」

おお、いよいよか。魔装すると気配で竜族だということはそこそこ探知能力がある召喚士には筒抜けになる、いよいよベールを脱ぐか。よかった、これで僕のカモフラージュになる。ほっと安堵といったところか。


っていうか魔装なしでよくここまで来たな・・・竜族ってやっぱ強いなぁ、4回戦はなぜか不戦勝だったけど。


ほとんどの召喚戦士がそうだろう・・・魔装すると少し高揚する、自分も例外ではない。たとえ女性用の鎧だとしてもだ。特に魔装を覚えたての頃は・・・。


「おっっしょーー!」オールバッカ―がよく分からない掛け声をかけて魔装していく。群青色で兜は後ろに向けて2本の角が生えており全身もゴツくて結構カッコいい。

「招来!第3銀河星砕魔法法衣よ!わが身に纏え!」そんな名前じゃない!

青木君、その鎧の名前ダサいわ。

全員、なぜか準々決勝に出場しないダイブツくんまで魔装している、ダイブツくんの魔装鎧は透明なハーネスで自分で作っておいてなんだけどキモチ悪い・・・バトルスーツも着ていないためほぼ裸だ。あれ?ダークアリスも魔装してるけど今全員で魔装する必要ってあるのかな、まあいいけど。ダークアリスは色々注文が多くて鎧を作るのが大変だったが白を基調とした下半身はチャイナドレスのような鎧でマスクと肩と肘と膝にはトゲトゲがついておりかなり痛そうだ、まあ白い特攻服鎧みたいな・・・うんまあスタイルいいしカッコいいな。


さて僕もフィーネの鎧を纏う・・・女性に見えるから嫌なんだよなぁ。モルネが蛹のままでは王家の強力な鎧を再調整しても仕方ない・・・再々調整が必要になるからだ。

「今日もかわゆいね、もけクン」という星崎さんは回復要員なのに魔装している、魔力の無駄遣いなのでは・・・。まあコイツ等に何言っても始まらないし。


(さて、そろそろ来るぞ)


こちらを遠巻きに伺っている連中・・・周囲が一気にザワる!

我々の波動を感じ取っているのだ。


・・・ステキ―じんめサマー!・・・

・・・ウオッ!!!竜だぞ!!!・・・

・・・なんだ、なんだこの気配・・・

・・・ちょっとぉ。やばぁいよ。あいつら・・・

・・・あああ!あれ全員ドラゴンです、た、大変だスクープです!大変!・・

・・・なんだよあれ!・・・

・・・ちがうちがう、全員なんだよ、マジだって目の前で魔装しやがった・・・

・・・竜の気配だ!な、何人いるんだ・・・

・・・じんめサマー一緒にお写真をお願い・・・

・・・全員竜かよ!竜の眷属じゃなくてか・・・

・・・Z班、ドラオンかよ!今まで隠してたのか・・・

・・・じんめあきらダケじゃない!全員ドラゴンだぞ!ありえねえって・・・

・・・竜族のみのチームなのか!学園の勢力図が一気にかわるぞコレ!!!・・・

・・・やばい!やばい!やばい!とんでもない!・・・

・・・なんだこの隠し玉・・・


うーん、Z班全員が竜の召喚士というのはなかなかのインパクトのようだな。

これで突然、僕が竜族になったことが不思議で無くなればいいが。全員、竜族であることを隠していた等と思ってくれれば。




―――そして体育館を変えて準々決勝開始!

先鋒は青木君と“デメロゴス”のポイントゲッター、TMPA28000ほど地竜使いの内藤倫クン(男)だ、身長172cm体重65㎏ぐらい攻撃寄りバランス型のようだ、校内ランク戦は上位。イケメンでモテるという噂を聞いたことがある。葵を覗き倒していたから第3高校の事は詳しいのだ。


予想通り開始早々、青木君はその場で鋼鉄の塊と化した。

青木君は腕を組んでメチャクチャムカつく挑発的な表情のままで固まった。


・・・酷い。



・・・・・・かわいそうに内藤倫クンはその後4分30秒ほど高速剣で鋼鉄の塊と化した青木君を攻撃し続けたが全くダメージは通らなかったのだ・・・さらに剣は欠けた・・・。


引き分けで十分と思ったが・・・アフロの入れ知恵か。


“加速一現”


ハァハァと肩で息をしている内藤倫クンにその鋼鉄の塊と化したそのままの格好で青木君は体当たりを敢行し激突した。


グッシャ―――!


予想外のことに内藤倫クンは避けられず直撃だった。青木君はリキャスト10分以上かかるが鋼鉄の塊のまま急加速できるのだ、もちろん僕が教えたのだ。ただ・・・今使うとは思わなかったが、まあとにかく僕のお陰だ。同時に複数の彼女を持つイケメンの顔面に天誅というわけだ・・・。タイミングしかし良かったな。アフロが指示を出してる?


試合は5分で終了する・・・青木君の優勢勝ちだ。どれだけ攻撃しても両者ノーダメージだと引き分けになるのだが加速のタイミングは虚をつき・・・なかなか良かった。さすが青木君だ、この予選の間に星崎さんを落とすと言っていたが上手くいくかもしれないな。

(しかし鉄の塊が飛んでいくと言う、我ながら酷い技だな)


―――次鋒戦は村上君だ、村上君のTMPAは23500ほど(大した数値だ)。相手は魔獣族TMPA12000ほどの女生徒だ、スピード特化型だが全く戦闘にならないだろう。


相手が女性でやりにくそうだったがバーサクせずに余裕で村上君の勝利だった。

何故か倒した後で謝っていた・・・。


―――次は中堅ダブルスだ。こちらはオールバッカ―とアフロ隊長で、向こうは竹ノ内吾郎(男)、魔鳥族TMPA21000遠距離タイプと栄田マリン(女)、巨人族TMPA22000近接戦闘防御寄りバランスタイプだ。能力的には接戦が予想される、竜族であるオールバッカ―とアフロ隊長は防御力で優っているが経験その他は向こうが上だ。


ダブルスは闘技場が広くなるが戦闘開始と同時にオールバッカ―と栄田マリンが中央で戦闘開始、アフロと竹ノ内吾郎が遠距離戦を開始した。

アフロの魔装ライフル“九鉄”は強力な飛び道具だが今までの試合は闘技場が狭く戦いにくそうだった・・・一転ダブルスの闘技場は広い。アフロは一発撃っては高速で移動してオールバッカ―の援護射撃までしている。

一進一退だったがあっという間に差がついてきた。やはりアフロは知能が非常に高いのでは・・・。


竹ノ内吾郎クンの風魔法はかなり強力だがやや詠唱時間がかかり、その魔力集中にタイミングを合わせてアフロが魔装弾を撃っているため強力なランク3以上の風魔法が撃てなくなっているのだ。竹ノ内吾郎クンが痺れを切らせてランク1魔法の連射に切り替えるのと同時にアフロは回避行動を止めてフルパワーで“貫通魔弾群現”を栄田マリンに全弾命中させて撃破した。アフロはランク1魔法を数発くらったが竹ノ内吾郎クンは想定外のオールバッカ―の遠距離攻撃で予想以上のダメージをくらい吹き飛ばされて地面に凍り付きギブアップした(氷竜強いな、酷いな、欲しいな、すごいアホのオールバッカ―には勿体ない)。


(あれ、3勝したな。ん?準決勝に行くことになりそうだな、まじかベスト4って)


―――副将戦。

別にもう勝負は着いたのだがダークアリスと梶尾リナ(女)TMPA17500近接バランス型の1戦となった。2年生女子同士の戦いとなった。とりあえず黒川有栖が怪我さえしなければどうでもよかったが・・・。


ダークアリスの右ハイキックは―――というか右ハイキックしか攻撃方法がないが―――かなりの攻撃力だ、距離感、力のタメ方から魔力発動までタイミングもいいな、タイガーセンセのおかげだろう。初心者は器用貧乏より一芸に秀でた方がいい・・か。


盾を持っているためそこそこ防御力が高いはずの梶尾リナをあっさりキック一閃!撃破してしまった。勝負がついているため真面目に試合を見ていなかったけど。

あれ?勝ち名乗り後のダークアリスが近づいてくる。めっちゃいい表情しているけど・・・足も長いし、この人モデルとかの方が成功するんじゃ。

「見てくれましたか?じんめ先輩!あたしやりましたよ、先輩の敵は全員すり潰します!」

「あ、うん」暴力的過ぎる・・・モデルは無理だな。絶対ムリ。でも喫茶店ではおごってくれる・・・先輩としておごられてていいのだろうか。


ま、いっか。損してないし。


―――大将戦。

あれ?大将戦やるの?アフロ?・・・目配せするが返答はない。

まあ大学の推薦もらうためには勝利はアピールには・・・なるのかな、そういう意味だろうか。


大将戦の僕の相手は梶尾リナの兄、梶尾リゲキだTMPA29500、火竜族、攻撃特化型ってとこかな。身長はもういいや、すごく高いですね、モテるんだろうな。


・・・戦闘開始・・・まあでも遅い、とにかく遅い。


こちらを見失っている梶尾リゲキ君の真横から心窩部へ掌底を一発あてる、闘技場の端まで飛んで行って試合終了となった。梶尾リナが試合後駆け寄っていたが大丈夫。たいして怪我もしてないはず。


・・・あれ5戦全勝か・・・できすぎだな。上手くいきすぎているとよくないことが起きる気がする。


(絶対どこかで失敗する気が・・・僕以外は素人なんだから・・・)




―――準決勝の相手は第5高校のチームだったが、レギュラー数名の魔力が枯渇しており、補欠が2名出ているようだ、そもそも準々決勝の“デメロゴス”よりも弱くて。あれ?勝つかも・・・。


先鋒、ダイブツくん、格上相手だったが勝利、香港アクションスターってすごいな。

次鋒、オールバッカー、余計な被弾だらけだったが辛勝。

中堅、村上君、今日初めてのバーサクモード、相手に死人が出なくてよかった、勝利。

副将、アフロ、遠距離同士の戦いだったが相手は魔力切れを起こしており圧勝。

大将、僕。勝った。


あれ?5勝したな。

いやあなんか上手くいき過ぎでは。本当に良くないことが起きなきゃいいけど。


とういか次負けても準優勝じゃないか・・・それで十分じゃね?

つまりあれ?次、決勝戦じゃないか。


あ、そうか。決勝戦は当然・・・第一シードの“DD-stars”か。

ムリムリ!

もちろん棄権するよね?アフロ隊長・・・。




―――Z班は体育館の片隅にいても注目は今や半端ない感じだな、あんまり人に見られるのは嫌だがこの場合はチームだからかそこまで拒絶反応は出ない。村上君は緊張しているけどZ班残りはマイペースだ・・・全く緊張しない、つまり・・・もう結果は十分ということか?

まあ十分だろう、お披露目も済んだし。


アフロはどう考えてるんだろ。

「アフロ?なんとまあ。決勝戦だね?」

「キエ―――!もけよ!想定範囲内すべて予定通りであーる!」なんで?予想外だよ・・・。

「グモ―!フアッチュウウ!アチュ!アチュウ!」いきなり何言ってんねん?顔がデッカイし面白いよ。

「くっくく、ダイブツくん気合入っておるな!決勝戦はおまえがキーになる、英雄になる覚悟をしておくが良い!間違いない!おまえはダイブツくんだ!無二の男だ!女に惚れるな惚れさせろ!」などとエライ盛り上げているが大丈夫なの?戦う気?

「グモモモモモモ!!」両手を気持ち悪く交差させて何のポーズだダイブツくん。意味わかんねえ、いやマジで。


「あのアフロさん?アフロさん?意思疎通できているの?これは?」

「ふっ、愚問だな。もけ・・・無論できん!」できんのかい?

「・・・ダイブツくんを出すつもり?」まさか・・・決勝戦を勝つ気なの・・・相手はだって・・・?

「無論勝つつもりである」むう?心を読まれているかのようだ。もともと自信家だが・・・今日は一体?


ふむ。


勝つと言葉に出して言ったなアフロ、勝算ありという意味だよね。上目づかいに見上げても一向に反応は無い。

「・・・面白い・・・面白いよアフロ。DD-starsに2年間勝っているのは“ホーリーライト”だけだからね。今までの敵とは桁が・・・」

「無論段違いであろうな、だが問題あるまい」んんん!?意識を総動員して考える。


確実に勝てるということ?


そういう仮定であれば、僕は賢いのだ多分・・・ある解答にたどり着くのにそれほど時間はかからなかったが・・・マジか?


(そうか!なるほど!)


「・・・なるほどダイブツくんがキーか。・・・つまりグループBに参戦したのはダイブツくんのため?」

「いい感しておるな、もけ」楽しそうな横顔だ。

「最初から計算づくだったと?・・・なるほど・・・合点がいったけど」


いやでもちょっと待てよ・・・上手くいくかな?

相手は降魔六学園十傑が3人も入っている“DD-stars”だよ。

十傑には入っていないが超スピードの大津留ジェニファーも超パワーの武野島環奈だって相当な強さだ。



勝負にすら・・・。

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