第41話2-10-2.インターハイ校内予選―――どう見てもヤバい奴等

その後の“Z班”の問題児たち・・・。

インハイ予選は・・・問題を起こして出場停止・・・。


超不良のダークアリスが場外乱闘したり。

不良もどきのオールバッカ―が行方不明になったり。

ハゲの青木君がセクハラしたり。

巨大な村上君がトイレで迷子になったり。

歩く放送禁止用語の星崎真名子が教師に呼び出されたり。

緑アフロ隊長が世界を達観して山籠もりしたり。

僕が人間不信でおかしくなったり。

あと・・・ダイブツくんが脱いで逮捕されたり。


・・・そんな出場停止になることなく、予想外にそんなに問題は無く何故か順調だった。


「てめえダイブツ!脱ぐんじゃねえ!殺されてえのか?」「グモ~っは!」

長身で2年生女子のダークアリスが3年生男子のダイブツくんを頭を掴んで振り回している・・・なんでこんなに順調なんだろう。



―――2回戦。第3高校チーム“戦隊・電磁アタッカー”と対戦。

先鋒、ダイブツくん。連打で圧勝。

次鋒、星崎さん。ダッシュして平手打ちだけで勝った。

中堅、村上くん、青木君。またも村上くんのダボーグランドデストロイヤーなる技で快勝。

副将、緑アフロ隊長。魔装銃の九鉄をバックジャンプしながら連射。無傷で勝利。

大将、僕こともけ。勝った。



―――3回戦。またも第3高校チーム“クリムゾンノート”と対戦。

先鋒、ダイブツくん。殴打戦になったが圧勝、予想の数倍強い・・。

次鋒、オールバッカ―。距離感が悪いが危なげなく勝利。レークス強すぎる。

中堅、村上くん、青木君。青木君は何もしなかったが快勝。

副将、緑アフロ隊長。一時接近されたが相手を捌き完勝。

大将、僕は勝った。



―――時計は13:15。一応ランチタイムだ、お弁当が支給されるが・・・まあ普通はどこのチームも選手は食べない。

「キエ――!皆の者!ご苦労であった!Z班は快調な滑り出しである!今後は戦闘のレベルも上がる!心してかかるように!鳥井教官何か追加ありましょうか?」

「・・・いいえ、何も言うことありません。ここまで来たらやることをやるだけです。諦めなければ結果はついてきます。みんなを信じます」燃えてるなあ。


全員がお弁当を食べ始めている・・・幕内弁当というやつだろう・・・試合中は普通食べないんだけどな・・・。僕のは持って帰って夕飯にしようかな。

(しかし危なげなく全勝で3回戦までくるなんて・・・まじか。予想よりみんな素人のくせに動きがいい、なぜか村上君以外は緊張していない)

お弁当のエビフライを頬張る隣にいるアフロに目を移す。

「そういえばアフロ」

「なんじゃい?もけ」

「ダイブツくんのアレはなに?拳法みたいな・・・あんなことできたっけ?」

「おお!アレか!・・・無論できん!」

ええ?できへんのかい?

「えええ?」

「つまり昨日な香港スター列伝を読ませたのでのう・・・DVDも付いていたのである・・・」

「はあ??」

「だからダイブツくんは香港アクションスターになりきっている訳であろう」

「はああ?え?・・・訳であろうって・・・まじかよ。アフロ。ダイブツくん、そこそこ強いよ、タイミングや技の構成とか、カウンターのタイミングとか、殴られても怯まないし。あの挑発や掛け声は香港スターのマネなのか」

「キエ――!くく・・・。これも戦術よのう、ちなみにマネではない。投影であろう」意味さっぱわかんないけど・・・しかしアフロ、すごい勢いで食べているけど大丈夫なのか?

みんなも、普通試合中は食べないんだってば。


(信じられないな・・・みんな。TMPAは跳ね上がっているけど・・・こんなに強くなるとは。まあでもみんなほとんど召喚格闘の素人だしどっかで凡ミス連射するんだろうけど)

「それにしても徐々に注目を集めているね、そろそろバレるかも」もちろん全員が竜族であるということだ。

「くっくく。もけよ。台風の目になるのはこれからであろう・・・」

(魔装させないのは隠しているのかな、何か考えがあるのか。・・・そういうことなら一肌脱ぐか・・・)

「では僕も戦術とやらを行使してくるよ、アフロ。すぐもどる」

「む?・・・まかせるが。・・・ところでもけは弁当は食わんのか?」アフロは余裕たっぷりだな。

「・・・食べます」油断も隙もあったもんじゃない。お弁当は影にしまっておこう。



―――そして僕は隣の体育館の選手通路に来た、今は周囲に誰もいない。誰かに見られるようなヘマはしない。

フィーネの鎧を着て、竜殺槍を持って・・・臨戦態勢だ。

ちょうど今、この体育館で3回戦が終わったチームがあるのだ。

もうすぐ意気揚々とこの通路を通るだろう。

第2高校では強豪チームだ、ポイントゲッターの竜族も5名もいる。

チーム“マインドブレイク”の凱旋だ。


全部で17名のチームだが9名しかいない、全員男子生徒、教官はいない。レギュラーでない1年生は上級生のお弁当を取りに行ったり、次の4回戦と昼食の準備のためここにはいないようだ・・・霊眼で確認・・・下級生はドリンク等の軽食の準備中のようだ。つまり9名というのは2年と3年だけだ。9名中7名はとてもよく知っている。

2名は見たこと無いな。

遠隔視すると“マインドブレイク”は4勝1敗だったようだ、見事な成績だ。是非祝辞を述べないといけない。


控室へ向かう通路・・・さながらトンネルのような場所だ。

“マインドブレイク”の主にレギュラーの面々はワイワイしている、微笑ましいことだ。それにしても気配を消しているとはいえ誰も僕に気付かないとは肉眼で見えるでしょう、アフロっぽく言えば間違いない、自信を持て、注意散漫であろう。

まあ、挨拶しなければな。

「やあ、“マインドブレイク”のみなさん。快勝でしたね」


うわっ!

えあっ?

ひっ!!

あ!6校の!

あぁぁぁ・・・。

(口々に何を言っているんだか、予想以上の反応だ)


驚かせて申し訳ないな・・・優しく話そう。

「えっとだからこんにちは。チーム“Z班”の神明全です。つぎ4回戦で当たりますね」

「うぁ!ああ!あ?」かろうじて声が出ているのは“マインドブレイク”部長の3年の万蛇木君だ、竜族で身長182㎝、体重90Kgほど・・・バランスのいい強豪だ。あとのメンバーは一言もしゃべらなくなった。通路の温度が何℃も下がったように暗くなったかのように感じているようだ。


「ああ、誰かと思えば万蛇木君じゃないですか?お久しぶりですね?」

わざとらしいかな、待ち伏せしておいて。

「いやあ、いえいえ」頭を忙しなくかいている万蛇木君の額は大粒の汗が出ている、試合で疲れたのか?なと。


「最近は会ってくれないんですね?思い出すと呼び出しは最後は5月ごろ・・・何かあったんですか?」

「ぃえいえそんな」

「また呼び出してくれるんでしょう?万蛇木君」意地悪いかな・・・まあいいや。

「いえ・・いえそんなそのような」万蛇木君は顔から汗が噴き出しているようだ、みるみる顔色も悪くなっていく・・、とうとう顔から床に汗がポタポタ垂れだした。トンネルのような通路はさらに寒気を増しているようだ。


「万蛇木くん、汗だくじゃないですか?魔術保健医をよびましょうか?」

「はぁ・。いえいぇそんな、いえ」


(ちょっと驚かせようと思ったのだが、すでに驚いてしまっているな・・・まあでもせっかくだし実験しよう)


慎重に通路から漏れないように周囲に竜殺属性の魔力圧を高めていく。

特に竜族の召喚士には効果が高いはずだ、影の中にいる召喚竜には特に・・・竜族で無いものにどれだけ効果あるか分からないが。まあある意味よい実験にもなる。


ひっ!

あ!あ!あ!

ぅ・・。

ぐぅう。


ほぼ9人全員に効果があるようだ。僕が飛ばしているのは殺気だ、まさしく竜殺の殺気。

・・・竜族以外にも効果あるのは良い実験結果といえよう、見落とさないように観察しなくては。

彼らの影の中の竜は完全にマヒに近い状態だ。それは本体にも影響がある。

9人とも個人差はあるが直立不動で全く動けないようだ。数名はガクガク震えている、目は焦点が合っていない。

ああ2名は立ったまま吐いているな、顔の血管が浮き出てプルプルしている。竜族召喚士もそれ以外の召喚士もあまり差がないが・・・TMPAも関係しているようだ。僕との距離はどうだろう?

いや、竜族の5人のほうがやや影響が強いか。


ひ、たすたすけけ・・

うぼぉ・ぉ・。

ケハッ・・・。

ひっっひっ。


立ったまま意識を失ったものは2人かな。万蛇木君と他3名の竜族は呼吸もマヒしたようだ、痙攣し始めているな、意識はまだあると。ほぼ全員、口角からよだれがとめどもなく出ている。

まあこんなところか。


さて・・・竜殺の殺気を何もなかったように微塵もなく消失させる。

全員が糸の切れた操り人形のようにゆっくり倒れこむ。


ハァハアハァ・・・

あああ!

ゲホッゲホッ!


うん・・、TMPA25000程度では立っていられるものはいないと・・・上出来だな。

調子悪そうだ・・・優しい僕は声をかけることにする。

「どうかしましたか?まあとにかく万蛇木くん、あと周りの人も4回戦はお互い悔いのないように、全力で戦いましょうね、全力で。・・・顔色が悪いですねみなさん大丈夫ですか?」

こんなところかな・・・。


“空間覚醒移送”

さっさとテレポートで元の体育館へ“Z班”のところへ帰る。



って、え?あらあら?みんなまだ食べてるんかい、ん?お弁当の空箱が多いな。

「みんな、まさか他のチームのお弁当もらったんじゃ?」

「そうなんですよ!Z班の超絶!銀河神話伝説に期待しているって言ってですね」

あほか、こいつら。

「青木君、食べ過ぎるとコンディションが悪くなるので・・・」

だめだコイツ等・・・。絶対午後は良くないことが起きる。


―――4回戦は第2高校“マインドブレイク”が対戦相手のはずだったが棄権してなんと準々決勝へそのまま進めることになった。

「おれっちたちに恐れをなしたってことか!すげーラッキーだぜ!おい!」


腑に落ちない感じの緑アフロ隊長が近づいてきた・・僕の横に立つ。

「もけ?ひょっとしなくても何かしたのであろう?」

「まさかね。アフロ。何もしてないよ」


挨拶しただけだし。何もしてないはず・・・。


“マインドブレイク”は僕の同い年の義理の弟、神明帝の腰ぎんちゃくチームの一つなのだ。

腰ぎんちゃく・・・まあそういうのも生きる処世術だし万蛇木くん達が悪いとは思わない。

ほぼ2年間。一カ月に1回か2回。万蛇木君たちに呼び出されてボコボコにされてもなんとも思わないし、制服や教科書を何着も何冊も燃やされてもなんとも思わない。歯が折れても怪我をしても回復させればいいし。まあそういうものなのだ。やり返そうとも思わないし恨みもない、そうせざるを得ないプレッシャーを神明帝からかけられているのだろうし、それに自分の立場をよくするため神明帝の期待に答えようとするのも分からなくもない。まあ触媒になりうる僕の長い髪の毛を引っ張り、引きずり回されて髪がブチブチ千切れるのは少しいやだったが。

ただ幼稚だ。この僕が西園寺桔梗に勝ったくらいで押し曲げる生き方ならそもそも自分が小物だと言っているようなものだ。西園寺桔梗と戦える相手だと分かってなお僕を呼び出すくらいじゃないと・・・見込み無しだろう。


いじめ倒した僕が結構強かった・・・その驚き・・・その潜在的恐怖をすこし助長してみるという小実験は成功だといえるだろう。何かに応用できるといいが・・・殺気で相手を威圧する・・・とか。



あれ・・・“Z班”は次に駒を進めるのか・・・。

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