第38話2-8-7.生命の裏庭―――生命の箱庭―――
―――もう9月になっているが今日で一応合宿は最終日だ・・・いや最終日の前日になるのか。
明日早朝には学園へ帰るのだ。
僕が2年間ずっとやってきたように竜を影に入れずに学園へもどり一週間でも8倍速レベルアップをしようとも考えたが・・・次元環の外からの竜への魔力の供給は非常に疲れるのだ。そんなことを僕は2年ほども続けているけど・・・Z班のみんなは悪いが凡人、いやところどころ凡人以下・・・いや完全に凡人未満のデキソコナイなのだから絶対に無理だと思うので今日で切り上げることにしたのだ。予定通り63日間だ・・・。
しかし、しかしだ、合宿は予想を遥か超えた成果だった。
初日に全員がなぜかとてつもない低い確率だが全員だよ・・・竜の卵と感覚合一を果たしたのだ。そもそもこれが無茶苦茶な低確率だ。そして60日間もクズたちは
タイガーセンセは2学期がもう始まっており第6高校へ名残惜しそうに10日ほど前に戻っていった。そしてずっとタイガーは相変わらず僕に優しかった、これも不思議だが。料理当番はタイガーセンセが抜けて青木君が一旦入ったのだが星崎さんがなぜか青木君は料理向いていないとかで結局、僕と星崎真名子さんと黒川有栖の3人が料理当番となったのだ。
ちなみにZ班メンバーは強引にテレポートで学園の旧美術講堂まで帰るため、あらかじめ全員に帰るポイント(位置)と簡易契約してある。それによって明日朝6時までここにいることが可能なのだ。この人数だと僕の魔力だけでは足りずに勿体ない無色の魔晶石―――末端価格2000万円―――を複数使おうかと思ったが・・・とんでもない誤算だ。なんと僕と星崎真名子と“二重奏”“空間覚醒移送”を行うことで無色の魔晶石なしで全員テレポートできることに計算上なっている。
合宿は竜の召喚士となることとTMPAアップが目的であったが、全員竜の召喚士となり。さらに黒川有栖と村上君はTMPA2万越え。なんと有栖はTMA23000などという数字だ。オールバッカ―、アフロ隊長、青木君もTMPA19000台だ。前代未聞の超スピードレベルアップだろう、自分で計画しておいてなんだが・・・。
TMPA10000前後で一人前の召喚士。このエリートしか入れないらしい降魔六学園においても3年生でTMPA25000はトップクラスの数値。TMPA30000だと地方の大会で優勝できるレベルだ。TMPA20000超えとなると全国大会でも弱いとはみなされないだろう。さらに竜族はほかの種族に比べて非常に防御力が高く、そのタフネスにウンザリすることになる。竜族というだけで強い、戦いたくない、特別という召喚士は降魔六学園にも多いが竜族が実際突出しているのは防御力と防御特性なのだ。精神感応系はまず効かない。もちろん魔装鎧を着装しているのが絶対条件だが竜族は物理攻撃も魔法攻撃にも防御耐性が高いのだ。一部の魔族と僕の竜殺属性はこの竜族の耐性を下げる、実際の防御力を下げるわけではない。あと珍しい特性では第1高校最強チームの“ホーリーライト”高成弟の妖刀はすべての召喚種族の耐性を無効化してしまう。
さてメンバーはというと。
毒竜“リニアスカ―”を騎竜とするアフロは能力的に遠距離アタッカーになった。限られた狭い空間での試合ではなかなか力を発揮できないだろうが竜族の遠距離アタッカーは防御力がそこそこありかなり強いだろう。本来は非常に広いところでの戦闘向きだ。僕の霊眼と比べても仕方ないがアフロは非常に視力が良くなっている、望遠鏡いらずといったところか。魔装銃“九鉄”、ロングライフルタイプを魔装武器とした。
オールバッカ―は死んでしまえ。氷竜なんて。あああ・・・騎竜に氷竜欲しい。
・・・まあいい。オールバッカーはバランスタイプだが召喚戦士としての潜在能力は・・・なんだ・・・認めたくないがトップクラスだ。いやもう氷竜“レークス”が強すぎるのだ。とりあえず戦闘時の足の運び方と近距離でも中間距離でも遠距離でも攻撃できる魔装武器、刃の部分がやや幅広い“ギド”という竜王家の武器をあげた。潜在能力は桔梗クラス・・・?まさかねえ。
2人ともクセのある特殊魔装状態となる青木君と村上君は色々考えたがどうにもならず5秒で匙を投げようと思ったが、アフロにとりあえず団体戦の中堅戦でダブルスで戦えればいいとのことで試行錯誤した結果、我ながら面白いバランスに仕上がった。金竜“えっと銀河なんとか”を騎竜とする青木君は特殊魔装化するとTMPA換算で19800の防御力の塊となり文字通り鋼鉄の塊となる(実際鋼鉄よりずっと硬い上、展性もある)。しかも物理耐性も魔法耐性も99%となる。つまり・・・攻撃力1万9千以下の攻撃をほぼ完全に無効化できる、これはとんでもない防御力で降魔六学園でも僕や桔梗や葵くらいでないとほとんど攻撃が通らない。しかしあらゆる関節も固まり動けなくなるのだ・・・役に立たない。毒竜“フランソワーズ”と契約した村上君は特殊魔装化すると身体が真っ赤になりマッチョになり毛むくじゃらになりTMPAが跳ね上がり天へ向かって吠えるのだ。DD-starsの纐纈君の武神モードよりTMPAの増幅率が高く強いのだが知能が大幅に下がり敵味方の区別なく噛みつくようになる。これを克服するために彼の魔晶石を強力なものにして調整を重ねて、口の周りだけ骨を変形させてマスクを作ることに成功したのだ。そしてダブルスでしか全く戦えないコンビが誕生した。でもそこそこ強いかも。
そして黒川有栖は期待に反して、木竜“キャストフロール”を騎竜として非常に伸びた伸びた。TMPA23000、グロウスエッグも使っていないのにだ。ただ彼女は召喚戦闘は素人だ。とにかく得意な攻撃は弱い奴への右廻し蹴りだと言うので攻撃魔力をインパクトの瞬間だけ高める修行をさせた。体術はそこそこで将来は大津留ジュニファーのような超接近型のスピード特化型に成長するかもしれないがまあ今はどうしようもない。竜族TMPA23000の能力を完全に発揮するのは難しいだろうがZ班第二部の連中を除けば掃きだめの第6高校内であれば最強クラスだろう。まあ来年に期待だ・・・まあその活躍を僕が見ることはないだろう。
ダイブツくんは予想でTMPA1万くらいだろう、僕の霊眼でもよく見えないのだ。竜は特発種である“ペルシド”だ。能力は激レアだ、召喚士の歴史4000年で彼だけだろう。彼は無意識化に周囲の魔力術式を破壊する。ほぼあらゆる魔法攻撃が効かないが、自身も魔法攻撃はできず、回復魔法も無力化してしまう。ただ魔法で浮かせた物質による攻撃など物理攻撃は当然通る、無効化できない。遠距離攻撃ができないので近接戦闘しかないが実際試合では使いにくい、戦闘ではお互い遠距離攻撃が無い状態となり殴り合いになるわけだがTMPA1万ではそもそもそこまで強くないし、不良にからまれるくらいなら瞬殺できるだろうけど。ただ実戦なら状況によっては恐ろしい能力となるだろう。魔装武器は両手にナックルにした。彼の魔装鎧はすべて透明にする必要があり魔装鎧を纏うと・・・なんかすごい気持ちワル。
この星崎真名子さんは・・・なんだろうショートブーツを履いたお洒落な女子にしか見えない、料理も上手だ、ニャンブ―ちゃんってなんだったの?別人のようだ。竜族との感覚合一の影響なんだろうか、不明だ。
特発種“ミイロミューン”の能力は謎が多くよく分からないがあらゆる物質やエネルギーの
ああそうそう何故かでも青木君とはうまくいかないようだ。青木君は星崎真名子のことを好きらしく合宿中3度くらい告白してフラれている。僕は恋愛的な告白というものを始めて間近で見たのでなんか青木君と星崎さん、上手くいったらいいのにとか思うのだが。
「あのじんめ先輩。ニンジンもう十分です。小さく切りましたね」
「ああそう、ごめん黒川さん、ちょっと考え事してたもんで」背の高い女性を見上げる・・・思いっきり考え事をしていた、ニンジンを切っていたんだった。
「ニンジン小さくても大丈夫ですよ。・・・あの?あててみましょうか?じんめ先輩」
しまったカレーにいれるニンジンってもっと大きいんだったけ?そしてダークアリスが何か喋っている。
「え?なに?」
「ひょっとして・・・あたしの事考えていたとか?」
ああそうだね、何から召喚戦闘って教えたらいいのか考えているんだ。
「ああ、そうだね、黒川さんのことも考えてたよ」
「ホント!うれしい先輩!先輩ってなんか攻めても攻めてもかわされちゃうし。でもうれしいよ!先輩!あたしも先輩の事ばっか考えちゃう、こんなの初めてなの自分でも・・・こんなの戸惑うって言うか」
(攻めても攻めてもってアリスと模擬戦したことないけどイメージトレーニングのことだろうか?まあそりゃ僕のスピードならかわすでしょうね)
「まあそういうイメージって大事だよ、自分自身を成長させていく上ではね」
「わかるよ、先輩。自分の命よりずっとずっと大事なの」あれ?まともに成長している?
あ?向こうから殺気?じゃないか?
「嫌いだっていってるじゃない!」
僕とアリスは声のする方向を見る。星崎さんと・・・青木君か。
「ふふふのふ!嫌がるとこもチャーミングです。麗しのエロ女神様」
ゴス!
「ふごぉお!」
おお珍しい攻撃するんだ、星崎さんのキックが青木君の股間に入った。
微笑ましいな。
「同じ空間にいるのもいやなの、わかってくれるよね?青木君!数々のセクハラは忘れてあげるから近くに来ないでお願い」
「ふっふふ、君の君の身体を縛っている鎖を解き放ってあげるよ。僕の落花生スィートボンバーで・・・」
フラっと黒川有栖が向かっていった。
「おい!青木!ぶち殺すぞ!」
「ぁひゃ!」
どひゃあと青木君は逃げていった。さすが超不良女は怖いな、黒アリスのカレシになる奴って大変だろうな、いや頼りがいがあるのかな・・・つかアリスは恋愛とかしなさそうだもんな。
プリプリと怒っているように見える星崎さんがカレー粉と小麦粉を持って近づいてくる。目が三角に吊り上がり怒ってるな、まあでも好きだと言ってくる仲間を本気で嫌うはずないだろう、ひょっとして青木君と恋人同士になったりして。
「本当にキライです、寒気がします」
「だろうね、真名子先輩・・・鳥肌立ってんじゃん」
「ガチキモイです。くどいし、自分の幼い欲望ばっかり」
「青木のハゲ!あたしが締めてやってもいいけど?鋼鉄の塊になるんだったら重りつけて川に沈めてやるし!」
「大丈夫、とどめは自分でさします・・・ああもけクン。今日もかわゆいね。ありがとうね。うんうん、野菜切ってくれて」
しかし女子の会話って・・・かわいいな、癒される。
「ああごめんよ。あのなんかニンジン細かくなりすぎちゃって」
「いいんですよカレーってもともとソースの状態でこの国に伝来したそうですよ」
「ふうん」機嫌は悪そうじゃないし、青木君の恋は上手くいくんじゃないのかな。
「じゃあもけクンはお皿を人数分持ってきてね、カレー用の取り皿を、食器の場所分かるよね?」
「あ、うんだいたいね」
霊眼でつい見ているが・・・僕が去ったあとも2人は話し込んでいる。
「どうどうどう?どうだったの有栖さん、しばらく2人きりになれたでしょ?進展は?」
「真名子姉さん、聞いてよ、それが結構いい感じでさ、なんかいけそう。最終日だし既成事実が欲しいよね。・・・奥手かな先輩」
「まじでまじでまじで、すごいじゃない。あたしなんてハゲ芋虫しか寄ってこないしキモイわ、マジ殺したい・・・あたしももけクンがいいな~」
「それはマジ勘弁!合宿だって期待したのにあの鳥井のババアだけでも手強くて困ってたのに、もう先輩の競争率高すぎだし、まさか鳥井と何もないと思うけどさ」
「うーん。あと城嶋由良とかもヤバそうだもんね、性格悪そうだけど転校してきたものね。・・・有栖さん。応援するよ。がんばろう!有栖のガッツならいける!といいけどね」
「あたし本気なんだ、城嶋由良にも鳥井のババアにも誰にも負けたくないんだ」
霊眼でなんとなく覗いていたのだが・・・おおお、すごい話だな。タイガーセンセや城嶋由良と張り合うつもりなのか・・・結構戦闘スキル高いぞ彼女たちは。ダークアリス、上昇志向があるのはいいことだね、ひょっとしたらTMPAだけではなくて召喚戦闘の技術も伸びるのが早いかもしれないな。そして星崎さんはひょっとして青木君のこと好きなんじゃないのかな、僕の予想では。
さて・・・そして最後に合宿に参加中の“もけ”こと僕のことだ、問題出現だ。僕の甲竜モルネは蛹化してもう30日以上になるがまだ出てこないのだ。まあTMPAはそれほど下がってないし僕自身は戦闘可能だしドラゴニックオーラも健在のようだし、とりあえずいいんだけど。
蛹化が30日以上って長すぎる。そもそも8倍速なのにどうなってる。やっぱ才能が無いのはどうしようもない。第四段階になったモルネが出てきたら色々調整するつもりだったし必要に応じて影にいれて本契約するはずだったのに。
ああ・・・僕はこの60日ほどの合宿でTMPAは少し弱体化。左肩の呪詛はそのまま。モルネが出てこないので自身の新しい魔装鎧は計算途中。まだまだ女性用のフィーネの鎧を使うしかない。才能が能力がない僕は睡眠時間を削って努力するしかないのだ。しかし、しかし「しかしカレーおいしくない?・・・ニンジンは見当たらないけど」僕が切ったニンジンは溶けてしまったのか。
「ほほう、もけはあり得ないほど天才なんだが死ぬほどポンコツな人間なのだ。新しい術式なんてホイホイ組めるのは一部の大学院の研究施設とZ班の誇る最終兵器“もけ”だけであろう。そして間違いないが料理は才能あるのう」
「いやいや味付けはノータッチだよ。さっぱわかんないよ」知らんがな。
「いいえ~もけクン、かわいいだけじゃなくってお料理も才能ありですよ」
「じんめ先輩はかわいいだけどころか、めちゃくちゃつえーじゃねえか、世界最強だぜコラ」
アリス、まじめに成長させていけば僕なんてすぐ抜けるよ。ドラゴニックオーラでTMPAが水増ししているだけだ。これは多分呪詛のせいだろうと思う、命の危険でドラゴニックオーラが発動するのなら左肩の呪詛のせいでずっと命の危険があるのだ、死の呪詛はクロニック状態つまり呪詛が眠っている状態でも年4%くらいの確率で宿主の命を奪うのだ。アキュート状態だとあっという間に100%死亡になる。西園寺御美奈がその気になればいつでもアキュート状態にできるのだ。
しかしみんなワイワイ盛り上がっているな楽しそうだ、この2ヵ月間僕もまるで仲間のような錯覚に何度か陥った。
でもそれは幻想だ・・・ただの。
「―――ほんとだぜ、もけちゃんはすげえよ!こんなすげえ竜と契約させてくれてよ!武器くれてよ、魔装鎧作ってくれてよ!戦い方からオリジナルの術まで教えてくれたんだぜ!夏奈も惚れ直すぜ」
だからそれは自分のためなんだ、オリジナルの術はバカだから易しく作り替えたんだ。しかし?夏奈さんだっけ?夏美はどこ行ったんだ。
「もけさん、ありがとうございました。バーサクでみなさまに今まで迷惑ばかりおかけしたのにこんな戦い方を指南してくださるなんて脱帽ですよ」
「もけさん、ほんとにすごいです、こんなに硬くなれるなんて最硬ですよ、ダブルス頑張ります、愛のために!おらぁぁぁああ!」
だからさ、アフロに言われた通りいろいろ考えて組み合わせただけだ。実戦にダブルスなんてないし。どうでもいいんだ。
「あたしなんて召喚士になれなかったら今月末に放校だったし、もしそうなっていたら先輩の役に立てないとこだった、気合で恩返ししないと女じゃない!」
ま、僕が生きてる間に恩返しは無理だね。アリスは来年だね、公式戦で間違いなく活躍できるだろう。
「もけクンってすごいよね、あたしにもみんなにも命をくれたよ。見えるの。もけクンてすごい力って言うか光に守られていて命があふれてくるの」
竜と感覚合一できたのはみんなの持って生まれた何かであって僕は関係ない。光る力ってなに?ドラゴニックオーラのことか、見えないはずだけど。
「キエ―!もけよ、仲間ってのは今日から仲間なって言ってはじめるもんじゃないのである、そうであろう?・・・
なにを見透かしているんだ、そのセリフはやめてくれ。だから仲間じゃないんだって仲間はいらない、友人もいらないタイガーもいらないアビルも・・・一人で生きて死ぬのが幸せなんだ、余計なことは考えたくない。全然いらない・・・住む世界が違うんだ。僕はみんなを利用するだけなんだ。みんなの幸せを願ったりしない。僕の知らないところで好きなだけ活躍すればいい。
あれ?なんで泣きそうなんだ。仲間なんていらない、ただのどうでもいいメイドのアビルも僕がいなければこんな墓地にいる必要はない、あんな傷を作って狙われることもないんだ。どうしても僕はいくつか生きている間にすることがある。ああ、なんなんだこの乖離した感情は。感情を殺さないと。仲間はいらない・・・誰にも迷惑はかけたくない、でもまあみんなには、そこそこ幸せになって欲しいのかな今は・・・よくわからない。
「グッグ!グモ―!グモ―!カレーもっと食べたいのじゃー!!」危ない、みんなの前で泣くとこだった、ダイブツくんに救われるとは。
―――荷造りして仮眠してそしてもうすぐ時間だ。
みんなの竜を影に入れて本契約とする。竜族との契約は解除不可能だ。
並んだ7体の竜は中々育っており壮観だ。見入っても仕方ないけど。
それぞれの影に竜を入れていく。
なんだかんだでみんないい顔している。
「グモ?何をするつもりなのじゃー?」
「じゃあみんないいね。輪になって。まず次元環を出るよ」
シューッバッバ!!
墓地の屋敷の地下だ、僕以外は2ヵ月ぶりか。
おやメイド服姿のアビルが会釈してくる・・・ずっと待ってたのか。
「ああ、アビル、まっててくれたの?」
「もちろんでございますアキラさま、いつでもアビルは待っております、そして皆様のお弁当をつくりましたので朝ご飯にしてくださいませ」
しっかし・・・こいつらずっと・・・テンション高いままやな・・・なんなんだ。
「おおお!アビルちゃん!会いたかったぜえ!合コンの話し、考えてくれよな!合コン請負人・・・」
「キエ――――!節操ないのう、オールバカ、自重せい!・・・お弁当頂きます」
「グモングモン!帰りたくないのじゃー!向こうに住みたいのじゃーー!」
「お世話になりあました、アビルさ・・・キャ!青木君わざとでしょ、このゴミ!」
「真名子先輩は覚醒魔法で忙しいんだよ。顔削ったろか!青木!」
「るーるるるる!愛!それは2人の白い壁~ウッガ!痛い!」
「あのお弁当ありがとうございます。あのトイレ行ってる時間あるかな」
このままみんな折角輪になっているのでそのまま学園まで転移することにした。予定より遅れていてもう朝7時前だ。
「じゃああの星崎さん、覚醒魔法は初めてだと思うけど能力的には余裕のはずなので、いきましょう、みんな輪から出ないように」「はい、もけクン」
「おさわり禁止だからな青木!」
さて・・・僕と星崎さんでシンクロして魔力を高める。
“二重奏”
“空間覚醒移送”
バッシャ―――――!!!!
さて問題なく学園の旧美術講堂の内部に到着だ。周囲にすこし埃がたったけど大したことはない。
2ヵ月もたつと少し懐かしい感じだ。思ったより汚れてないな・・・いや前よりずっと旧美術講堂がキレイな気がする・・・タイガーが掃除したのかな。
しかし覚醒魔法できていたな・・・星崎真名子・・・さらに化けるかもしれない。
「キエ―――!みなのもの!合宿ご苦労であった!とくにもけ、世話になったのう!アビル殿によろしく伝えてくれ。以下略!解散である」
「おれっち髪の毛だいぶのびたぜえ、青木ちゃんは自分で剃ってるんだな、感心したぜえ!」
「グモ――!あの場所に戻りたいのじゃ!あの場所がお家なのじゃ」
旧美術講堂の玄関が開いてタイガーセンセが入ってくる。外でずっと待ってたのか。
「みんな、お帰りー!」
タイガーセンセはまっすぐみんなのところへ走ってきて・・・あれ?抱きしめられた。
「あきら、じゃなかったじんめちゃん、帰って来たね。ああこの感触だわ・・・おつかれさ・・・」
「ダ――!だから先輩に触んなって、ババア!」
まあ、もういいや、そこそこ楽しいイベントだった。暗雲立ち込める僕の人生の中で多分もっともまともなイベントだったのだろう。
多分きっと多分。
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