【10】幕間
そこは真っ白い部屋だった。
円形に配置された数枚の黒いモノリスに囲まれた大きな革の椅子。どうやら一本脚が回転し、周囲を座ったまま見渡せる様だ。
そして、左右の肘掛けの間にテーブルが渡してあり、そこには赤ワインの瓶とグラス、チーズやパン、蝸牛とキノコのオイル煮などの軽いツマミが乗っている。
その椅子に深々と腰を埋めるのは、この狂ったゲームを主宰した神様であった。
モノリスの表面にはラエルから送られてくる映像が映し出されていた。
「ひっひっひ……ここで各人のステータスでも確認しておくかのう」
そう独り言ちながら白い髭を揺らし、右手の人指し指をモノリスに向けた。
すると、画面が切り替わり黄色い文字が浮かび上がる。
「まずは本命のこの三名……」
・名前【メルクリア・ユピテリオ】
・クラス【賢者】
・種族【人間】
・スキル【神算鬼謀level8】【安眠level8】【ex全魔法level8】
・接近戦【B】
・射撃【B】
・魔法【S+】
・物理防御【B】
・魔法防御【S+】
・機動力【D】
・主な装備【カリューケリオン パジャマ ナイトキャップ 眼鏡】
*スキルはlevel8が最高。ステータス評価はEが最低でS+が最高。
「……フィジカル面はやや弱いが、それを補って余りある魔法の力がある。
なぜなら彼女はすべての術式の最高位である第九級位を操れる唯一の存在じゃ。流石は伝説の大賢者といったところか。
優勝候補大本命じゃ。
謀はかりごとの際に、大幅な知力ボーナスがつく【神算鬼謀level8】も強い。
しかし、性格がバカなのと、このゲームを放棄して脱出しようとしているのは不安材料じゃの……。
因みに射撃の項目は現時点で飛び道具を持っていない者は全員E判定となっている。
こやつの武器であるカリューケリオンは、射撃武器にも形態変化する事が出来るので、それを込みでB判定となっておるの。
安眠スキルは単に良く眠れる様になるスキルじゃが、最高のレベル8ともなると、どれほどの安眠なのかワシにはちょっと想像がつかんな。まあ戦いには無関係なスキルじゃからどうだって良いが。無駄な才能じゃの。
……こいつの魔法は規格外に強すぎるから、巻き込まれない様にラエルの距離には気をつけねばならん。
こんなところか。次は……」
・名前【カイン・オーコナー】
・クラス【パーティ追放者】
・種族【人間】
・スキル【魔導銃剣level8】【錬金術level5】【exチート無双level8】
・接近戦【S+】
・射撃【A+】
・魔法【B】
・物理防御【A】
・魔法防御【A】
・機動力【A】
・主な装備【カネサダM892
「単純な戦闘能力でいったら、この男じゃろうな。
残虐性も充分じゃ。
しかし、何じゃろな……。
こいつ、調子が悪いのかもしれん。
現在、おっさんの娘と交戦中じゃが、こやつの実力ならもう勝負が決まっていてもおかしくないはずじゃのに……。
安定感のなさが不安材料といえるかもれんの。
因みにこの世界の錬金術は、アイテムやゴーレム系のモンスターを精製する術ぐらいに考えておけば間違いはない。
次は……」
・名前【ギーガー】
・クラス【魔王】
・種族【魔族】
・スキル【魔体術level6】【邪術level6】【ex形態変化level2】
・接近戦【A】
・射撃【E】
・魔法【A】
・物理防御【S+】
・魔法防御【S+】
・機動力【A】
・主な装備【闇の衣】
「魔体術は、魔族やモンスター特有の体術。炎の
あと邪術は、何か悪い奴が使いそうな魔法のセットスキルじゃ。こやつはその手の魔法を第八級位まで使える様じゃ。
スキルの形態変化は、追い詰められるとレベルの回数だけパワーアップできる。つまりこいつはあと二回、変化できる。ラスボスには必要不可欠な能力じゃ。
それから、全キャラ中、もっとも防御力が高いところも注目のポイントじゃな。
今後の活躍に期待したい」
そこで神様は、チーズの乗ったクラッカーを頬ばり、ワインを口含んだ。
それを味わって飲み干しながら、モノリスに右手をかざす。
「次は対抗馬の三人を見てみようかの……」
・名前【ミラ・レブナン】
・クラス【おっさんの娘】
・種族【?】
・スキル【剣術level7】【家庭料理level5】【ex覚醒level1】
・接近戦【S】
・射撃【E】
・魔法【E】
・物理防御【C】
・魔法防御【C】
・機動力【S+】
・主な装備【木刀 練習用の胴着】
「一番、体格は小柄じゃが、フィジカル面ではもっとも優れておるの。
運が良ければ、充分に優勝を狙える戦闘力を持っておるが、最初に出会った相手が悪かった……。
まあでも、良く健闘しておるよ。相手の調子も悪いみたいじゃし……。
因みにスキルの覚醒はワシにも何が起こるかわからんの
さて、次は……」
・名前【アンナ・ブットケライト】
・クラス【悪役令嬢】
・種族【人間】
・スキル【狙撃level6】【権謀術数level8】【exオト・メゲーの記憶level8】
・接近戦【D】
・射撃【S+】
・魔法【E】
・物理防御【D】
・魔法防御【D】
・機動力【C】
・主な装備【ヘルダーMSR94 令嬢のドレス】
「こやつの狙撃の腕は神がかっておるの。ワシもヘッドショットを決められた。ふぉっふぉっ。
それに監視用権天使ラエルは対象の生命を感知し、そこから思考パターンを読んで、対象の動きに合わせた挙動をするんじゃが……。
普通なら対象がラエルに対して害意を持った瞬間に回避行動に出るはずで、あんなに容易く撃ち落とせる訳がないんじゃな。
つまり、こやつは、まったく殺意をもよおす事なく標的に引き金をひけるという事になる……とんだサイコさんじゃ。
悪だくみの際に知力ボーナスが発生する権謀術数も強力じゃ。
このままスナイパーに徹すれば、充分に優勝の目はあるの。
ただ、少しだけ拗らせすぎているのが大きな不安材料なんじゃが……神様もどん引きの中二病じゃよ。
因みにヘルダーMSR94は、
魔導銃は、薬莢に付与ふよした爆発魔法の威力で弾を飛ばしておる。
起爆には、異なる二つのある金属をぶつける事によって発する魔力波を使っておるの。
言うまでもない事じゃが、銃というのは圧倒的な射程と威力、撃つだけなら誰にでも出来る手軽さが魅力的な武器じゃ。
しかしその弾丸は魔法防御と物理防御の両方の影響を受けてしまうために、いまいち、この世界では戦場の主役になりきれていない。
ガンブレードなんていう中途半端な武器が使われているのもそのためじゃ。
ただし、やはり圧倒的な射程距離と当たるところに当たれば必殺の威力は、充分に強いといったところか。
続いては……」
・名前【フランティーヌ・イッテンバッハ】
・クラス【婚約破棄ヒロイン】
・種族【人間】
・スキル【格闘術level8】【気合いlevel8】
・接近戦【C】
・射撃【E】
・魔法【E】
・物理防御【B】
・魔法防御【B】
・機動力【E】
・主な装備【木板の手枷 囚人服 鉄球の足枷】
「格闘術はレベル8で、伝説の拳聖になれるほどの才能はあるが、実戦経験もないし修練も特にしていないので、今は喧嘩が滅茶苦茶強いお姉さんレベルにとどまっておるの。
しかし、ゲーム中にその才能が開花して大化けする可能性は充分にある。そうなれば、優勝も充分に狙えるぞい。
エクストラスキルの気合いは、気合いでどんな事でも出来る様になるスキルじゃな。
レベル8ともなれば、もう奇跡とか超常現象レベルの気合いじゃ。
因みに機動力のE判定は足枷のせいじゃ。
本来ならA判定でかなりの素早さじゃよ……」
神様は、イワシのオイルサーディンをつまみ、ピザをかじったあと、空になったグラスにワインをついだ。
そこで、はたと思い出す。
「もうひとり、忘れておったな……」
・名前【アレックス・モッター】
・クラス【外れスキル男】
・種族【人間】
・スキル【exコピー八級level1】
・接近戦【E】
・射撃【E】
・魔法【E】
・物理防御【E】
・魔法防御【E】
・機動力【C】
・主な装備【布の服】
「ゴミクズじゃ。まあこいつの優勝はないじゃろな。ただ、スキルの使用法に気がつけばワンチャンスあるかも……くらいか。
大穴じゃな」
そこで神様は、新たにワインをついだグラスをくるくると回して香りを嗅いだ。
「んんーっ。楽しい殺し合いは今、始まったばかりじゃな……」
そう言って、再びラエルから送られて来る映像に視線を向けた。
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