⒊迫り来る悪夢




猪とネズミに別れを告げた私は、神社に行くことにした。

いつもはここで神の力を借りて、新年を呼んでくる。

だが今日はただ見に行くだけである。


時計の針は十一時を回ったところだ。

今から次の年を連れてくるのはもう間に合わないだろう。


しばらく歩くと神社に着いた。

案の定神社では何も起こらない。

例年なら私の能力でまばゆい光とともに新たなる年がこちらの世界に引き込まれてゆく。


だが、しばらく見ているうちに私は異変を感じた。

神社の中がネズミだらけなのである。

これは一体どういうことなのだろうか。

そういえば、さっきの公園でも妙なことを言うネズミがいた。


やはり何か様子がおかしい。


実は、大晦日に動物がこの神社にたくさん現れるのはごく普通のことなのである。

だが、あることが異様なのだ。

普通は次の年の干支となっている動物がたくさん現れるのである。

だが今年はいぬ年だ。

つまり、来年はいのしし年である。

にも関わらず、ここにはネズミが大量に現れているのである。


私はその理由がわからないでいた。


そういえばさっき、猪にも会っていたのを思い出した。

なぜ猪が神社ではないところにいたのだろう。

私はあの猪に話を聞きたいと思った。

猪を探していると、案外すぐに出会うことが出来た。

だが、そこには異様な光景が繰り広げられていたのである。

ありえない量の猪が一列になって山を下っているのだ。

それこそ、さっきのネズミの数に引けを取らないレベルである。


そのとき、時計の針は十一時五十五分を回っていた。

もうすぐ日付が変わる時間だ。


精霊は頭の中に物凄ものすごく嫌な予感を募らせていた。




その嫌な予感が、当たらず済めばよかった。



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