第13話 拾参
辺りを一回りして来るか、このまま一部始終を見ているのか、決めかねてまんじりとしていると、男がシロから身体を離して別れを告げる仕草を見せる。
どうやら二人で屋敷へ入るようなことはないらしい。私は安堵に胸をなで下ろすのと同時に、どこか期待が外れたような心持ちを覚えて、空恐ろしくなった。自分はここまで堕落してしまったのかと。
到底、認めることなどできはしない。できはしないはずなのに、諦念にも似た感情がその蟠りを許してしまう。
なんと悍ましいことか。
私は屋敷の中へと入っていくシロの姿を眺めながら、己の心持ちに嫌悪感が湧き上がってくるのをぐっと堪えた。
そして、自分が無性に煙草を吸いたいと思っていることに気がついた。私は袂へ手を入れると、煙草を取り出して火を付けた。
吐き出す煙の先に雪の積もった自宅が見える。
シロはあの中で何を思うのだろうか。
雪の冷たさに足先の感覚が麻痺しはじめていたが、私はそこからしばらく動くことができなかった。
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