第2話 弐
気がつくと、私は眠っていたようだった。最近では、昔のように遅くまで起きていられない事が増えてきている。茶托に乗せた湯呑みは二つとも空いており、寒椿も綺麗になくなっていた。
シロは帰ってしまったらしい。彼女はいつもそうだった。知らぬ間にこの家へ上がり込んできて、そして、知らぬ間に消えている。
そんな彼女へ、以前、尋ねたことがある。
「シロ。お前さんはここへよくやって来るが、いったい何処から来ているのだい?」
「そんなことをお知りになられても、意味なんてありませんよ」
シロはそんな私の問いを、歯牙にも掛けない様子で受け流す。
「そもそもお前さんは誰なのだ?私の知っている家の者なのか?」
シロが真面目に答えるとは思わなかったが、その顔色は見ておきたかった。
「真実が欲しいだなんて、まるで子どもみたいですよ、センセ」
しかし、シロは涼しい顔をしたまま、それこそ駄々っ子を諭すかのようにそんなことを言う。
そして、お茶請けの金平糖を細い指で摘み上げると、小さな口へと軽く放り込んだ。
その彼女の仕草は何だかとてもあどけなく感じられて、私はもうそれ以上を尋ねることはしなかった。
そんなことを思い出しながら、硝子戸の向こうへと視線をやると、雪は変わらず深々と降り続いていた。今年の冬は本当によく雪が降る。
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