第22話
葉山から瞬がロスに旅立つことを聞いた
淋しいという気持ちとどこかホッとした気持ちもあった
私は日々新しいことばかりの連続でついて行くだけで精一杯になってた。
瞬とのことを考える時間がないようにと
自分を追いこんでいいたのかもしれない
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ロスでの生活が始まった
予想以上に立派なスタジオに驚いた
優奈の父親の差し金と言えばそうだけど、
それを逆手にとって、利用すればいいって。俺も事務所も思ってた。
こんな整った環境の中で音楽を作れるなんて願ったり叶ったりだ
こっちに来て日本のニュースは一切見ないことにした。
優奈のこと、忘れようとした訳じゃない
むしろ、ずっと、大切に思ってる
でも、今、俺が彼女に出来ることがあるとしたら......
ロスの風は...優しかった
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季節は瞬く間に巡り、1年が過ぎた
「お嬢様、あっ、失礼しました。先生、どうぞ」
「葉山ー、いいわよ。先生だなんて、慣れないわ。それに、まだ当選した訳じゃないし」
「出馬はされるのですよね」
「まだ決めてない。でも、そうなったら葉山は運転手じゃなくて秘書になってね」
「私がですか?本当によろしいんでしょうか?」
「もちろん」
法律事務所に入って2年目。
地元の議員をやってみないかという話が父ではなく、周りの人達からあがった。
まだ、早いのでは?と一旦お断りしたが、
父の名もあるし、政界へのデビューは約束されてると支援者の方たちは大乗り気だった
「葉山はどう思う?」
「私は...お嬢様が決められたらいいと思います。周りの人達のことは気になさらず、思う通りにやられたらと...。お嬢様はきっと、そういう政治家になられると思います。やはり、旦那様とどこか、似てらっしゃいます」
「私が父に?」
「はい」
「そうなの?かな。
ご苦労さま。じゃ、また、明日お願いしますね」
車から降りようとすると
「お嬢様、あの...これを」
1冊の雑誌を渡された
パラパラとめくっていくと...
「瞬...」
「お渡ししていいものか、随分迷いました。
けれど、この曲はお嬢様の為に作られたものだと確信しましたので」
そう言って葉山はディスクを差し出した
「これは...」
「後でゆっくり聴いてみて下さい。相澤さんの思いが詰まっていると思います」
「...わかった。ありがとう」
急いで、部屋に戻り、先ず雑誌に目を通した
【相澤 瞬
作詞、作曲。セルフプロデュース
そして、沈黙を破って
自らの声で届けたかった思い】
愛しい彼の顔つきが以前より精悍で
でも、変わらない瞳の奥の温かさを感じられた
深呼吸して、曲を聴いた
優しい声
私の大好きな声
涙が
止まらない
会えない夜、空を見上げてた
あの頃を思い出す
何度も何度も繰り返し聴いた
彼の声が私の名前を呼んでくれているようで、胸が苦しくて、眠れなかった
瞬...
私に進みゆく姿を見せてくれてるの?
その先には何か見えてるの?
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