第21話

あれから、眠ってるのか、起きてるのか

わからない1日が何度も過ぎていった


音のない部屋が息苦しくて、

久しぶりにテレビをつけた


昼のニュース番組


タイミング悪くも優奈の父親の姿が映し出された

街頭演説する傍らで笑顔で手を振る女性


「...優奈」


何、やってんだよ

笑ってないから、

全然笑えてないから


画面の右上にLIVEの文字

俺は咄嗟に部屋を飛び出して

近くの駅前まで走った


数メートル先にいる久しぶりに見た彼女は俺の知ってる優奈じゃなくて...

居た堪れなくなり、俺は大声で叫んでしまった


「優奈!桐島優奈!!」


秒でSPに取り押さえられた。

俺はファンかストーカーか...。


言いたいことをひとつも言えないまま、

いや、そもそも、何を優奈に言いたかったんだろう


つまみ出された俺に近寄ってきたスーツ姿の男性がSPに向かって言った


「桐島家の者です。こちらの方をお連れするように言われておりますので」



俺、何処に連れてかれんだ?


黒塗りの車に乗せられると、その男性が運転席から丁寧に頭を下げた、


「初めまして。葉山と申します。優奈様の運転手をさせていただいてます。

相澤さん...ですよね?」


「はい」


「お嬢様はあなたと出会ってから本当に幸せそうでした。私はあんな笑顔を見たことがありませんでした」


「そう...ですか」


「お嬢様と離れられること、きっとご納得いかないと思います。

でも、あのお方はあなたを愛するからこそ、進む道を選んだのだと思います」


「...わかってます」


「私は先日、お嬢様に相澤さんと出会ったのは運命だったのでしょうと言いました」


「俺もそう思ってます」


「でも、それは違うと...。

運命という言葉は私の中にはない、

宿命しか...とおっしゃいました。

どれほどの覚悟でお嬢様が今、あそこに立っていらっしゃるか、相澤さん、あなたなら、おわかりでしょう?」



俺は何も言えなかった

宿命...そんな言葉を口にした優奈

悲しすぎるだろ

辛すぎるだろ



「相澤さん、お嬢様の願いはあなたにしっかりと前と向いて進んでほしいということです」



そんなこと、わかってる

わかりすぎるぐらい、わかってる

頭では理解していても、心がついかないんだ


でも、いつまでも、そんな青臭いこと言ってられねぇよな




「葉山さん、優奈に伝えてください。

俺は心に響く音を作りに行ってくるって」


「かしこまりました。しっかりとお伝え致します」



優奈

俺は...ロスへ行くよ



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