第16話

「もしもし、瞬?

あのね、明日から大学が忙しくなるの、少し会えないかも」


「そっか.....わかった。また、電話するな」


昨夜の電話越しの優奈の声がいつもと違った

気になって仕方なかった

そんな矢先


「相澤、ぼーっとして、何か悩み事か?最近スランプか?」


「そう...でもないですよ」


「どうだ?ロスのスタジオで曲作ってみたら?」


「いいですね。どれぐらい行けるんですか?」


「いくらでもいていいよ。ずっとでもいい。

あっちに自由に使っていいスタジオがあるから」


「マジっすかぁ。でも、そんなに長くは無理です。っていうか、ひょっとして、俺にあっちに行けってことですか?」


「いやっ...」


「ふーん。なるほどね。だいたい、そんなスタジオうち、持ってましたっけ?」


「...まぁ、なかったんだけど...」


「はっきり言ってください」


「相澤、お前、撮られたんだよ。写真。

まぁ、普通の女の子なら、お前もいい年だし、適当に誤魔化せばいいんだけど、相手がな」


「優奈のこと...」


「記事は出ない。もちろん、あちらが揉み消した。相手がお前だから写真なんか撮られたってかなりのお怒りだ」


「俺は別れませんから。ロスにも行きません。アイツを置いて行けるわけない」


「相澤、確かに綺麗な子だなぁ。でも、お前の周りにはいくらでも」


「綺麗なだけで好きになったんじゃない。

彼女のすべてが愛しくて、守りたいって本気で思ったんだ。

あの夏の日、優奈と出会ったのは...

きっと......運命だったんだと俺は思ってる」


「...そうか。...でも、ロスのことは純粋にいい話だと思う...なっ、考えてくれ」


「まさか、会社まで」


「それは...まだ、大丈夫だ」



優奈の父親なら、この国の会社の1つや2つ潰すことなんて容易いこと


俺がロスに行かないと、世話になった周りの関係ない人まで巻き込んでしまう

やりやがったよな


優奈、

俺らそんな簡単に負けてしまうのか

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