第12話

瞬の車を降りて、少し離れたところから、連絡をする

そして、私はまた、車に乗った


「お嬢様、最近お帰りが遅いですね」


「ちゃんと帰ってるんだから、いいでしょ」


「...相澤さん...ですよね?」


「どうして?!」


「先日、お迎えにあがった時にお見かけしました」


「誰にも...」


「もちろん、言ってません」


「お願い、葉山」


「わかってます。ただ、いつまで隠し通せるか。私はお嬢様がお辛い思いをされてはと。今日もこれを奥様から預かってまいりました」


どこにでもあるようなクリアファイルを渡された


「なかなか、お嬢様とゆっくりお話する時間がないので、これを見ておくようにと伝えてくれと言われました」


中を見ると10人ほどの写真とプロフィール

お見合い写真のような格式ばったものとは程遠い、まるで、カタログみたい。

この中から、商品を見定めるかのように選べと。


「こんなの見ても、一緒よ」


瞬に...会いたいよ

抱きしめてほしいよ



俺は明くる日、K大学へ行った


行ったのはいいけど、どうする?

明らかに大学生には見えない俺、

どう見ても不審がられるよな。


とりあえず、その辺の学生に聞いてみよう。

これだけ、たくさんいてると優奈のこと知ってる人に会えるかな


「あっ、すいません、ここの大学の桐島優奈さんってご存知ですか?」


「あなた、記者の人?」


「いえ」


「桐島優奈を知らない人なんて、いないと思うわよ」


「え?」


「だって.........」



俺は今まで、どうして気付かなかったんだろう


桐島って、名前を聞いて、一瞬あれ?と思った

けど、優奈といれればそれだけでいいと思ってたから。



優奈に電話した


「今日来れる?」

「...うん」

「あの」

「あの」

声が重なった

「何?」

「瞬こそ」

「俺?うーん、ちょっと、話したいことあって」

「そっ。私もよ。今からすぐに行ってもいい?」

「わかった」


俺は優奈に一体何を話すんだ


彼女が誰であろうと、どんな境遇であろうと思う気持ちに変わりはないのに


いっそのこと、知らないふりをすればいいのだろうか



瞬は私のことわかったんだと思った


今朝、学生証がないことに気付いた

きっと、それで...


どんな風に思ったか、確かめるのが怖かった

けど、彼をこの先、苦しめてしまうんじゃないだろうかって、いっつも思ってた


瞬の部屋へ向かう道のり

いつもなかなか着かないって、最後には早足になるのに、今日はあっという間に着いてた

心の整理がつく間もなく

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