第7話

誰かに恋したら、“好き”って伝えたくなる。

思いが通じ合ってるって抱きしめた温もりから伝わったとしても。

確かめたくなる

聞きたくなる


恋から愛へ変わろうとしているのかもしれない



「優奈ちゃん、着いたよ」


「ありがとう。今日はすっごく楽しかった、じゃ...」


「なぁ、そんな淡々と言うなよ。さっきと全然違うじゃん」


「さっき?」


「もっと...」


「言わないでっ」


真っ赤になった彼女は両手で俺の口を塞いだ


「く、るしい」


「あっ、ごめんなさい」


慌てて手を離した優奈ちゃんの首に腕を回して抱え込むようにして顔を近付けると、

申し訳なさそうに


「ほんとに、ごめんなさい」


「プハハ、苦しくないよっ」


「えー、もう何なのよー。相澤さん、嫌い」


「嫌い...なんだ?」


「嘘、嫌いじゃないっ」


「じゃあ、好きなんだぁ」


「......うん......ッキ」


「ん?」


「スキ」


小さな声で告げてくれた言葉が俺にとってはすっごい嬉しくて。

何でこんなに心がはしゃぎ出すんだろって思った


優奈ちゃんの長い髪をといて、頬に手を添え、丁寧にキスをした


「俺も優奈ちゃんのこと好きだよ

最初っから、好きだった」


「最初...から?」


「うん、一目惚れってやつかもな」


「え?」


「あー、もういいから、そんな目で見んなよ。帰したくなくなるから」


あどけない表情でクルリとした目で見上げられたら、ずっと抱きしめていたくなる


背中に伸ばした手に力を込めてギューッとしてる彼女が俺の肩に顔を埋めて呟いた


「相澤さん...帰らないと...」


胸を押して切なそうにする


「そうだな、優奈ちゃん、優奈って呼ぶから、もう、相澤さんってのもやめてよ」


「相澤...瞬..さんだったよね?

瞬さん?」


「クスクス、さんは入らねぇって、瞬...で」


「しゅん.....」


唇がそう動いただけなのに

嬉しかった

俺、相当惚れてんな


「優奈...って苗字ぐらい聞いてもいい?」


「......うん...桐島。桐島優奈」


「桐島?どっかで聞いたことあるなぁ」


「どこにでもある名前だよ、じゃ、またね」


「おー、また、連絡するな」


車を降りて何度も振り返って手を振った彼女


先に停まっている1台の車に乗って行ったことを俺はこの目で確認し、その場を去った


何処に帰るのか

どうして何も教えてくれないのか

聞いてしまうと彼女がいなくなってしまいそうで怖かった


でも、今は臆病な自分より、優奈を思う気持ちの方が断然大きくて、

少しでもほんの少しでも会いたい、触れたいと思ってた


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