第6話

海に着くともう夏も終わりなのに、結構な人混みだった


「ちょっとヤバいかなぁ」


「相澤さんって有名人なのよね?」


「うーん、まぁまぁかな」


「じゃあ、これだけの人だと、ダメなんじゃ...」


「うーん、ごめんな。これじゃ、車から降りられないな」


「いいよ。ドライブだもん。走ってるだけで楽しいよ」


「ハハ、ほんとのドライブだな」



初めは緊張気味だった彼女も次第にいつものようにお喋りに戻り...

アレ何だろ?と指差してたり、

あの人変な格好してるーてケラケラ笑ったり

窓から見える景色を楽しんでた



日が暮れ始める頃

海から少し離れた山の中腹まで登った。

辺りは人もいなく、ひっそりとしていた


「ここなら、大丈夫だな。降りよう」

「うんっ」


「はぁー、気持ちいいー」


大きく伸びをすると、横目で見た彼女もはしゃぐように俺の真似をして細い腕を伸ばした


すると、たまに見せるあの表情になり、唇を触って言った


「相澤さん、私、夜には帰らないといけないの」


「わかったよ。ちゃんと送るから」


「うううん、いつもの場所でいい」


「そっか...」



水平線を真っ直ぐ見つめる優奈ちゃんが

何故だか、淋しげで守ってやりたくなって背中から抱きしめた


細い身体はすっぽりとおさまり、前に回した俺の手にそっと手が重ねられた


「相澤さん、私...こういうの、慣れてなくて」


「そんなもん、慣れなくていいよ」


「うん」


俯いた優奈ちゃんの顔を後から覗き込んで頬に口づけた。

さっきまで恥ずかしそうにしてた彼女はゆっくり顔を上げてこちらに向きを変えた


その先を求めているように

しっかりと見上げた



「私...おかしいの、ドキドキしてるのに、もっと...もっと、相澤さんに……触れたい」


「優奈ちゃん、すっげぇ可愛いこと言ってんだけど?わかる?」


「わかんないよ」


慌てて離れようとした彼女の二の腕を引っ張ってキスをした


「ンンっ」


「もっと?」


潤んだ瞳でコクリと頷いた恥ずかしがり屋で欲張りの彼女の唇を

再び塞いだ

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