第4話

彼女のことは結局何も知らない

名前と年齢

どうにか、連絡先は聞いた


あれから、何度か会って話して…それだけ

でも、わかってきたこともあった


意外と口が悪いこと

意外と笑い上戸なこと

なのに、

意外と…淋しそうに唇を触ること


「優奈ちゃん、今度どっか行こっか?

いつも、ご飯食べるだけじゃ」


「うん。でも、あまり遠いところには行けない」


「俺、警戒されてる?」


「まぁ。それもあるけどね」


「ハハ、されてるんだ」


「いろいろと…ね」


「ふーん、どうせ聞いても答えないだろ?」


「……」


「たまにそんな顔するだろ?

なぁ、俺、信用されてないかもしれないけど…少しぐらい…」


「…」


「だんまりねー。なら、どうして、俺と会うの?」


「……目が…相澤さんの目が」


「俺の目?」


「あの時、初めて会った時、

よくわからないんだけど、あなたの目にすーっと吸い寄せられるような不思議な感覚だったの。この人って…」


「俺って?」


「笑わないでよ」


「笑わなねぇよ」


「星の王子さまなのかなって」


「ぶっ、俺が王子さま?」


「笑わないって言ったでしょ?

もう、いい。帰る」


「悪りぃ、怒んなって。髪の毛ボッサボサのイケてない業界人って言ってたくせに、王子さまって」


「だって…それは」


口を尖らして俯く横顔は長い睫毛が際立ち、思わずそっと頰に手を伸ばした


ビクっとして顔を上げた彼女だけど、

たじろぐこともなく大きな瞳で俺を見た



「俺が…優奈ちゃんの王子さまになろっか?」


彼女はコクリと頷いて、すっげぇ嬉しそうに笑ったんだ


その笑顔を見て俺も

めちゃくちゃ嬉しかった

こんな気持ちいつぶりだろうか


頰に添えた手は自然と彼女の膝にのせられた華奢な手を握りしめてた







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