第2話

優奈との出会いは…

暑い、夏の日だった


レコーディングが朝方に終わり、スタジオで少し仮眠をとった。

重だるい身体をリセットしたく、電車には乗らず照りつける太陽の下、遠くに見える海を見ながら歩いてた


埋立地に建ち並ぶビルはどれも真新しく、

機械的で苦しいほどの暑さとは対照的にひんやり冷たく感じた


もう、昼かぁ


立ち止まって伸びをすると少し先を同じようにフラフラと歩く人が目を止まった


鮮やかなグリーンのマキシワンピースから見える透き通るような肌の白さに真夏の太陽が照りつけて、キラキラと輝いた


後ろ姿からするといい女っぽいよな

いやっ、でも、どうだろ?

残念ってこともあるしな笑


そんなこと思ってる俺の気持ちが通じたのか?彼女が不意に振り向いた


へ?一瞬…固まった

綺麗…過ぎんだろ、でも、可愛さもあるし

何だろ、今まで会ったことのない不思議な空気感を漂わせてる彼女に俺は完全に堕ちた


きっと、しまりのない顔をしていたであろう俺と目が合った彼女はクスっと笑ったんだ


「可笑しい?」


「だって、そんな…クスクス、 口開いてたよ」


「美人だから、見とれてた」


そう、

昔、友達とふざけてやってたように、ナンパしてみた


恥ずかしい?子供っぽい?

そんなこと考えてる時間なんてなかった


ただ、彼女を捕まえたかった

単純な気持ちが俺を動かしてた


「名前…聞いていい?」


「え?どうして?」


「聞きたいから」


「優奈」


「いくつ?」


「あなた、警察?」


「違うよ。知りたいから」


「…22」


「どこに…住んで…」

「言えない」


「あっ、そりゃそうだよな。いきなり。

あのさ、腹減ったし、昼飯食べに行かない?」


「どうして?私と?」


「もっと、話したいから」


「……いいけど

それ以上聞かない?」


「聞かないよ」


何処にでもあるような出会い

始まりなんて、どうでもいい

心が寄り添う場所を探している者同士が引き合う


不思議な空気を纏った優奈に俺は急速に惹かれていった




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